ライフサイクルの心理学 下 (講談社学術文庫 1027)

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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061590274

作品紹介・あらすじ

大人の人生の困難は、青少年問題・老人問題の谷間で見過ごされがちだ。本書で著者たちは、ミドルエイジの工場労働者・会社の管理職・生物学者・小説家の四つの職業グループから各十人、合計四十人に個別面接し詳しく比較考察。その結果人間は成人した後も変化しつづけ、一定の段階を踏んで発達していく事実を明らかにした。下簡では、人生半ばの過渡期から中年に入る時期の生活構造が解明される。

感想・レビュー・書評

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  • また30歳後半に読み直したい。

    【ライフサイクルの心理学 下】
    ・個性化というのは、自分自身の関係そして外界との関係の変化をいう。
    ・人生半ばの個性化-4つの発達課題
    個性化過程と対立の統合は内面的なもの。そのため、自身の内部で果たさなければならない。
    生活を作り上げるには、選択をし、優先順位を決めなければならない。選択するにあたっては、あるひとつのものを選んで、その他多くのものを拒絶することになる。「人生半ばの過渡期(30代後半~)」には、いまの自分になるために脇に押しやってきた問題が再び頭をもたげてくる。一人の時間を大切にしたい、誰にも指図されたくない、世界にないものを創造したい、などこれらの声に注意深く耳を傾けて、自分の生活の中で、それらにどのような位置を占めさせるかを意識的に決められるようにならなければならない。

    1.若さと老い
    ・最悪なのは、若い情熱もなく、創造的な努力もせず、社会に貢献することもなく、これから長い年月を無意味に存在し続けるだけではないかと考えること。「老い」がこの自信喪失に追い打ちをかけ、崩壊、絶望、死を強く感じさせる。
    ・自分の遺産の長所を評価するとき、子どもを育てること、血族そして民族の地を絶やさないことに最大の価値を置くものがいる。
    ・仕事への熱意の衰えは、多くの組織で、ある一定の年齢に達すると職業の面では、’行き止まり’になる地位の低い労働者に見られる現象。

    2.破壊と創造
    ・誰でも40歳という年齢に達するまでに、何らかの形で人間の破壊性を身をもって知る。他人から何らかの形で自尊心を傷つけられたり、発達を妨害され、同様に自分も時には愛するものを始めとした他人を大きく傷つけている。
    「人生半ばの過渡期」に自分の人生を見直そうとするとき、他人に対して実施に与えた害や与えたと思っている害のことで、相手に対する不平があることを新たに理解しなければならない。親、妻、良き相談相手、友人、愛するものなど、自分をひどく傷つけた相手に対して抱くどうすることもできない怒りでしばらく身動きがとれないことがある。それよりももっと難しいのは、自分が他人や自分自身に加えた破壊的影響に対する罪の意識。自分自身に対する不平を認めなければならないことである。自分にこう問いかける。「愛するものに対して、多くの人間に影響を与える事業に対して、おとなとしての責任をどうして果たせなかったのか?どうして自分の期待に反して、自分の可能性をだめにしてしまったのか?これから罪の意識と自責の念を抱いてどうやって生きていけばよいのか?」

    3.男らしさと女らしさ
    ・誇張された男らしさを守っているものは、責任感ある父になれるが、子どもたちから愛情のない、押しつけがましい存在になる。彼は女性を母親的存在か性的存在のどちらかと見なしてしまう。
    ・夫婦の補い合いは長所とも短所ともなりうる。男性は妻に、自分の中に育むことのできない女性的な資質の多くを求める。時がたつと共に、良い関係が出来上がれば、男性は自分にもそうした女性的な資質を認めて伸ばせるようになる。しかし、自分で伸ばさずに、妻に頼っている限りは、不完全で一面的な人間になる。これは女性にも同じことが言える。
    ・成人前期には、必要としているのに、自分には大幅に欠けているものを女性に求めるが、中年期に入ると、この男女の分業を必要とも望ましいとも思わなくなる。
    ・成人前期に女性の良き相談相手となる男性は極めて少ない。男性の大多数は女性と真剣な友情とか恋愛感情を伴わない関係を築くことはない。

    4.愛着と分離
    ・他人のことを深く気にかけるには、自分のことを深く気にかけなければならない。気にかけるというのは、主として物質的な安楽と成功に関心をもつのではなく、自己発達と完全無欠性に関心をもつことである。もっと大きな想像力と思いやりをもって権威をふるうということである。兼六や指導者としての有形の報酬を手にする一方で、後の世代に残すべき遺産をつくり、仕事のもつ本来の楽しさを味わい、より個性化された愛する人間関係をもつことから、それにもまして大きな満足感を得るということである。
    ・成人前期には、勝ちたい、正しくありたい、崇高な夢を実現したい、重要な関係のある人たちから高く評価されたいという願望に満ちている。が、中年期に進むと、もっと愛情深く、官能的で、権威があり、親密で、孤独な人間、、もっと愛着し、分離した人間になれるだろう。

    ・「脱出」-新しい生活構造をもとめる
    妻とわかれる、仕事をやめる、他の地に転居するといったこと。しかしあいにくなことに、人生のこの時期(40歳ごろ)に根本的な変化を遂げるのは極めて難しい。新しい生活は妥協の産物になるよう。

    ・<夢>を修正する
    夢は人生に興奮と活力を与えてくれる。I amという感情、私はここにいる、自己と外界がぴったり合う、私は私自身であり、自己にしたがって行動できるという実感につながる。
    夢を実現できる可能性がほとんどないように思えることが多い、人生半ばの過渡期には、自分を勇気づけるある程度の、正当な全能意識が必要である。
    良き相談相手および妻の役割は、青年があまり疑問を抱かずに、あるいは達成することを必要以上に要求せず、青年の夢を持ち続けさせること。

