ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062107891

感想・レビュー・書評

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  • 本書は睡眠についての本だ。睡眠の仕組み,ひとがうまく眠れないの(睡眠障害)はなぜなのか,そして寝不足がもたらす悲劇について書かれている。著者は睡眠障害の診断と治療の世界的権威であり,1970年には米国スタンフォード大学に世界初の睡眠障害センターを設立した人物である。

    邦訳されている同著者の本としては『スリープウォッチャー』(みすず書房)があり,本書の内容は同書と一部重複する部分もある。しかし,本書では,睡眠障害(そして睡眠障害がもたらす寝不足)の恐ろしさや睡眠改善の実践的方法を紹介することにより重点が置かれている。終章の「三週間の眠り改善プログラム」はまさに睡眠改善の実践的方法である。

    本書は,タンカーの衝突事故,航空機の墜落など重大事故の真の原因が寝不足にあったと指摘する(48-49頁)。ひとには必要な時間が個々で決まっており,睡眠時間がそれに満たない場合には,その分が「睡眠負債」として溜まっていくのだという(50頁)。そして睡眠負債が十分に大きく膨れ上がると,ひとはどんなに頑張っても眠ってしまう。長距離トラックを運転しているドライバーでも手術を行っている医者でも同じである(146-150頁)。

    著者によれば,そもそも睡眠障害そのものがあまり認知されていないという。睡眠障害の特徴は昼間の強い眠気や疲労感であるが,「仕事で疲れているから」とか「歳をとったから」とかの理由で「眠れないのが当たり前」とみなされてしまう。そして適切な治療をうけることもないのである。

    本書の発行年は2002年である(原著は1999年出版)。科学は日進月歩であり,発行から10年経った現在では,睡眠研究の分野でも新たな知見がきっとあるだろう。ひょっとしたら本書の内容の一部は10年で古くなってしまったものもあるかもしれない(本文で紹介されている実験に古いものが多いような気もする)。たとえば井上昌次郎『ヒトはなぜ眠るのか』の内容と本書の内容では主張が異なる点がいくつもある(専門知識がないのでそれが本当に不一致なのか,どちらがより正確なのかはわからないが)。しかし,本書が発する重要なメッセージである「睡眠に対する認識の重要さ」は非常に重要なものであり,それを認識できるという意味でも本書は非常におすすめできる。

  • 室井慧2020.7.22~, 石塚真美2020.9.2~

  • 20100927読了。
    眠りについて非常に興味深い本。
    特に、睡眠にまつわる病気や症状に深く書いてある。
    また、より良い睡眠ライフを提案して、より活動的な生活を手に入れるための具体的なプランも提案されていて参考になる。

  • 睡眠学の教科書と呼んでいいだろう。

  • 睡眠に関して科学的な知見で述べられた本。他書と同様に睡眠第一をうたっているが、生活の質を上げるためには科学的な知見も理解しておいた方がより良いので是非読んでおくべきだと思う。
    発行日が2002年と古く、最新の情報は大きく変わっているかもしれないが、もし同類の本が新しく出ているのなら更に読み込んでみたい。

    なお自分は睡眠についてはかなり理解していると思っていたが、やはり科学的な専門知識は全くと言っていいほど理解できていなかった。特に睡眠負債は無くせば良いとばかり思っていたが、負債を0にしたらそれ以上は貯蓄できない事、睡眠負債を0にすると寝付きの時間が伸びて不安になり余計に生活の質が落ちる事は、少し以外だった。自分に適度な睡眠負債を見つけ出して、質の高い生活を継続していきたい。

  • 寝不足がいかに健康に悪いか、自分の命を危険にさらしているかに気がつくことができる本。ある程度までの睡眠不足(本書では睡眠負債と表現)がないと、寝付きよくぐっすり眠れないというのは少々意外。しかし、感覚的には合っている。

    以下 注目点
    ・睡眠負債はある程度抱えていなければ夜寝付きが悪くなってしまうが、ためすぎても圧縮はできない。ためた分だけ眠らないと返済できない。
    ・睡眠負債がかさんでいるときは、ごく少量のアルコールでも命取りになる。
    ・光を浴びると体内時計がずれる。真夜中を境にして、体内時計のずれる方向が逆転する。明け方は時計が速まる方向になる。→目が早く覚める。
    ・25時間程度の睡眠負債は、あったほうが、健康に深刻な影響はなく、逆にぐっすりよく眠れる。
    ・睡眠負債が50時間に近づくようだと、ぼんやりして普通の活動はできなくなる。
    2014/01/21

  • いろいろな実験結果から根拠を引用しているので説得力のある文章だった。現在、自分はかなり睡眠に気を遣って生活しているので、その質をよりよくしていく方法を知った。いまの自分が実践している内容が肯定されることによって自信が生まれた。

  • 2002年刊行。睡眠と知的な活動、脳との関係、あるいは睡眠関連の疾病、むずむず症や睡眠時無呼吸症候群の実態や二次障害について解説。睡眠時無呼吸症候群に注意。

  • やる気が起きない。無関心。機嫌が悪い。疲労感に襲われる。その原因の多くは「睡眠負債」。スタンフォード大学に世界初の睡眠障害センターを設立,全米睡眠障害センター連合会長を長年務めた睡眠学の世界的権威が,あなたの適切な睡眠時間を教えてくれます。

  • 睡眠という身近な当たり前の行いなのに、人の命にかかわるとても大切な事、決して軽く見てはいけない。
    そして体が疲れている時は睡眠負債を疑い専門医に相談する大切さを痛感した。

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