ムーミン谷の仲間たち (ムーミン童話全集 6)

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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061882263

作品紹介・あらすじ

ひとり旅をつづけるスナフキン、すがたが見えない女の子のニンニ、小さなりゅうを見つけたムーミントロール-。ムーミン谷に住むたのしい仲間たちの、心にしみる9つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • ムーミン一家だけでなく、ムーミン谷に住む仲間たちの9つの短編。
    姿が見えない女の子のニンニの話「目に見えない子」が心に残った。そしてスナフキンのやさしさが見える「スニフとセドリックのこと」もすごくよかった。

  • トーベ・ヤンソンの鋭い洞察力と、人の弱さをゆるすまなざしを、この巻では特に感じる。宝物のような短編集。

    「春のしらべ」 スナフキン と ティーティ=ウー
    スナフキンもティーティ=ウーも大好き。

    「ぞっとする話」 ホムサ と ミィ
    空想で遊ぶのが好きなホムサのぼうやと、空想で遊ぶのも大好きなミイのおはなし。

    「この世のおわりにおびえるフィリフヨンカ」 フィリフヨンカ と 陶器の子猫
    オデュッセイアのナウシカ姫が、海へ洗濯しに行ってオデュッセイアと出会ったのを読んだ時から疑問だったけれど、海の近くに住む人は、海で洗濯をしていたんだな。びっくり。異文化だ。

    「じゅうたんをあらうには、海の水がいいといわれていますのよ。色がちっともさめないんですって。それに浜辺はとてもいいかおりがしますものね……。」p.70

    嵐を乗り切ったフィリフヨンカが、以前の自分には戻らないと誓ったシーンが美しい。

    「世界でいちばんさいごのりゅう」 ムーミントロール と 友情
    スナフキンは、ムーミントロールの気持ちと、彼との友情を守るために小さなりゅうを遠ざけなくてはならなかった。
    けれど、自分を慕ってくれる小さなりゅうを見捨てるのをすまないと思っていたから、せめて、と、大事な帽子でくるんでやったんだ。
    スナフキンは、自分にとって大切なことが何か、わかっている。彼は自分の大切なことを守ることができる。
    でも、大切なことを守るためには、別の人を傷つけることが、避けられない時もあるのだ、とも理解している。

    誰かを傷つけるためにするわけではなくても、人が傷付くと分かっていることを、しなくてはならない時もある…。
    その時に、どうすればいいかの、最良のお手本を、スナフキンは見せてくれている。
    スナフキンはやっぱりかっこいい。
    帽子なしのスナフキンもかわいいよ。一瞬、「誰だ。」なんて、思ってないからね。

    「しずかなのがすきなヘムレンさん」 ヘムレンさん と 子どもたち
    ヘムレンさんが、生まれて初めて自分の家の鍵を開けて、また閉めるシーン、感動する。

    「目に見えない子」 ニンニ と ムーミン一家
    おしゃまさん再び。

    ひとはあんまり辛い思いをし続けると、見えなくなってしまいたいとおもうことがある。
    ティーティ=ウーのはなしとおんなじくらい好きだ。

    「ニョロニョロのひみつ」 ニョロニョロ と ムーミンパパ
    この後、「小さなトロールと大きな洪水」につながるのかな。
    ムーミンパパが、「昔した悪い生活」のことを語りたがらないのは、ニョロニョロたちと過ごした時間が、まったく素敵な冒険ではなかったから、だったのね。

    「スニフとセドリックのこと」 スニフ と スナフキンのおばさん
    フィリフヨンカの話と同じくらい好きだ。

    「もみの木」 はい虫 と すてきなクリスマス
    冬眠して素敵な夢を見ていたのに、おせっかいなヘムルにたたき起こされたムーミン一家は、「クリスマス」を迎えるために、ご近所の人たちがみんな血相を変えて準備しているのに気がつきます。
    どうやら、クリスマスさんのためには、モミの木を飾り付けて、たくさんのプレゼントとごちそうを用意しなくてはならないそうなのです。正体不明のクリスマスさんのために準備を整えたムーミン一家のパーティーにやってきたのは、ちいさなはい虫たちでした。
    この中に、ティーティ=ウーはいたのかな。

