中世の光と影 下 (講談社学術文庫 206)

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  • Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061582064

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  • 230
    [十字軍や聖地巡礼、人々は何を信じ何を恐れたのか。民衆を巻き込んだ戦争や大飢饉の状況。黒死病流行の有り様や女性たちの役割。読者を中世世界の旅へ誘う三百点を超す図版。]


    目次
    第5章 権力と空間(国境と膨張について;十字軍;ヘゲモニーとバランス ほか)
    第6章 危機と革命(ペスト;ユダヤ人虐殺;増加の限界 ほか)
    第7章 日常生活、信仰、迷信(生活様式、信仰の問題;それ、行け、騎手よ…;女性 ほか)

  • 感想は上巻にまとめて記載。

  • 下巻は、カノッサの屈辱について言及するところからはじまります。教皇の権威に王権が屈したとされるこの事件は、しかしながらローマ教会が他の何者にも揺るがすことのできない絶対的な権威を確立したことを意味するのではなく、いくつもの因子がダイナミックに相互作用する中世ヨーロッパの歴史的文脈のなかに置き戻すことでその意義が正当に理解されることになります。

    また著者は、十字軍遠征を通じてヨーロッパ世界とイスラム世界とのあいだで密接な交流がおこなわれる可能性が開かれていたことを指摘しつつ、けっきょくヨーロッパ世界が「外」に対して閉じていったことが説明されています。

    さらに、ロンドンで生まれパリの修道院で学んだアレクサンダー・ネッカムという人物の手記を通して、中世に生きる人びとの暮らしと彼らを包み込んでいたヨーロッパ世界の具体的な姿を描き出しています。

    歴史的な事実を忠実に追いかける歴史書でありながら、豊かなイメージを読者のうちに喚起する不思議な魅力をもつ本ではないかと思います。

  • シャルルマーニュの帝国が分裂したあとで、地方勢力の台頭によって封建制が確立される過程が下巻の主軸となる。とはいえ、著者の筆は封建制の構造を精緻に描き出す方向へはゆかず、グレゴリウス改革、十字軍、フランスとイギリスの台頭、中世都市の活写へと進んでいく。いったん確立されたヨーロッパが対外的に進出した時に発揮した残忍さ、十字軍遠征の際のプレスター・ジョン伝説に見られる中世人の「軽信性」、グレゴリウス改革において教会側が以前に異端として排除したはずのドナトゥス派の論理を用いることによって、かえって客観的制度に反抗する異端を育てる素地を作ったという指摘など、分量自体はそれほど多くないにしても、極めて示唆に富む叙述が多い。

  • ヨーロッパ、特に西欧という概念がいかに形成されていったかという、大学で歴史学の講義をとらなければ詳しく知る機会のなさそうなテーマについて紐解いてくれる本書。読み物としても面白かった。

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