きむら式 童話のつくり方 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061497085

感想・レビュー・書評

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  • 帯付き

  • まえがきでは、とにかく、小説を書くことって素晴らしい!誰でもできますよ!作家って素晴らしいですよ!と強調。

    世界であなたしか書けないものを書く方法<あなたの日常でおもしろいと思ったものを見つける>
    日常の中の「本質」を探そう<見方を変える・プリズム>
    作家の発想はアンテナ
    作品は生き生きとした「本当にあるかのように描いた世界」で、作家は、その仮想現実に命を吹き込む作業をしている。

    テーマというのは結果論、一人の人間に個性があるように、作品にもどうしても内側からなんらかの特徴がにじみ出る、それがテーマ。
    理解させるのではなくて、感じさせるためにストーリーが要る。
    テーマは書かずに思わせる。テーマとメッセージは違う。

    すべての物語は感情移入して読むもの。
    主人公と一緒にドキドキハラハラしたい。
    少々ダメな要素を持った主人公のほうが感情移入しやすい。人の弱さや欠けている部分。

    構成「起・承・承・承・転・結」くりかえしの面白さ。
    ストーリーの構成で大事なポイントは1.どの場面をえらんでどういうふうにつなぐのか。2.えらばなかった場面の問題
    転は「落差」であって「飛躍」ではダメ、納得のいく転にするために、伏線を小出しにしておく。
    夢オチと魔法は危険、何でもありになるので、制限などをえがいたほうがいい。
    人は「落差」で感動する。悲しいことが来るぞ、来るぞ、来た、というよりも、いったん喜ばせてからドーンと突き落としたほうが泣く。(それを計算するのも構成)
    クラッシック音楽と同じ。パッと盛り上げておいて、静かなところを入れる。

    「起」
    なにかが起るのが起。まず設定を分かって貰うこと。
    最初の二行は大事。
    映画のセオリーでは、最初の数分以内に設定を理解させる。
    しかもさりげなく、説明的でなく、早い内に分からせること。その後の展開のおもしろさを期待させること。

    「承・承・承」
    くりかえしの部分が、微妙に同じで微妙に違うところで、人は笑う。

    「転」
    クライマックス。一番感動するところほど力を入れて、たくさん書こうとするけれど、いかに書かないかが決め手。
    なるべく言葉を少なくする。(まず台詞だけを作ってみて、それをできるだけ少なく、感動する一言にする。自分の経験に置き換えて)
    読者が感じるであろう感情を、わざわざなぞる必要はない。<引き>の感覚を持って。

    「結」
    今までのすべてのストーリーを収束させて、最後に余韻を残す。

    本当に面白いのか複眼を持つ。
    お化け屋敷でどこで驚かせるかというような「客観性」。読者の気持ちにならなくてはダメ。
    自分の目の他にもう一つ、読む人の目が必要。

    人が読んで面白くなければプロにはなれないが、人が面白いと思うだろうと書いたことが面白いとは限らず、まず自分がおもしろいと思う作品を書くのが原点。
    キャラ&プロット 「坊」と「屋」と「虫」 それからおとぎ話プロットタイプ。(赤頭巾ちゃんタイプ、シンデレラタイプ……)

    文章量とリズム。まず歩幅をつかむこと。書こうとしている文章量の「量の感覚」を。
    どの程度の枚数かで、文章のリズムは違ってくる。
    それぞれの文章量に応じて、気に入ったモデルの作品を用意しておくのもいい。

    緊張と弛緩の「間」<芝居で笑うところは台詞よりも、ほとんど間>。
    引っかかりと逆転。ボーンと違う音を入れて、エンディングに持っていくような音楽、それが引っかかり。
    ウルトラマンでも水戸黄門でもある瞬間にすべてをひっくり返す、そこが快感。逆転がポイント。
    ピンチの繰り返しのあとで逆転してすごくいいこと、いいことの繰り返しのあとですごくつらいことか悲しいこと。その落差で人は感動する。
    本を読む快感はドキドキすること、理屈ではない味わいやリズム。

    書くことは外的動機と内的必然。好きだから続くし、続けるのが苦痛でない。
    才能より、一つのことを十年続けることが大事!
    天才、打ってるイメージ、売れてるイメージが強いけれど努力をしている。
    松井、記者やファンのことは自分にはコントロールのできないことだから、いっさい考えない。自分にできることに集中するだけ。
    外的動機がいくらあってもいいけれど、その瞬間は内的な戦いのみ、そこにいいものをつくるポイントがある。
    書けないときは外的プレッシャーや見栄で、書けるときは無心の集中力。

