人類の進化史 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061596825

作品紹介・あらすじ

五〇〇万年前、二本足で直立歩行する猿人が出現し、現代のヒトへと至る遙遠な進化の旅を始めた。著者は、形質・環境・遺伝学等にわたる広汎な知識と卓越した推理力で、二〇世紀に達成された数々の発見や研究を検証、進化と滅亡を繰り返したヒトのドラマを鮮やかに描出する。進化の謎解きの面白さで魅了しつつ、人類が向かうべき方向をも示唆した労作。

感想・レビュー・書評

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  • ネアンデルタール、クロマニヨン、ピテカントロプス・エレクトス。もはやいつ習ったのかすら覚えていないが、現代の研究はあれからどこまで進んだのか。20世紀の研究を総括する本書を読んで、前に進んでいるということは確認できたが、真摯な研究者らしい筆者の性格のせいもあってか、どうにもはっきりとはしない。

    人類の進化の始まりは恐らく樹の上から平地に降り立ったことによるのだろうし、他地域でそれぞれ進化したのではなく、アフリカ単一起源説が有力だ。ピテカントロプス・エレクトスは猿人でなく原人でホモ・エレクトスと改められ、ネアンデルタールと同じく現世人類には繋がらない別の種族とされている。たぶん80万年前から火は使っていたであろうし、日本人類は縄文系と弥生系の交配種と思われる。特にアイヌや琉球人は縄文系の特徴が色濃く残っているようだ。たぶんアメリカ大陸にはベーリング海峡から渡ったが、太平洋やアフリカ経由と思われるような特徴も見られる。

    ここに挙げた各説ごとにその信頼度は全く違うのであろうが、新しい証拠の発見次第では、まったく考えていられなかったような新説が誕生する見込みもあるだろうし、要素は相互に複雑に関係しあっており、頻繁に進化のイメージとして用いられる樹形図のような単純明快なモデルには収まらないことは間違いない。

    研究結果を座して待っていても、わかりやすい答えが上から降ってくるとは限らない。むしろ今の複雑な状況を辿って理解するというプロセスにこそ、得られるものはあるのかもしれない。

  • [ 内容 ]
    五〇〇万年前、二本足で直立歩行する猿人が出現し、現代のヒトへと至る遙遠な進化の旅を始めた。
    著者は、形質・環境・遺伝学等にわたる広汎な知識と卓越した推理力で、二〇世紀に達成された数々の発見や研究を検証、進化と滅亡を繰り返したヒトのドラマを鮮やかに描出する。
    進化の謎解きの面白さで魅了しつつ、人類が向かうべき方向をも示唆した労作。

    [ 目次 ]
    第1章 サルからヒトへの関門(‐五〇〇万年前ごろ)
    第2章 生き残りをかけた猿人たちの選択(五〇〇万‐一〇〇万年前ごろ)
    第3章 文化に目覚めたヒトの予備軍(二五〇万‐二三万年前ごろ)
    第4章 直立したヒト、アフリカを出る(一七〇万‐二〇万年前ごろ)
    第5章 少しずつ見えてきた現代人への道すじ(六〇万‐二三万年前ごろ)
    第6章 氷期に適応したネアンデルタール人(二〇万‐三万年前ごろ)
    第7章 多様化していく現代型のヒト(二〇万‐二万年前ごろ)
    第8章 集団移動と混血をくり返しながら(三万‐一万年前ごろ)
    第9章 ついに太平洋を越えて(四万年前ごろ‐)
    第10章 進化に学ぶヒトの未来

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 霊長類の出現から現生人類の世界拡散までという長い期間を対象としているにもかかわらず、内容は包括的で丁寧であり、まさに「20世紀の総括」の副題にふさわしい。

    440万年前のアルディピテクス・ラミダスは森林地帯で生活。歯の形から見て雑食になっていた。420〜390万年前のアウストラロピテクス・アナメンシスは、森林に近い草原または疎林をすみかとするようになり、250万年前のアウストラロピテクス・ガルヒは石器を使って肉食をしていた。

    原人になると脳が大型化し、道具を使用しはじめた。肉食によって脳の進化を可能にしたが、社会の中での意思疎通をする知能が必要だったことが要因と推測される。道具の製作や使用、共同作業、言語の発達といった文化的発展が出産率や生存率などに影響を与えた。ホモ・ハビリスは、体が小さく、森林の中の閉ざされた環境に住んだと思われる。ホモ・エルガステルは、体が大きく、森林を出て開けた環境に住むようになった。中国のホモ・エレクトスが発見された洞穴には火を燃やした炉跡と考えられる灰の層がある。

    30万〜25万年前にヨーロッパに現れたホモ・ネアンデルターレンシスは、ホモ・ハイデルベルゲンシスが祖先である可能性を否定する材料はない。ヨーロッパの寒冷気候に適応し、特殊化を強めていった。相当に複雑な言語があったと推測している。3万5000年前から急速に衰え出し、3万年前までに姿を消した。

    ホモ・ハイデルベルゲンシスから進化したと考えられるホモ・サピエンスは、前頭骨が高くなり、ひたいが膨らみを増していることが目立っており、言語や抽象的な思考にかかわる前頭葉が大きくなったことを示す。著者は日本人の二重構造の提唱者だが、その起源について、最終氷期の後半に移動してきた東南アジア系の人々が縄文人の祖先となったが、移動経路は北東アジアからの可能性も考えられるとしている。

    文庫化にあたって、4年間の新発見をあとがきとして加えている点も親切であり、著者が几帳面な性格だったことをうかがわせる。このあとがきの日付によると、これを書かれた直後に亡くなられたようなので、一人の研究者の業績を拝見したという感慨も受ける。

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著者プロフィール

札幌医科大学助教授(法医学教室).自然人類学・法医学専攻.
主 著:
人類学読本(共著)
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「1972年 『シンポジウム アイヌ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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