  • 短編集。今のところムーミン谷の冬の次に面白い。特に春のしらべ、この世のおわりにおびえるフィリフヨンカ、しずかなのがすきなヘムレンさん、目に見えない子が名作。

  • 挿絵が素晴らしい九つの物語。

  • 多様性の許容、素の自分を認めること、許すこと

  •  各話の主人公らの抱える悩みは、いずれも純文学の採り上げるテーマのようだ。
     そもそも、年金の支給を待望する遊園地入場係が童話の主人公になれるものだろうか?
     小国寡民で理想郷のようなムーミン谷も、住民はディスコミュニケーションその他に悩まされ、あいつぐ天変地異に見舞われる点、内憂外患、住みやすいとは言い難い。

     既刊に比べ、イラストがあっさりしている。トーベさん、忙しかったのかな。

  • ムーミン童話を読んで世界性について考える。

    世界へ向けて書くということ、日本の読者へ向けて書くこと、世界市場を視野に入れて書くこととか・・・・、でもそういった姿勢は普遍的なもの足り得るのだろうか?

    あらゆる人へ向け書くこととも違う。そして他者性と言ってしまえばわかったように書けるが簡単にいえるものでもない。

    ただもし人間が悟性的でありそしてそこからの秩序としての理性的なものへ従う義務を見出しその先に学問としての知性を見て取るならばそういったものは普遍的命題=真理として普遍的なものとして世界性といえると思う。

    そういった世界性を視野に入れて創作をしてみたいと考えている。
    ムーミン童話をよみ世界性について少し考察してみた。

  • 短編集9編
    どれもが珠玉のような短編、短いながらもそれぞれのムーミンの仲間たちの性格や想いがくっきりと表現され、教訓めいた物語ではないのに、深く考えさせられます。特に『もみの木』が好きです。また絵も素敵です。

  • ひとり旅をつづけるスナフキン、すがたが見えない女の子ニンニ、小さなりゅうを見つけたムーミントロール。
    たのしい仲間たちの9つの物語。


    春のしらべーースナフキン
    ぞっとする話ーホムサ
    この世のおわりにおびえるフィリフヨンカ
    世界でいちばんさいごのりゅうームーミン
    しずかなのがすきなヘムレンさん
    目に見えない子ーニンニ
    ニョロニョロのひみつ
    スニフとセドリックのこと
    もみの木ーはい虫


    ミイが遊ぶことも怒ることもできない女の子、ニンニに言った言葉がすき。

    「たたかうってことをおぼえないうちは、あんたには自分の顔はもてません。」

  • ムーミンはいつもなにかぞくぞくさせるお話だと思う。

    なんとなく気になって急ぎ足で戻ってしまうスナフキンや、あんなに憧れていたのに突然「生きるのに忙しく」なっちゃうはい虫。
    物がなくなったのに逆にすっきりしちゃうフィリフヨンカ。
    にょろにょろに魅せられていたけど、「ひとことだっていうことをもっていないし、いくとこだってどこにもないんだ」ということに気づき、自分自身に戻ったムーミンパパ。
    怒ったことで顔を取り戻すニンニ。
    静けさを求めながら子どもたちの求めに応じてしまうヘムレンさん。

    どこにもかしこにも、自分が抱えている苦しさやわがままさが見て取れる。だからなんだかぞくぞくする。
    だけど、ムーミンのお話はそれなのになんか救いがある。
    いやな気持ちにならないし、むしろそんな自分の個性丸出しの登場人物たちに心奪われてしまうのです。

    だからムーミンシリーズは人気があるんだろうな。

    ちなみにかの有名な「あんまりおまえさんがだれかを崇拝したら、ほんとの自由はえられないんだぜ」というスナフキンの台詞は「春のしらべ」のなかにあります。
    でも私はミイの「たたかうってことをおぼえないうちは、あんたには自分の顔はもてません。」の方が好きですが。
    どちらにしてもこの兄弟はかっこいいなあ。
    そしてやっぱり昔の翻訳大好き。

    作者の生誕100年で盛り上がっているムーミンイヤー。
    トーベヤンソンはどんなひとだったのかな。
    あってみたかった。

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著者プロフィール

1914年、ヘルシンキ生まれ。画家・作家。父が彫刻家、母が画家という芸術家一家に育つ。1948年に出版した『たのしいムーミン一家』が世界中で評判に。66年、国際アンデルセン賞作家賞、84年にフィンランド国民文学賞を受賞。主な作品に、「ムーミン童話」シリーズ(全9巻)、『彫刻家の娘』『少女ソフィアの夏』(以上講談社)など。

「2023年 『MOOMIN ポストカードブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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