ローマと長安: 古代世界帝国の都 (講談社現代新書 992)

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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061489929

作品紹介・あらすじ

世界の道が通じる大理石の都ローマ。天をつく大塔、異国人でにぎわう長安。古代百万都市を比較しながらその精巧なシステムと繁栄を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 著者は建築士で、建築様式から見た都市文明論を専門にしている人だという。
    そのため、六章のような、建築物を扱った部分が面白い。
    家の造りや、道路などの作り方、さらには建築用重機まで話が及んで、興味深い。
    長安のことが知りたくて読んだのだけど、むしろローマの記述の方が広がりがあるだけではなく、詳しくて、そちらのほうが面白かった。
    四合院の「堂」は、祖先を祀る部屋でもあり、客間でもあるというところも、自分にとっては重要。

    ここで長安というのは、周や秦、漢の都としての長安、咸陽などではなく、隋唐代の新都としてのそれ。
    隋の文帝が、宇文愷という建築士に命じて、僅か六か月でおおよそを作り上げてしまったという。
    その時、宇は二十八歳。
    びっくりである。

    東西文明比較は、わかりやすくて面白いけれど、その手の議論の常として、単純化、図式化されすぎて、やや納得がいかないこともある。
    ローマは長い時間をかけて積み上げられてきた「時間的」な都市。これに対し、長安はある一時期に、一気に計画され建築された「空間的」な都市だという。
    この辺りはなるほど、とおもう。
    ただ、ローマが道路網のネットワークの中心にあって物資が集積される「人工的」都市なのに対して、長安は周囲の自然と関わりを保ち続ける「自然都市」というのはどうなのだろう?
    これまでに言われてきた東西比較文明論の焼き直しにも思えてくる。

  • シルクロードの東の端にある長安、西の端にあるローマ(古代ローマ帝国の首都)を比較することにより、その違いだけでなく、類似点をも明らかにしながら、長い歴史をかけて、それぞれが変遷していった様子を詳しく説明してくれる。著者は建築が専門。
    今まで西洋の歴史にばかり興味があり、目が行っていたが、こういう比較対象としてのアジア、中国・長安を知ることによって、いかに中国が古くから大きな影響力を回りに与えてきたかをまざまざと見せ付けられたようである。(2005.1.2)

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著者プロフィール

1947年台湾生まれ。
東京工業大学建築学科卒業、同大博士課程修了。工学博士。
1974年入社の久米設計を経て名古屋工業大学教授。
米国カリフォルニア大学バークレー校、コロンビア大学客員研究員。
現在、中京大学客員教授、名古屋工業大学名誉教授。
専門は建築学・都市論・文化論。
著書は『建築へ向かう旅』、『組み立てる文化の国』、『「家」と「やど」― 建築からの文化論』、『漱石まちをゆく――建築家になろうとした作家』、『建築家と小説家――近代文学の住まい』『アイドルはどこから』など。2016年に『オリンピックとデザインの政治学』(森山明子との共著)を郎文堂より刊行。

「2020年 『寡黙なる饒舌 建築が語る東京秘史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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