森田療法 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061488243

感想・レビュー・書評

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  • 強迫には森田がいいと以前から知っていたけど、森田がどんなものかはいまいちわからなかった。知っていることといえば、あるがまま、ということくらいだった。でもこの本を読んで、この「あるがまま」の概念を僕は勘違いしていたことに気付くと共に、まさに目からうろこって感じだった。
    僕は、「あるがまま」を自分の存在があるがままでいいんだという風にとらえていたのだけど、森田療法のいう「あるがまま」とは自分の不安をあるがままにする、ということだったのだ。

    たとえば、緊張するときによく陥るのが、僕達は、緊張を打ち消そうと試行錯誤する。つまり、心の不安をなくそうと努力するのだ。結果どうなるかといえば、ますます緊張していることを意識して、緊張してガチガチになって震えや動機に襲われるまでになってしまう。これを精神交互作用というらしい。
    でも、僕達は、初めてのことに対して、程度の差はあってもみんな緊張はするし、飛行機に始めて乗ったり、初めて車を運転するときは不安になるのが当たり前だ。つまり、そういった不安や緊張は人間が本来持っている正常な症状なのであって、異常なことではない。
    しかしその観念に囚われてしまうとそれが障害になったりする。精神交互作用の悪循環から、抜け出せなくなるのだ。
    じゃあ、なぜ抜け出せなくなるかといえば、神経質症の人は「かくあるべし」という観念に支配されているからである。しかし現実はそもそも不条理な世界であり、「かくあるべし」という姿勢との間で必ず齟齬が生じてくる。その齟齬により、神経質症者は苦しむ。
    しかし、なぜ苦しむのか?それは神経症者は自分にとってより良い状態、環境で過ごしたいという欲求が人一倍強いからに他ならない。
    つまり、よりよく生きたい、生に対する欲求が強いのである。
    よりよく生きたいがために苦しむ、という悪循環を打破するためにはどうするべきか、森田療法は「目的本位」という概念を提唱している。

    人間が不安になったとき、逃避と実行という二つの欲求が現れる。ゆえにその二つで葛藤するのだが、本来の生の欲求(よりよく生きたいという欲求)は「実行」であるはずだ。
    つまり、本来の生の欲求が何であるのかを見極めた上で、不安をあるがままにして、その生の欲求を実行していくのである。

    例であらわせば、ある会合でスピーチをしなければならない。しかし、失敗したくないがために緊張する。会合を休みたい衝動に駆られる。しかし、会合を休むと、必ず後悔の念に苛まれるだろう。後悔するということはより良く生きたいという本当の欲求ではなく、不安から逃れるための妥協案に過ぎない、然るに、会合にでて、緊張していながらでもスピーチし、成功すれば、自分の緊張を克服し、やり遂げられた充足感と喜びを得られる。ならば、本来の生の欲求とはあきらかにスピーチを行うほうであり、その選択をすることでよりよくいきることができる。

    失敗は誰にでもあり、それにより劣等感に襲われても、劣等感に襲われるのは誰にもあることなのだから、その劣等感をあるがままにして、再び挑戦する。そうすれば、いつのまにかうまくできるようになり、その劣等感も消失する。

    我々は、不安に「とらわれ」たときに、自ら悪い結果を予想して、逃避というもう一つの仮の欲求を作るという「はからい」をする。ゆえに苦しみはいつまでたってもなくならない。

    森田療法は、不安を人間が持つ当たり前のものとしてとらえ、敵として排除することをしない。不安を「あるがまま」にして、不安に必要以上に意識しない。スピーチで緊張するのは当たり前だ。緊張をなくそうと考える時間があったら、どういう風に話そうかスピーチの内容を考えよう。こう思うことが結果的にうまく話せ、成功につながり、いつしか緊張も意識したくても出来ないくらいになくなってしまう。

    これは僕にとってもまさに慧眼であった。というのも、今まで、僕は緊張や不安がでたら、すべて原因を考え、その問題を証明していくことで、不安を解消してきた。つまり、不安を排除すべき敵と考えてきたわけだが、しかし、不安との融和という森田の考えは、まさに日本的な考えだ。
    今までやってきた僕の方法もその効果を実感し、信頼しているが、この森田方式も大変素晴らしい理論だと思うし、実践してみる価値は充分にある。どちらが正しいとか、良いとかはわからない。人によって向き不向きもあるだろうし、どちらか一方を常に実践するというよりも、うまく双方を使い分けることができるのが一番良いと思うし、僕もそうやって行きたいと思う。

  • 080723購入。080725読了。

  • 2008/2/18読了 あるがまま

  • 07年10月読 神経症の症例、処置について、読み易く、分かり易く書いてある。「あるがまま」を受け入れることが肝要との話。

  • 他人の視線に怯える対人恐怖症。強迫観念や不安発作、不眠など、心身の不快や適応困難に悩む人は多い。こころに潜む不安や葛藤を“異物”として排除するのではなく、「あるがまま」に受け入れ、「目的本位」の行動をとることによって、すこやかな自己実現をめざす森田療法は、神経症からの解放のみならず、日常人のメンタル・ヘルスの実践法として、有益なヒントを提供する。

  • 分かりやすいがその効果のほどはどうなのだろう・・・

  • 結構立ち直れました

  • 日本の風土にはあっているし、自分が何者かわからない人にも向いている治療法。
    原因の明確なものには不向き。

  • 心理学の権威故森田教授について筆者が記した本。筆者も相当な人格者で精神的な不安定(特に欝)に効果ありか。

  • 認知療法に出会う前にこの森田式で治そうと奮闘していたときに購入。「あるがまま」を認め、その上で自分と向き合っていくといううつ治療では有名な療法の一つ。
    森田博士が考えて一躍有名に。
    一時的には役に立つけど、結局考え方の思考ってそう簡単には変わらないのよね(泣)。やっぱり認知療法のような練習が必要だなと改めて思いますです。

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著者プロフィール

1931年、東京生まれ。上智大学卒業後、早稲田大学文学部大学院で美学を学び、さらに東京慈恵会医科大学を卒業。専攻は、精神医学、精神病理学。医学博士。1986年5月、本書の刊行直前にがんのため逝去。『立場の狂いと世代の病』(春秋社)など著書多数。

「1986年 『森田療法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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