機長の失敗学

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062118002

感想・レビュー・書評

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  • 畑村洋太郎先生で有名な失敗学を航空事故にも適用,分析した書。
    元機長の具体的な記述が多く,大変わかりやすい。

    第一部は,85年のJAL123便の事故を分析している。

    日本人は結果よりもプロセスを大切にする人種だといわれている。
    御巣鷹山への墜落でもクルーたちは最善の努力を尽くしたということで,小さなミスは取り上げられることはないが,その小さなミスがなければあそこまでの大事故にならなかったのかもしれない。
    そういった行為は,一歩間違えば死者や遺族に鞭打つと誤解されるものかもしれないが,それ以上に被害を拡大させないためには必要なものであると思う。実際に日航機墜落事故の7年後には米国にて似たようなトラブルが発生したが(日航機のトラブルから教訓を学んでいた機長は)最悪の事態は回避できている。

    ここまで日航機墜落事故を技術的に詳しく解説した本は見たことがない。あんまり技術に明るくない人やそこまで詳細な原因を追究しようとしない人にはお勧めできません。

    第二部では,他の事故も言及し,どのようにすれば事故を回避できたかを分析。

    第三部では,プロフェッショナルパイロットとして普段の業務姿勢を綴っている。トラブル時には機長の判断力等の技術が要求されるが,日常的にその力量を判断するのは難しい。しかしながら,機長は平時から様々なことに気を配ってトラブルが起きないよう最善の努力をしている。
    著者が実際に行ったプロフェッショナルな成功例(現状に満足せずにベストを尽くす)を挙げている。普段から飛行機に乗るときにも様々な努力が集結しているのだと,改めて実感した。

  • パイロットってのはクールであろうと粗暴であろうと、武士みたいな人なんだな。凄い責任感と冷静さ。カッコいいですね。

著者プロフィール

航空評論家/元日本航空機長
1969年慶應義塾大学法学部卒、日本航空入社。
DC-8、ボーイング747、エンブラエルE170に乗務。首相フライトなど政府要請による特別便の経験も多い。ボーイング747の飛行時間は1万4051時間という世界一の記録を持つ。2011年10月の退役までの総飛行時間は2万1000時間超。日本航空在籍時に安全施策の策定推進の責任者だったときにはじめた「スタビライズド・アプローチ」は、日本の航空界全体に普及し、JAL御巣鷹山事故以来の死亡事故、並びに大きな着陸事故ゼロの記録に貢献している。
航空問題と広く安全問題について出版、新聞、テレビなどメディア、講演会などで解説、啓蒙活動を行なっている。著書多数。近著に『飛行機ダイヤのしくみ』(成山堂書店)がある。

「2020年 『パイロットは知っている 羽田増便・都心低空飛行が危険なこれだけの理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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