    ・誰かの良き相談相手になるというのは、ある程度利他主義の面をもつ。義務を果たす、誰かのために何かをするという意識を伴う。しかし利他主義をはるかに超えた面が大きい。利他の背景に潜む高次の自己。

    ・結婚生活を修正する
    激しく愛していたわけでもないのに、親の押し付け、しきたり、反抗、世間体、罪の意識といった理由から結婚した。だから2人で力を併せて満足のいく夫婦関係をつくりあげるのが困難だったということはある。
    ・初めて妻をひとりの人間としてみることができたとき、自分たちの夫婦関係の本質を理解できるようになる。洞察力と偏見と自己正当化が入り混じった新しい認識をもつようになる。夫婦の間にはなんの興奮もない、関心や興味を妻と分かち合えない。夫が成功しても、妻は自分が楽しんだり分かち合うことのできない世界に成功が夫を連れ込んだと憤慨している。もっと思いやりがあり、性的魅力にとみ、自分を一人の人間として認めてくれるような別の助成と知り合うことがある。それが、「脱出」につながったり、あるいは妻と別の助成の両方を抱えた生活につながったりする。
    ・人生半ばの過渡期になると、これまで以上に自分を見つめられるようになる。「夫婦の不和は自分にも責任があるのではないか?妻に母親的な面を求めていたのではないか?なにが原因で新婚生活に入り、これまで続け、そして今になって疑問をもっているのか?」答えは簡単にでない。夫は生活を修正する必要を強く感じる。それを妻に、たいていはぎこちなくまたはうろたえながら、伝えようとする。妻は夫の立場に同情しながらも、問題を悪化させるのを恐れる。夫の失意と違和感を自分に対する間接的な攻撃、夫の苦悩は根本的には妻に責任があるという非難、と見なす。
    ・夫婦の両方が協力して事に当たり、もっと完全に歩調をそろえて発達の努力ができる場合に限り、夫婦関係は改善される。
    ・男性は若い女性と真剣な恋愛関係に陥ることがある。家庭から脱出して、他人は批判をこめて理解するというよりはむしろ道義的な面から非難するのが普通である。
    ・結局は、自分と協力して互いにそのための努力をしてくれる妻、あるいは愛人と新しい形の関係を作り上げていくしかない。そのためには数年は努力しなければならないだろう。

    ・私の楽しみは2つある。研究室にいるときと船にのっているときだ。どちらも人のなんらかの役に立っているわけではない。だがたぶんそれでいいのだろうと思う。だからどうしたというのか。どういうわけか、そういいきれないところがあるのだ。(44歳のジョン)
    ・44歳~46歳にあった大きな変化は、昇進とか認められることへの関心が大幅に低下したこと。仕事や社会への貢献から本来の満足感を得られるようになったこと。もう1つは夢にこだわらなくなったこと。正しいことをするべきだという無理強いがなくなり、精神的な自律性が増した。
    ・はじめて彼は背伸びすることをやめて、ささやかでいいから、自分にできる仕事に落ち着きたいと話した。彼の一番の関心は管理職に昇進することでなくなった。その夢はもう消えてしまったのだ。ずっとささやかなところで、家族が安心した生活を送れるだけの安定した収入のある仕事で満足するつもりになっていた。
    ・もし明日ぽっくり死んだら、家族以外にうろたえてくれる人はいないだろう。会社の黒板から名前が消されるだけでしょう。

  • (上)で提示された概念をさらに敷衍。実用書ではなく、学術的だから仕方ないが、断定的でない物言いが目立った。ライフサイクルの最大公約数を提示した感じに終わった。しかし、ライフサイクルが個人だけにとどまらず、社会、文化をも包摂して見ていく視座であるとの指摘は興味深い。いずれにぜよ、本書によって、40代男性の私は、自分を俯瞰する大きな視野が得られたことは間違いない。

    ・人生半ばの過渡期では、年長であることにプラスの意味を見出さなければならない。若さと老いの新しい道を探す。
    ・文学:チェーホフ、イプセン、ストリンドベリ、オニール「氷人来る」、リリアン・ヘルマン「秋の庭園」
    ・夢は外界と自己という原始的な意識から生まれる。夢は人生に興奮と活力を与えてくれる。アイアムという意識とつながっている。
    ・さまざまな年齢の女性との付き合いを新たに求めることで、自分や他人の中にある男らしくない面と共鳴できるようになる。
    ・各発達段階は他の発達段階と相互浸透し合っている。
    ・40歳を過ぎることへの強い不安は人類の原体験の表れ。
    ・若さと老いを文化的なシンボルとイメージからも考える。
    ・男性本位の克服。豊かなアイデンティティの取得。

  • アメリカの男性は親しい友達が作れないらしい。面白い!

  • 40人の個人史を面接比較して、大人になっても続く発達フェーズとそれぞれの発達課題について書かれている本。

    調査対象者:40名
          アメリカ人
          男性
          職業は管理職、生物学者、労働者、小説家

    この時点でちょっと私は違和感を感じてしまいましたが、
    「人生半ばの過渡期」と「中年に入る時期」に興味があり、
    とりあえず最後まで読みました。

    難解な本というわけではないのですが、否定をしているのか肯定をしているのかがわかりにくい文章が結構あり、読みにくかったです。

    各発達段階で解決すべき発達課題を上手くクリアしていかないと、それは宿題として、後の発達段階でより大きな問題となって現れる・・・・といったことが書かれていました。

    う~ん、現在抱えている自分の悩み解決の方向性が見えるかも・・・と期待していたのですが・・・。

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