田紳有楽・空気頭 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
3.88
  • (41)
  • (35)
  • (48)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 571
感想 : 47
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960831

作品紹介・あらすじ

あくまで私小説に徹し、自己の真実を徹底して表現し、事実の奥底にある非現実の世界にまで探索を深め、人間の内面・外界の全域を含み込む、新境地を拓いた、"私"の求道者・藤枝静男の「私小説」を超えた独自世界。芸術選奨『空気頭』、谷崎賞『田紳有楽』両受賞作を収録。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 久しぶりの怪小説。マジックリアリズムかと思いきや地獄のスラップスティックと幻想風景の嵐。驚いた。「空気頭」の方も最初は死に際する妻を看取る私小説かと思いきや急な方向転換、訳のわからない内容に悶絶。

  • 血とコメディ。水木しげる先生のマンガを想起しました。或いはブルーズロックであるとか。攻撃的でありながら自嘲的であり、外在化した鏡のなかの己、人型としての己、を、鏡の外から見詰めている感覚。人間悪も人間善もごくフラットに並べて、千里眼で透き通る結晶の花と化させている、そんな感覚。ブルーズのライトモチーフとして、悪魔との出遭いがありますが、それは人間を外在化させるためのガジェットなのだろうな、と、空気頭と田紳有楽を読み、思いました。


  • 自身の読書体験の中で5本の指に入る衝撃と感銘だった。
    『田紳有楽』は異質な物語手法に陶器への深い愛情と知見、ブッディズムが合わさり他には無いぶっ飛び作品になっている。
    特に『空気頭』は静閑な私小説的世界に、鋭いナイフの様な一言や衝撃的なフックが混ざり合う天下無双の作品。読後はしばらく考えが纏まらず飲み込みに時間を要した。

  • モグリ骨董屋に身をやつして浜松の街裏の二階屋に日を送っている"弥勒菩薩の化身"である磯碌億山と、彼によって庭池に漬けられた陶器たちが主な"登場人物"。グイ呑みは金魚のC子との愛欲にまみれ、抹茶茶碗は人間変身術を会得せんと大蛇のもとへと通い、飛翔の術を操る丼鉢が滑空する。旅の途中で地蔵と出会い、億山宅には神仏が来訪する。谷崎賞受賞の『田紳有楽』は形容しがたいヘンテコな小説。「田紳有楽、田紳有楽、捉えよ、捉えよ」。

    『空気頭』は妻の闘病の歴史と、著者の不倫遍歴を回顧する私小説。私小説を自分のことを書くか、他人として書くかに分類し、それまで後者を書いてきたとする著者が前者を書くと宣言したのが本作である。「平気で弱いものに冷酷になれる人、味方に似たふるまいを見せていて裏切る人、そういう人は沢山ある。そして、平生の生活で自分がその一人だという自覚がある」という通りの振る舞い(とくに妻に対して)を隠さず伝えている。いかにも昭和の作家らしい私小説作品。精力剤への異様な執着が印象的。

  • 田紳有楽のみ読了。
    素敵な庭の描写の冒頭から、まがいものたちが素性を明かしつ明かされつ、なんだかんだで祝祭的なラストに…
    いつの時代の話かと思ったら、天竜川までドライブしたり、新幹線で岡山に行ったり、意外と現代にいて楽しい。
    たびたび描かれる植物や骨董品がほとんど想像できずいちいち調べ、へぇ~と思ってすぐ忘れるがこれもまぁ楽しい。
    森見登美彦のワイワイ系小説が好きな人には、安心して薦められそう。

  • 下界に降りて来た弥勒菩薩が自分の金玉洗ってると、地蔵がやって来て「あれ?久しぶりじゃん!」的な事言うの最高!
    善哉、善哉。

  • 何というか呆気にとられてしまった。現実と妄想がこんな絡み方をするなんて。冒頭に筆者の断り書きがあるけれど、そんなもの消し飛んでしまった。ただ、奥様の闘病の様子が凄まじく、胸が痛む。医者ならではの冷静で緻密な描写だからこそ、静かで冷たい悲しみがひたひたと染みてくるようだ。

  • 『ゆっくりとさよならをとなえる』より

  • 空気頭のみ読了。
    初めは気胸の治療の描写が結構生々しくて、後半は汚くて、読んでてしんどかった。最後は予想外の展開で、思わず声を出して笑ってツッコミを入れてしまった。最後は公共の場で読んだらいけないです。

    主人公がお医者さんだからか、考え方が身体の構造や役割に基づいたものになっている。

    ・ダヴィンチの人類交合断面図で、男と女は別物(女は穢れている)
    ・自分の上半盲の原因は視神経を司る脳下垂体のヴィールスによるものであり、性欲と連動している。穢れた女に勝てない事へのコンプレックス。
    ・穢医穢の漢方は脳下垂体のヴィールスの栄養。上半盲と制欲の昂進を促す。
    ・脳下垂体と視神経の間に空気を入れる気頭療法によって、ヴィールスを離すことで情欲の穢れから解き放たれる。広い視野を通して心穏やかに過ごすことが出来る。

  • 文学

全47件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1907年、静岡県藤枝町生まれ。本名勝見次郎。成蹊実務学校を経て第八高等学校に入学、北川静男、平野謙、本多秋五らと知り合う。このころ志賀直哉を訪ね、小林秀雄、瀧井孝作を知る。1936年に千葉医科大学を卒業、医局、海軍火薬廠共済病院などを経て妻の実家である眼科医院に勤め、1950年に浜松市で開業。1947年『近代文学』9月号に本多秋五らが考案した筆名・藤枝静男で「路」を発表。その後も眼科医のかたわら小説を書く。1993年、肺炎のため死去。 主な著作に、芥川賞候補となった「イペリット眼」「痩我慢の説」「犬の血」などがあり、『空気頭』が芸術選奨文部大臣賞、『愛国者たち』が平林たい子賞、『田紳有楽』が谷崎潤一郎賞、『悲しいだけ』が野間文芸賞を受賞している。

「2012年 『田紳有楽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

藤枝静男の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
安部公房
三島由紀夫
三島由紀夫
ポール・オースタ...
ガブリエル ガル...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×