アメン父 (講談社文芸文庫 たW 1)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061982420

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  • くっきりとした記憶のわきから靄のような記憶が割り込んできていつのまにかその輪郭は明確になり、そしてその間にも別の記憶が朦朧としたままどこからろもなく湧きだしてきて…ということを考える。

    とてもあいまいで、いろいろと見聞きはしてきたし、それよりなにより(赤の他人にくらべて)長きにわたり実際に触れあってきたけど、知っている、とははっきりと言いきれない、父親のすがたかたち生きかたを、まわりくどい言い方を厭わずに書きつらね続けた(おそらく著者だったらここで「生きかた」なんて言いまわしは使いたがらないだろう)ことにつよい感嘆をおぼえるのである。

    なにかをおもいだしているうちに、ふっと別のことがあたまをよぎり、つぎの瞬間にはそのことが頭のなかの大半を占めているというような、記憶のよみがえりかたがそのまま文章になったようで、そういう箇所に出くわすたびにゾクゾクしてしまう。とおもうのは自分だけだろうか。

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著者プロフィール

田中小実昌(たなか・こみまさ):1925年~2000年。小説家、翻訳家。戦後、復員後、東京大学中退。テキヤ、バーテンダーなど様々な職業を経て、小説家、翻訳家となって活躍。無類の映画好き、酒場好きとしても知られる。

「2023年 『ひるは映画館、よるは酒』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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