- Amazon.co.jp ・本 (484ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062108867
感想・レビュー・書評
-
大和が「おいしいコーヒーのいれ方シリーズ」の勝利に似ていて
ストーリーは違うのにどこか重なった。
大和に起こったことはどうしたっていつまでも終わらない。
相手がそこにいるのだから。
よっぽど会わないように、連絡をとらないようにするか、
果ては縁を切るぐらいしないと無理だ。
けれどそれは物理的にであって
そうしたところで結局終わりはしないのだ。
大学を休んででも「かむなび」にいることにした時間は
大和にとって必要だった。
大なり小なり、だれかを傷つけるつもりはなくても
そうなってしまうことがある。
でもこれはわかっていてそうなったのだ。
人はだれかを傷つけないようにと生きているものだと思う。
けれどこれは傷つけるのをわかっていて先へ進んだのだ。
・・・と第三者だから思うのだろうか。
人には止められない感情というものもあるけれど
それをその瞬間に理解するのは難しい。
だからそれは起こったのだろうか。
桜ちゃんと母親のやりとりもたまらない。
どんなに言葉にしても
理解してもらえないときがある。
それはとてもつらく、切ない。
小学生の桜ちゃんには、その時間がどんなに長かったのだろう。
村山さんの描く人物描写がとても好きだ。
この作品や「翼」のような作品がまた読みたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
恋人の裏切りで心を痛め、自信をなくした祐介は、大学を休み、菅平の旅館で住み込みのバイトを始めた。
祐介が出会った人達がみんないい人で、ここにいたらきっと心は洗われると思わされます。
ただ、それぞれに様々な事情があり、皆それに向き合っていて、その中で強く生きている人達だということが徐々に分かり、物語の奥深さに感心しました。
夫の実家が上田市で、高崎にも親戚がいるため、方言や言い回しが嬉しくくすぐったかったです。
瞳子さんと祐介のことは著者の作品ならではかなと思いました。
今後の進展には期待しないものの、祐介には必要なステップだったのかもしれませんね。
タイトルは英語の格言とのこと。『どんな不幸にもいい面はある』、なるほどです。 -
菅平高原に行きたくなったし、かむなびみたいな宿に泊まってみたくなった。
ストーリーの展開が良かったと思うし、沢山の登場人物たちの複雑な心模様がうまく描き出されていて、一人一人に感情移入しながら、想像力を高めることもできた。
ケンタかわいすぎるvv -
大学生の頃に読んで、当時一番好きだった本。
何度読み直したかわからない。
失恋が理由で東京から信州菅平の宿「かむなび」に逃げてきた大学生の話。
かむなびで働く内に人とのつながりを確認し自然に癒されていく。
上下巻の長編で読み応えばっちり。登場人物のキャラクターも面白く、田舎暮らしの情景も微笑ましい。
後半に息を飲むような山場があり、はっきりと「悔しい」と感じさせるほど感情移入して読んでしまう。
何か特別なことが書かれている訳ではなく、内容はあくまで「日常」。長野県の田舎の自然や仕事や普通の生活が描かれる。
「日常」をここまで面白く書けるなんて何度読んでも凄いなと思う。
僕の好きな本。 -
優しい気持ちになれる本。登場人物それぞれがほんとに優しい。綺麗な情景が目に浮かぶ。
-
感想記録なし
-
ミニコメント
失恋の物語…失恋から始まることもありますよね?
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/337869 -
祐介の兄と桜ちゃんのお母さんが
ちっとも分からなかった。
話の中で、その手の人物が必要なのだろうけど
うーむ、それなら も少し違う感じは なかったのかな?
キャラが薄っぺらく思えた。
あと、さいご。
寝る必要あったのかな?
ヤッた次の日、踏ん切りがついて 実家に行くという…
それなら、最初からしちゃえばよかったじゃん!
なんて、身も蓋もないこと 思った。
軽井沢に猫と住んでるわりに
自然の描写も あまりなかったし
期待はずれだった。
たぶん、もう読まない。
酷評でごめんなさい。
-
村山由佳作品は星々の舟に次いで2冊目。長編作品としては初。
登場人物たちが抱く感情が、一方向に全振りした分かりやすいものではなく、さながら円を描きながら放射状に広がっていくようだと、読み進めながら思った。感情が渋滞しているかのようだ、とも。これはゴチャついているとか、そういったネガティブな意味ではなく、多分人間の感情としてとても自然なことなのだと思う。
私はタカハシと主人公の兄には終ぞ共感できなかったが、創作特有の"分かりやすいモンスター"のような印象ではなく、それこそ現実の「こういう人いるよね」みたく"納得はできないが理解はできる" といったような、そんな印象だった。作中の登場人物を通してではなく、等身大の自分として直接そんな感慨を抱くのは、私にとって滅多に無いことで。だからこそ、村山由佳作品には他にはない読後感を覚えるのだと、読了した今は思う。星々の舟の時から感じていたが、登場人物たちのパーソナリティの多様性と奥行きの深さが本当に秀逸だ。
物語部分だが、大抵のドラマは主人公が住み込みで働いている宿「かむなび」で起こる。だから、と言うべきか実はそんなに大きなことは起こっていない。そこに人々がいて、感情が有り、忘れえぬ過去が有り、悩みながらも進まんとする未来が有る。ただそれだけの物語だ。それでもこの物語が魅力的であるのは、上述の感情と穏やかな時間の経過と作中の雰囲気、つまりは"変わりながら、変わらずにあるもの"なのだと思う。
かつて私が大学生だった頃、劣等感と罪悪感に支配された当時の生活から脱却したくて、遠方の旅館にて住み込みのバイトをする、ということを度々妄想していたことを思い出した。妄想と言うよりは限りなく祈りに近かったか…勿論、現実的に許される訳もなかったが。随分後になって発覚したが、当時は自律神経にも不調をきたしていたし、その意味で、私は本作と不思議にリンクしていたように思う。更に言えば他人事には感じられなかった…特に祐介と花綾。
もし仮に、当時本作に出会っていたとして。果たして私は今のように読後感を愛でることが出来ただろうか。ままならぬ現状を憂い、憧憬を通り越して嫉妬や絶望さえ抱いたのではないか。そんな気がしてならない。今、私が穏やかな気持ちで本作と向き合い、そして慈しむことができたのは、時間の経過に伴って、負の感情と距離を置きつつも当時の痛みを覚えているから。つまりそれは私自身の"変わりながら、変わらずにあるもの"に響いたから、なのではないかと考える。だから多分、この読後感は今だけのものであり、たとえ将来痛みを忘れてから再読したとしても同じ感慨は得られないだろうな、という予感めいたものを感じた。だからこそ、今の読後感は尊いものなのだと思う。良き時に良き本に出会えたことに感謝したい。 -
この本も、村山由佳さんの中でベストスリーに入るくらい好き。