1666 ヴェニスからアウシュヴィッツへ ユダヤ人殉難の地で考える (学術文庫)
- 講談社 (2004年7月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061596665
作品紹介・あらすじ
ナチスによるユダヤ人虐殺は何故起きたのか。ユダヤ人への過酷な差別や迫害、残忍非道な異端審問。ユダヤに寛容なイスラムに対し、血の滲む西洋の歴史。ゲットー発生の地ヴェニスなどユダヤ人殉難の地を旅し、ヨーロッパの陰の歴史、反ユダヤ主義の根源に迫り、近代思想の意外な真実と陥穽を鋭く剔出する。識者絶賛、和辻哲郎文化賞受賞作品の待望の文庫版。
感想・レビュー・書評
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新書文庫
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啓蒙がユダヤ人にとって特別に重要な意味を持つのは何よりもそれが解放の時期だったから。ゲットーの解放。イタリアやドイツ各地に進軍したナポレオンによって中世末以来固く閉ざされていたゲットーの扉が次々に開いていった。フランスでは長年の潜伏の後に現れたユダヤ人たちを共和国側が受け入れた。
マルクスは反ユダヤ主義者だったのではないかというテーゼがある。マルクスはすべての抑圧された人々の解放のために戦った闘士であり、彼自身がユダヤ人だったから。 -
講談社学術文庫で別の本を捜している時に、ふと目に留まった本です。
徳永恂といえば、私にとってはアドルノ、ルカーチ、フロム、ハバーマス、ベンヤミン、ホルクハイマーなどフランクフルト学派の思想的啓蒙を受けた大恩人ですが、この本の存在を知りませんでした。
先生、こういうユダヤ人問題っぽい本を、いつお書きになったのかしら?
と、ペラペラ頁をめくってみると、何だか読んだことがありそうな気配がします。
あっ、ちょっと待って下さい、ひょっとして、と思って、マルクーゼの『純粋寛容批判』や『解放論の試み』の影に隠れている本がもしかしてと、『ヴェニスのゲットーにて~反ユダヤ主義思想史への旅』(みすず書房1997年刊行)を引っ張り出して来て確認したら、なんとこの文庫本の親本でした。
しかも本書で刊行された年に、和辻哲郎文化賞を受賞されていたことも知りませんでした。ここで、1988年から続いているこの賞のラインナップを見てみると、昨年までで40冊あるのですが、あまり読んだことのない本が並んでいます。私のまた新たな課題図書が増えそうです。
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「ヴェニスのゲットーにて」(みすず書房刊)の文庫化。ただし収録論文の加除、並べ替えあり。副題に「ユダヤ人殉難の地で考える」とあるとおり、第一部はヴェニス、スペイン、エルサレム、モロッコ、バルト海沿岸などを訪れてはユダヤ人殉難の歴史に思いをはせる紀行文、第二部はマルクスと反ユダヤ主義、ミュンヘン一揆の時期ドイツに留学していた斎藤茂吉のユダヤ人観など思想史的研究を収録する。特に第一部はやや感傷に流れ、一般読者に問題を開示するという位置づけの著作であると思われる。