桜宵

著者 :
  • 講談社
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感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062117852

作品紹介・あらすじ

今夜も"香菜里屋"で、ひとつ謎が明かされた。旨いビールに、しゃれた酒肴。そして何よりこの店には、事件を読み解く心がある。

感想・レビュー・書評

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  • 三軒茶屋駅からちょっと歩いた路地裏に、ぽってりと白く浮かび上がる提灯。
    その温かい光のように、訪れたひとの心も胃袋も温めてくれるビアバー、香菜里屋。

    『花の下にて春死なむ』に続き、お客たちが持ち込んだ謎を
    マスターの工藤が鮮やかに解く、香菜里屋シリーズ第二弾です。

    明太子の生クリームあえや生雲丹を挟んで揚げ、
    コンソメスープ仕立てにした4種類の味の揚げ出し豆腐とか
    春キャベツとアンチョビの和風パスタとか
    相変わらず出てくる料理がとてつもなくおいしそう!

    。。。なのですが、困ったことにこのシリーズ、料理はほっこりと温かい味わいなのに
    謎解きで見えてくる風景は、思わず身震いしてしまうほど冷たく厳しい場合が多くて。

    今回収められている5篇のうち、最初の『十五周年』は珍しく優しい結末で
    「おお!ついに香菜里屋シリーズもやわらか路線に?!」と喜んだのですが
    次の『桜宵』は、救いがあるとはいえ、ほろ苦い味わい。
    最後の『約束』に至っては、苦いどころではなく解毒剤が欲しくなるような重い物語です。
    香菜里屋自慢のアルコール度数の違う4種のビールのうち
    オンザロックのスタイルで供される、最も度数の高いビールさながらに。

    ミステリは、人間の本質を鋭く抉ったものに限る!という方はぜひ。
    それにしても、北森鴻さんは残念ながらお亡くなりになってしまったけれど
    香菜里屋シリーズに登場する料理のレシピ本を
    どなたか心ある料理研究家さんが出してくださらないかしら、と
    夢想してしまう春の宵です。

    • まろんさん
      ohsuiさん☆

      おお、ohsuiさんも香菜里屋ファンでいらしたんですね♪
      私、ビールはほとんど飲めないのですが、
      もし近くに香菜里屋があ...
      ohsuiさん☆

      おお、ohsuiさんも香菜里屋ファンでいらしたんですね♪
      私、ビールはほとんど飲めないのですが、
      もし近くに香菜里屋があったら、お料理目当てで毎日でも通いたいです(笑)
      お店に入る前に、入り口横の等身大の提灯に頬ずりするのが夢です(*^_^*)
      2013/05/01
    • norigami112さん
      はじめまして。
      まろんさんのレビューを読んで気になり読んでみました。
      本当にこんなお店があったら是非行ってみたいと思うようなお料理の数々、そ...
      はじめまして。
      まろんさんのレビューを読んで気になり読んでみました。
      本当にこんなお店があったら是非行ってみたいと思うようなお料理の数々、そして、4種類の度数のビール。想像するだけでワクワクしてしまいます。
      しかしながら、謎解き自体は…最後の章は確かに解毒剤が欲しくなりました。

      でもとても興味深い作品だったので、他の作品も挑戦してみます*\(^o^)/*
      2013/05/22
    • まろんさん
      norigamiさん☆

      わあ、私の拙いレビューをきっかけにこの本を読んでくださったなんて、感激です!
      香菜里屋、お店の佇まいが本当に素敵で...
      norigamiさん☆

      わあ、私の拙いレビューをきっかけにこの本を読んでくださったなんて、感激です!
      香菜里屋、お店の佇まいが本当に素敵で、お料理が出てくるシーンは
      あまりにおいしそうで、そこだけ何度も読んでしまったりする私です(笑)
      そしてnorigamiさんも、最後の章の重さ・苦さを
      同じように感じてくださったことに、さらにさらに感激です。

      この本は香菜里屋の2作目で、シリーズは4冊目で完結するのですが
      私も3冊目以降は、買ってあるのにまだ読めていないんです。
      謎解きよりも、どんなお料理が出てくるのか、気になってたまりません(*'-')フフ♪
      2013/05/25
  • 『桜宵』北森 鴻  講談社

    『花の下にて春死なむ』をかなり以前に文庫で買って読んだきり、次作を読まずにここまで来てしまった。これはシリーズ2作目。

    三軒茶屋の路地の奥にある、ビアバー《香菜里屋》の常連客の心に抱えた謎を店主の工藤が鋭い観察眼と推理で解き明かして行く。近藤史恵の『タルトタタンの夢』『ヴァンショーをあなたに』と構成は似ているかも知れない。事件を解決すると言うより、既に起きた事実を思いもよらない切り口で示唆する所は石持浅海の『座間味君シリーズ』も思い出させる。

