愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (542ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061847408

感想・レビュー・書評

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  • この作品を執筆するにあたって、作者の村上龍氏は大量の政治・経済に関する本を読み耽ったそうで、当然の如く内容は難解で専門用語が頻出する。とはいえ、政治・経済に関する知識が浅い人でも十分に楽しめる内容になっていると言えるだろう。(もちろんその道に詳しい人はより楽しめるはずである) 全体的に攻撃的で得体の知れない怒り、憤りが物語の中に充満していて、今にも張り裂けそうな危うさのようなものを感じる。人によってはこの作品に大きな影響を与えられるのではないだろうか。

  • 作家の想像力は現実を超え、未来を先取りする。
    「ディープフェイク動画」も、そういう名称ではないが、すでに本作に登場している。

  • 5日くらいで下巻を読み終えたが、気持ちのいい読了感!
    難しい内容だけど、ちんぷんかんぷんじゃなかったのが嬉しい(^^)

    各国の情勢、民族性、歴史を学んで、知識を付けてその国々の人達の立場に立ったら、龍さんみたいに新しい歴史のストーリーを描けるのかなぁ、すごいなぁと圧倒された作品でした。

    でも、この作品ほど極端でないにせよ、
    国よりも企業が力を持つ社会や、初めは不快だが周りを巻き込む人間、とか
    最近の国際問題と近いものになってきていると思う。

    軍事や化学兵器だけじゃなく、情報操作も脅威になるとか、何も分からず踊らされちゃダメだなぁとか、
    基本的な事だけど、前よりも生活に危機感を持てるようになりました^^;

  • 上巻に同じ

  • <u><b>愛と幻想の友情</b></u>

    <span style="color:#cc9966;">恐慌後、ソビエトのIMF加入など、世界には奇妙な動きが相次いだ。それらは巨大金融企業集団「ザ・セブン」の暗躍を示すものだった。「ザ・セブン」はゾビエトと秘密協定を結び、危険なイスラエルを排除、日本を完全属国とするプランを実行に移していく。政治結社「狩猟社」は、「ザ・セブン」と対決すべく、自衛隊による擬装クーデターを起こし、ゼネスト後誕生した革新政権を倒して、イスラエル過激派と手を組み核の製造にも着手、さらに海底ケーブル切断による情報封鎖で、新たなパニックを誘発する。カリスマ鈴原冬二ひきいる「狩猟社」は日本を支配し、米ソ共同管理を崩すことができるのか?</span>

    最後までぐいぐい引っ張っていく求心力のある物語。一気に読み干してしまった!
    村上龍が“システムにイライラしており、システムを壊す作品を書きたかった”という後書きを残しているが、大枠はそのような社会批判小説であり、政治小説であるんだけれど、結局のところゼロとトウジの友情小説だ。友情にあるのは、愛と幻想のみ。それがなくなれば…ね。
    とはいえ、ただの幻想なんだから、最初からあってないようなもの。なくなるはずもない。だから、最後にトウジはピンクサーモンとエルクを目蓋の裏に見るんだろう。全ては幻想だ。そして、愛だ。

  • システムを崩そうとしたが、システムに飲み込まれる苛立ち。
    歴史は繰り返されるのか.....。
    強者は弱者がいないと生きていけない。

    グローバリズムの暗躍、情報操作・検閲.....、
    この小説に描かれている事が実際に起きているとしか考えられない。
    政治経済のインテリジェンスが凝縮されており、
    それ以外でも人間の欲について多々考えされられる事があった。
    再読したい本(多分再読する)

    以下、鈴原冬二の台詞より
    「オレが言っていることがわかるか?日本はアメリカやソビエトと対等にものが言える国ではない、あまりにも弱い、これまではなんとか海が地形的に守ってくれたが、もうそんなことは夢物語だ、
    オレは宗教も信じていないし、東アジアに王道楽土を気づくなどという夢もない、ただオレはわけがわからないまま死ぬのはごめんだ、管理されたり、支配されたりするのもいやだ、アメリカは強者だ、その強者のアメリカに気に入られようと愛想笑いをして、冷たくされるとヒステリーをおこして、アジアの同盟だと声高に叫ぶ、弱虫のやることだ.......」

  • 政治経済の話が難しかったけれど、面白いかった。
    80年代後半の世界情勢ってこんなだったんだなぁ。
    日本の政治経済は、今もかなり危機感ある雰囲気だけど、
    読んでいると今のことを言われているように感じる。

    自分の生きている世界は少なくとも表面上はとても平和で、
    実は大きな力を持った人(企業)の思うように設定された世界なのかな。

    この表面上の平和は少し皮を向けば、ものすごい犠牲が詰まっているんだろうなぁ。

    ガーナのカカオ農家はものすごく安い賃金で酷使されているけれど、そんなこと知らずに僕はチョコレートを食べる。
    歴史の流れで、今のシステムがそうなっている以上、生きている間はずっと奴隷のような生活が続く。
    それを壊したいという気持ちは自然なことだと思う。

    主人公のその後がとっても気になる。

  • ニュー・ヴォイス、ツパマロス・ヤパーナ、玉城誘拐、クーデター、万田、巨大なる祈り。ST班活躍、時代先取り感

  • 1990年に発表され、政治・経済といったテーマへの著者の関心がシフトするきっかけとなった大作。

    政治・経済といったテーマは、数十年経てば独自の面白さがあるだろうが、約20年という中途半端な時間の経過では、その面白さも中途半端なものになってしまう感じがある。大作であり、かつ加速していく物語のドライブ感が読み物として麻薬的な興奮を与えてくれるのは間違いがないのだけれど。

  • 世界恐慌が起き、経済が崩壊した1990年代の日本。混乱に乗じて台頭した主人公とその政治結社が巧み日本を操りアメリカの巨大資本と対決するという設定。羊のような民衆は一挙手一投足に簡単にそのファシズムに陶酔していく描写は、現実離れしているような印象を受ける。が一度世の中が混乱に陥れば、自分の考えを持たない人は容易に独裁者に追従するだろう。日本=先進国というのが現実の皆の認識だが、日本がイケてない状況に陥ったならば、この小説に書かれてあるようなことが現実になるかもしれない。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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