    二つの自分、本能的な自分と社会的な自分。
    みんな心の奥では社会という枠から飛び出したい、そこでファンタジーや物語を読む。それで精神のバランスを取っている。
    童話には「夢」があると言われるが、夢とは日常の枠を飛び出すこと。
    007は殺しの番号、ファンタジーでは殺人すら許される、これも日常の枠を越えている。
    日常から非日常へ行くからおもしろい。
    しかし、悪役もいい。空想の世界でならある程度、本能の部分を解放することができる、それもまた「夢」。

    「かくれんぼ」と「おにごっこ」
    隠れている敵を探すとか、敵を追いかける、追いかけられる。
    映画で言えば、犯人がビルの中に飛びこんだ、刑事が追いかけるがどこにいるかわからない、いきなり飛び出してくるかも……そこに足音を忍ばせ入っていく時のあの緊張感。
    有史以前、日常生活はかくれんぼとおにごっこだった。

    作家のエネルギーが本になり、本が買われる。書くのもエネルギー。

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    ▼ 100文字感想 ▼ 
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    赤ちゃんがいる家庭には、たいていある絵本が「いない
    いないばああそび」。この絵本の作者が、ミリオンセラー
    童話の秘密を惜し気もなく公開。はっきりいって、すごい
    です。アイデアに行き詰ったときパラパラ見返してます。


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    ▼ 5つの共感ポイント ▼ 
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    ■「子供のため」に書いてはいけない、「子供だまし」では
     なく、今の自分が真剣に思っていることを書くべき

    ■人間は誰もが何らかのコンプレックスを持っている、
     そこに共通点を見つけて共感する

    ■ストーリー構成のセオリー「起・承・承・承・転・結」

    ■安っぽいお子様ランチをつくるつもりでいたら、童話は
     いいものは書けない。本物のステーキを、子供の口に
     合うように小さく切ってあげる、本物の味をちゃんとあた
     えることが本来の童話

    ■アイデアを三つといわれたら、十二個持っていく

  • 「あらしのよるに」の作家さんが書いているものだったので、面白いかなと思い読んでみました。<br>
    読んでてタメになったのは発想の仕方。こういう風にアイデアが拾えるんだなと。なので行き詰ったときなんかに読むと、何か良いヒントがもらえると思います。ハウツー本としては良書かなと。<br>
    ただ、まえがきの言葉にがっくりしました。こういう考えの作家ばかりじゃないだろうけど、ちょっと・・・・・・と思ってしまいました。<br>

  • ああ、この人は売り方・作り方がとても巧いのだと納得する1冊。それが嫌味ではなく、戦略に徹しすぎて本質を完全に見失うこともなく、ちょうど程よい技法本(きむら式)になっていると思います。しかし巧いなあ。

  • <b>「子供のため」と言えばなんとなく聞こえはいいが、大人が「君たちは子供だからこういうものを喜ぶんだろう」みたいな与え方をするのは、かえって子供をバカにしているように思う。それは、文字通り「子供だまし」というものだ。子供だましは必ず子供に見抜かれる。</b><br>
    (P.19)

  • 童話作家に限らず、夢に向かって頑張ってる人なら、読むと励まされるんじゃないかと思います。「十年続けられるかどうかが才能だ。」という言葉には、感銘を受けました。

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著者プロフィール

木村裕一(きむら ゆういち) 東京都生まれ。多摩美術大学卒業。造形教育の指導、テレビ幼児番組のアイディアブレーンなどを経て、絵本・童話作家に。『あらしのよるに』(講談社)で講談社出版文化賞絵本賞、産経児童出版文化賞、JR賞受賞。同舞台脚本で斎田喬戯曲賞受賞。同作品は映画化もされ、脚本を担当。2005年より公開された東宝アニメーション映画「あらしのよるに」は、2007年「日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞」を受賞。2009年『オオカミのおうさま』(偕成社、田島征三 絵)で第15回日本絵本賞受賞。著書は600点を超え、数々のロングセラーは国内外の子どもたちに読み継がれている。作品に『あかちゃんのあそびえほんシリーズ1~13』(偕成社)、『風切る翼』『よーするに医学えほん』シリーズ(以上、講談社)、『オオカミグーのはずかしいひみつ』(童心社)、『たいせつなことはみんな子どもたちが教えてくれた』(主婦の友社)、『ゆらゆらばしのうえで』『どうするどうするあなのなか』『おっとあぶないかわのなか』(以上、福音館書店)などがある。純心女子大学客員教授。東京在住。

「2018年 『もうちょっと もうちょっと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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