田紳有楽 (シリーズ 日本語の醍醐味 3)

著者 :
  • 烏有書林
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904596043

作品紹介・あらすじ

私小説が「私」を超えたとき、なにが姿を現したか。初期の創作説話から「私倍増」小説にいたる藤枝文学の特異な軌跡を刻印する。

感想・レビュー・書評

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  • 川上弘美の『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』のなかに本作が出てきて、池の底に沈んだ志野のぐい飲みって・・・と興味が沸いて手に取ってみた。

    予想以上に奇想天外で、無茶苦茶で、しかし面白かった。

    「イカモノ」のぐい飲みや鉢や茶碗を、庭にある汚い小さな池に沈めて、古色を帯びさせよう、という姑息な手段をとる骨董商の男と、その池に沈められたぐい飲み(池に棲む金魚のC子と恋をする)、皿、鉢がそれぞれに自我を持って語り出す、というのも無茶苦茶だけれど、後半からさらに話はわけがわからなくなり、ネパールの鳥葬の話から、弥勒菩薩やら地蔵やらも登場し、シュールというのか、カオスというのか、とんでもない話の展開をする。

    『田紳有楽』は1976年の刊行で、実にもう半世紀近い昔の作品となる。言葉は現代では使わない漢字なども出てくるけれど不思議と古びた印象がない。

    普段、自分が好んで手に取る本とはまったく違う出会いがあって、面白かった。

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著者プロフィール

1907年、静岡県藤枝町生まれ。本名勝見次郎。成蹊実務学校を経て第八高等学校に入学、北川静男、平野謙、本多秋五らと知り合う。このころ志賀直哉を訪ね、小林秀雄、瀧井孝作を知る。1936年に千葉医科大学を卒業、医局、海軍火薬廠共済病院などを経て妻の実家である眼科医院に勤め、1950年に浜松市で開業。1947年『近代文学』9月号に本多秋五らが考案した筆名・藤枝静男で「路」を発表。その後も眼科医のかたわら小説を書く。1993年、肺炎のため死去。 主な著作に、芥川賞候補となった「イペリット眼」「痩我慢の説」「犬の血」などがあり、『空気頭』が芸術選奨文部大臣賞、『愛国者たち』が平林たい子賞、『田紳有楽』が谷崎潤一郎賞、『悲しいだけ』が野間文芸賞を受賞している。

「2012年 『田紳有楽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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