新・平家物語(十一) (吉川英治歴史時代文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061965577

作品紹介・あらすじ

源氏の内輪もめが幸いして、都落ちした平家は急速に勢力を挽回していた。西海は一門の軍事力の温床、瀬戸内には平家の兵船が波を蹴たてて往きかい、着々と反攻の秋を窺っていた。わけて一ノ谷は天険の要害、平家自慢の陣地だった。加えて兵力では、平家は源氏の何倍も優位にある。しかし、地勢と時と心理とは、まったく平家に不利だった。義経軍の坂上からの不意打ちに算を乱して敗走する。

感想・レビュー・書評

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  • 一ノ谷合戦突入!源氏の主力は源範頼が尼崎経由。別働隊、源義経は丹波道を迂回し、一ノ谷背後に進軍。結果はさておき、平経盛の子供3人が戦士、その中にあの有名な敦盛も…熊谷直実との描写は胸が詰まる。
    物語の後半は、鎌倉に送られた後、平重衡が中心。死を待つ重衡に執拗に利用価値を見つけようとする頼朝。
    この裏側では、木曽孝高の惨殺事件、平重盛の嫡男で、美男子と言われた維盛の那智の沖での入水自殺など、栄華を極めた平家の綻びが…。
    次はいよいよ、、屋島の戦い…そして、重衡の、運命は…

  • 前半は一ノ谷の合戦、後半は中将重衡の鎌倉下りが描かれている。一ノ谷の合戦では、院宣に欺かれた平氏が、義経率いる源氏に大敗を喫する。死者は源氏の方が多い位だと記載があったが、忠度や経正といった平家重臣達が悉く首になったことから、平家に大ダメージを与えた戦と言って過言は無い。和平を望む平家が、立身出世の為功を立てんと躍起になる源氏に「世を乱す朝敵」として討伐される様は、何とも皮肉である。戦後の処置含め、虚しさが残る場面であった。

    後半は重衡。自ら平家の業を背負い、それでも源氏との和睦を果たさんとする姿勢に忠義を感じた一方、源氏繁栄の憂いとして義仲の子義高を躊躇なく首にした頼朝の冷酷さに、今後源氏と平氏が和睦する可能性が無き事に寂しさを覚えた。

    次巻は屋島の戦いに移るのか。重衡の処遇はどうなるのか。頼朝の背後にいる北条政子・時政親子の存在感は高まるのか。期待。

  • 源平合戦・一ノ谷の戦い
    重衡と千手の恋

  • 「一ノ谷の戦い」が本巻のメイン。

    歴史小説は登場人物が多く、人物間の人間関係やその人が置かれている状況が目まぐるしく変わるため、それらを読み解くのは、パズルを解くのと同じ感覚なので面白い。

    吉川英治は「この世の無常」を描写するのがとても上手いと思う。

  • 義経を大将とする源氏と、西国に落ち延びた平家との戦いの第一幕、一の谷の戦いです。有名なひよどり越えの作戦や、熊谷直実と平敦盛の一騎討ちなどが描かれます。

    平家の滅亡まで一気に物語が進んでいくものと思っていましたが、その後の義経の悲劇的な運命を予示するような、義経と頼朝の間にしだいに齟齬が生じていく過程が記されています。

    やはりというか、だんだん重苦し雰囲気になってきて、清盛が主役を張っていた頃のような爽快さはもう味わえないのかと、ちょっと残念ではあります。

  • 誰が正義で誰が悪なのか。
    源氏、平氏、どっちも人。目指すところは一緒なんだけど、お互いを理解できなかった、しようとしなかっただけ。
    戦争もそう、宗教もそういうものかもしれない。
    院を中心とした政治国家を復活させることが、自分の地位安定化と泰平国家の確立に繋がると信じ、源氏、平氏を巧みに操る後白河が怪しく描かれる。

  • 一ノ谷の戦いとその後をじっくりと描く。いや、戦いよりもその戦前と戦後の人間模様に重点を置いているといっても過言ではない。
    前半では、平敦盛が主役。恋人逢いたさに陣抜けして京に戻ったところを義経一行に発見され、敵の公達にもかかわらず、丁重に送り届けられたくだりはほのぼのして良い。また、陣にカムバックした後の兄弟、親族とのやりとりは大家族だけに楽しい人間模様が味わえた。そして、熊谷直実との一騎打ちにより討たれる…。熊谷とのやりとりは平家物語の名場面であるが、敦盛も熊谷もそれ以前から登場しており、伏線の張り方は充分である。

    後半の主役は同じく平家の公達である平重衡。東大寺や興福寺を焼失させた大悪人として描かれることの多い重衡だが、吉川英治流のアレンジか、囚われ人となった後に世の平和を願い和平工作に協力したり、法然の教えを受けたり、骨抜きにするために送られた千手ノ前を思いやったりと、かなりの人格者というキャラ設定がなされていた。
    全16巻もあり、一ノ谷の戦いが終わってもまだ11巻なので、この先どうやって進行していくかが不思議だったが、こうやって足踏みしてじっくりと描くのだと理解。
    次巻はいよいよ屋島の戦いか。それとも、もうしばらく足踏みを続けるのか…。楽しみである。

  • いよいよ一の谷の合戦。
     後白河上皇の偽の和睦の院宣に騙され、源氏の不意打ちをくった平家
     は多くの戦死者を出した。
     とくに印象に残ったのは、有名な「敦盛」の死。
     敦盛を討った熊谷直実が、敦盛の父「経盛」にあてた
     「われも人の子の親にて候ふものを、なんぞや、親ある人の子を
     討ち候ひぬ」という手紙には泣かされる。
     そして人質になった重衡にも。
     また、頼朝の元に人質としてもらわれていた木曽義仲と巴の一粒種
     「義高」と頼朝の娘「大姫」は恋仲であったのに、頼朝は「義高」を
     殺してしまい、その結果「大姫」はほとんど自死のように狂い死にして
     しまったのいう悲劇にも泣かされる。
     まったく戦争には「勝者」はいないということをあらためて実感した。

  • 義経と頼朝の関係が雲行きが怪しくなってきました。政治面で優れた頼朝と「戦略面」に優れた義経ですが、義経の兄の頼朝を慕う姿が健気です。愚弟もしくは愚兄であれば関係がこじれる事はないのかもしれませんが、そうであれば平家を倒せなかったかもしれないし。パワーバランスと言うのは難しいです。平家側もやしまでの幼い帝の姿が健気です。奢れるものも久しからず...清盛ありし頃の平家が懐かしいです。

  • 敦盛と経正の兄弟の信頼がよかった。吉川新平家では経正がピックアップされることが多いように思う。

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著者プロフィール

1892年、神奈川県生まれ。1921年、東京毎夕新聞に入社。その後、関東大震災を機に本格的な作家活動に入る。1960年、文化勲章受章。62年、永逝。著書に『宮本武蔵』『新書太閤記』『三国志』など多数。

「2017年 『江戸城心中 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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