    ビアバー《香菜里屋》を一人で切り盛りするマスターの工藤の隙の無い仕事ぶり。その日の天候や客に合わせて出される料理と酒が、とにかく絶品。然も「◯◯の良いのが入ったので…」「ちょっと変わった食べ方を…」と工藤がすすめる料理は間違いなく客の舌を満足させ、違う度数を四種類と、ワールドビールを数種類揃えたこの店は、客達に至福の時を与えてくれる場所ぢある。読んでいると、うっとりして来る様な酒肴の数々…。とにかく、推理も楽しめるが、「こんな店があったら」としみじみ思わせる逸品。
    この中では、やはりタイトルになっている「桜宵」が一番印象的だつた。ただ、前作をよんで続きを読むのを躊躇ったのは、ミステリーの内容が、人間の心のひだに迫っている分、ユーモアが入る隙が無く、スカッと解決するわけではないので、料理は美味だが読後の後味をあの頃の自分は理解出来なかったのかもしれないなぁと今更の様に思った。解き明かすを経てもう一度読んでみて、良さが沁みるシリーズもある。

  • ビアバー「香菜里屋」には、いつも旨い酒と料理と謎解きがあります。シリーズ第2作で、前作より洗練されていますね。安楽椅子探偵ものですが、常連客がいろいろ足を使って調査するので飽きさせないです。今回はカクテルの話もあって幅がありました。それにしても主人の工藤が作るおすすめ料理はどれも旨そうでたまりません。岩手に出張?したのは驚きでしたが、彼の謎めいたところもまた魅力ですね。

  • 目次
    ・十五周年
    ・桜宵
    ・犬のお告げ
    ・旅人の真実
    ・約束

    今回は人の心の暗部をさらすような結末が多くて、しかもちょっといい話系の『十五周年』や『桜宵』にしても、仕掛け人にからめとられたような展開に、心がそう快感を欲してしまう。

    例えば親族が一人もいなくなってしまった故郷から都会に出てきたタクシー運転手の日浦。
    田舎の息苦しさもしんどいけど、都会の寂しさもつらい。
    だけどそれは、自分が選んだ道ではないのか?
    いいのか、それで?(十五周年)
    (良い選択だったことが後日わかるけど)

    『桜宵』も、自分が夫を残して死ぬとして、そこまでプレゼントというかおぜん立てするのはやり過ぎな気がする。
    逆にすべてを知っていて黙って死んでいったのか…とうすら寒い思いがするような気がするなあ。
    私だったらそんなことされたら嫌だ。

    そして後半の3編はどれも、自分勝手な人物の話。
    リストラを進める人事部長がするにはあまりに幼稚な行動と、それを知って足元を掬う人物の嫌らしさ。(犬のお告げ)
    誰もがいい人という男が殺される理由というか…この場合のいい人って、都合のいいひとってことで、本人は善人でもなかったし自己中だったね。(旅人の真実)
    そして自分勝手の最たるものだったのが『約束』に出てくる彼女。
    彼女と別れたことが、彼の人生最大のラッキーだったかもよ。

  • 装幀 / 藤田 新策
    初出 / 『IN☆POCKET』2002年1月号・4月号・7月号・11月号、2003年1月号

  • バー「香菜里屋」に集う人々をめぐる事件。
    東京・三軒茶屋の路地裏にひっそりと佇む
    「花の下にて春死なむ」に続く
    バー「香菜里屋」のマスターが探偵役のシリーズ第2弾。

  •  三軒茶屋のビアバーのマスターが、客に持ち込まれる謎を解く、≪香菜里屋≫シリーズ第2弾。
     淡々と語られる連作短編集だが、明かされる個々の実情はやるせなく重い。
     人間の業を叙情的なタッチで描きながら、くど過ぎず、余韻を残す筆致は安定感がある。
     出てくる肴はどれも洒落ていて、読んでいるだけで美味しそうだ。
     探偵役のマスターの背景も匂わせており、続巻への期待を繋げる。

  • 久々に読み返したこのシリーズ。面白かったし、やっぱり食べ物が美味しそう。もっと読みたかったなぁ。まあこれは一応完結してるからまだいいけど…私の好きなシリーズにかぎって完結しないんだよな…不思議(T ^ T)

  • 出てくる料理がとても美味しそう。
    謎解きは少し弱いかなぁという気がした。
    想像の域を出ないところが不思議な感じがする。

  • いつもながら、マスターの作る料理は本当に美味しそう…。
    こんなお店が身近にあったらいいのになぁ。

    謎解き自体は、あまりに鮮やかすぎ?てピンとこないことが多いし、
    人間の悪意が感じられる話もあり
    必ずしも良い読後感とはいえないのだが、
    この「香菜里屋」の雰囲気につられて手に取ってしまう本だ。

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著者プロフィール

1961年山口県生まれ。駒澤大学文学部歴史学科卒業。’95 年『狂乱廿四孝』で第6回鮎川 哲也賞を受賞しデビュー。’99 年『花の下にて春死なむ』(本書)で第 52 回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門を受賞した。他の著書に、本書と『花の下にて春死なむ』『桜宵』『螢坂』の〈香菜里屋〉シリーズ、骨董を舞台にした〈旗師・冬狐堂〉シリーズ 、民俗学をテーマとした〈蓮丈那智フィールドファイル〉シリーズなど多数。2010 年 1月逝去。

「2021年 『香菜里屋を知っていますか 香菜里屋シリーズ4〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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