英文収録 茶の本 (講談社学術文庫)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061591387

感想・レビュー・書評

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  • P44
    柔術は無抵抗、すなわち虚によって、敵の力をひきだし、使い果たさせ、一方、自己の力を温存して戦いに最後の勝利を得ようとする。美術において同じ原理が重要なことは、暗示の価値が例証している。何ものかを言わずにおくことによって、見る者はその思想を完成する機会をあたえられる。かくして、偉大な傑作は見る者の注意を否応なくくぎづけにして、ついに見る者が現実に作品の一部になっているような気持ちにさせる。虚は見る者を誘い、彼の美的情緒を十二分に満たすためにそこにある。

    P71
    技術に夢中になって、現代の芸術家は自己を超えることはまれである。竜門の琴の霊を呼びさますことができなかった楽人のように、現代人は自分のことばかり歌っている。彼の作品は科学により近いかもしれぬが、人間性から一層遠ざかっている。日本の昔のことわざに、見栄はる男は女に好かれぬ、というのがあるが、そんな男の心には、愛情を注いで満たす隙間がないからである。虚栄は、それが芸術家の側であれ観衆の側であれ、芸術への共感にとって同じように致命的である。

  • ¥105

  • 今ちょこちょこ読んでいます。岡倉天心氏が英文で日本のお茶について書いた本。日本語でも英文でも書かれていますが、わかりにいくです。読み切れたらいいな‥。

  • 茶を通して日本の精神をあらわした名著。海外に日本文化を伝えるため書かれたもので原書は英文で書かれている※が、現代の日本人にとっても読んで得られる物は少なくない。(※本書は日英併記)個人的に一番感銘を受けたのは日本の美意識のひとつ、「虚」についての記述。『The Vacuume--in leaving something unsaid the beholder is given a chance to complete the idea
    and thus a great masterpiece irresistibly rivets your attention until you seem to become actually a part of it.(原文P.188から引用)』さすがは東京芸大の父。座右の書の一冊。

  • 前に岩波文庫で読んだのは30年前ぐらい前.今度のは別訳.

    儒教-道教-禅道-茶道をコア概念にして汎アジア的な美の思想をゾーンで捉える視点というのはいつ読んでも雄大卓抜だと思うが,何でその汎アジアを西洋文明の対置概念に置こうとするのかなぁ.そこがどうも共感できない.
    天心が最も詳しかった筈の宗教美術の分野で見ても,中国文明-インド文明-ヘレニズム-地中海文明-西欧文明てのは,どこにも断層があるではなく,微妙な差異が連続してグラデーション的に繋がっていることは実作がこれを明らかに示している.それを知らない天心ではあるまいに.

    そりゃ極東と極西の文化を並べたら,カラーチャートの右端と左端を較べて色が違うと言うようなもので深い断層があるに決まっており,まして原書は欧米人に東洋文明を紹介する意図で書かれているのだから,これを読んだ欧米人は東洋文明と西欧文明の差異ばかりが目につくこととなって,文化戦略的にも上手くなかったのでは.

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著者プロフィール

1863~1913年 美術評論家・思想家。本名は覚三。文明開化の風潮の中で、フェノロサとともに日本美術の復興に尽くした。東京美術学校開設に尽力し、のち校長となる。その後、日本美術院を創立し、明治日本画家の指導者として活躍、ボストン美術館中国日本美術部長などを務める。英文著書による日本文化の紹介者としても知られる。著書は本書を構成する『茶の本』『日本の覚醒』に加え、『東洋の理想』の三冊が代表作。

「2021年 『茶の本 日本の覚醒 矜持の深奥』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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