- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062118507
作品紹介・あらすじ
"魂の原日本"を求めて縄文へと遡る思考の旅。宿神の秘密を明かす奇跡の書、金春禅竹『明宿集』現代語訳も収録。
感想・レビュー・書評
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中沢新一さんの著作はあまりおもしろくないものもあるけれど、これはかなり面白かった。よく書かれた民俗学の本。
石の神として縄文時代あたりにまつられたシャグジなるものが、その後国家の形成、天皇制の確立、仏教の組織的普及を経てもなお脈々と残り、中世にあっては芸道の世界に宿神として、地の底から噴出するエネルギーのように息づいていた、というこの本の思考はたいへん魅力的である。
天台宗本覚論や猿楽(能)に関する記述も興味深かった。
ただし、いつも中沢さんに感じることだが、その思考や想像力はちょっと論理性をとびこえてしまう部分があって、全面的に首肯できない点も感じる。そういう部分は、民俗「学」の学問性を逸脱しているところなのだ。
それでもこの本は沢山の刺激を含んでいる。現代社会的な「理詰め」や「行き詰まり」を解体しうるパワーを持った本だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とても面白かった。参考文献も気になるものがたくさんあった。
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2008/08/15読了。
「宿神」、「ミシャグチ」と呼ばれる、東日本を中心に分布する神の由来を説き明かすものである。
ただちょっと説明不足なので、中沢理論の中核となっている「カイエソバージュ」シリーズから読むべきである。
しかし、「カイエ」を読むと、この内容が物足りないものに感じてしまうから、なかなか微妙である。
この本の主題となるのは、表の権威にあふれた神と、その裏の「後戸の神」(宿神、ミシャグチがこれにあたる)の二重構造が、日本の社会の中の様々な場面で出てくるということである。
ちょっと、この二重構造が現れる実際の場所を、さらに深く語ってほしかったところはある。
天皇制に深くセットされていると言ってはいるのだが、その具体的な部分にふれてはいないし。
おそらく即位儀礼とかそういったものから解き明かせるのだと思うので、もう少しちゃんと語っても良いのではないかと思う。
「群像」連載をまとめたものとあってか、難しいところをすっとばして表面だけライトになぞっているという感じである。
ところで、中沢新一の問題点は本格的な論文の形式をとってないから、どこまでが他人の説でどこからが中沢オリジナルなのかわかりにくいところにある。
私が文化人類学、民俗学が専門外だからそうなのかもしれないが。
出典はかかれているから原本にあたれば、その境界ははっきりするのだろうが。 -
読みやすくて面白い。……実は再読だったのですが、再読でもじっくりと味わって読むことの出来る本だと思います。芸能の神であり、隠された神「宿神」をめぐる一冊。
装丁も祖父江慎+コズフィッシュで中々素敵です。本の背から表紙・裏表紙にかけてのでこぼこ加工、目次の次のタイトルページ(フランス語)から日本語タイトルページへ移ったときのかっこよさにしびれます。 -
2008/08/15読了。
「宿神」、「ミシャグチ」と呼ばれる、東日本を中心に分布する神の由来を説き明かすものである。
ただちょっと説明不足なので、中沢理論の中核となっている「カイエソバージュ」シリーズから読むべきである。
しかし、「カイエ」を読むと、この内容が物足りないものに感じてしまうから、なかなか微妙である。
この本の主題となるのは、表の権威にあふれた神と、その裏の「後戸の神」(宿神、ミシャグチがこれにあたる)の二重構造が、日本の社会の中の様々な場面で出てくるということである。
ちょっと、この二重構造が現れる実際の場所を、さらに深く語ってほしかったところはある。
天皇制に深くセットされていると言ってはいるのだが、その具体的な部分にふれてはいないし。
おそらく即位儀礼とかそういったものから解き明かせるのだと思うので、もう少しちゃんと語っても良いのではないかと思う。
「群像」連載をまとめたものとあってか、難しいところをすっとばして表面だけライトになぞっているという感じである。
ところで、中沢新一の問題点は本格的な論文の形式をとってないから、どこまでが他人の説でどこからが中沢オリジナルなのかわかりにくいところにある。
私が文化人類学、民俗学が専門外だからそうなのかもしれないが。
出典はかかれているから原本にあたれば、その境界ははっきりするのだろうが。 -
細野晴臣の霊地巡礼対談相手の中沢新一の本に向かってみたが、読み物として読み流せる類ではなく、冒頭の蹴鞠の神=精霊から先に進めてない。
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テーマの選び方と序盤はミステリーのように面白かったが、読み進めるうちに、こじつけにつぐこじつけが鼻につくようになった。
合間あいまに、興味深い内容もあるのだが、それは先人のあらわした論文のエッセンスだった。
ペダンティックな妄想の垂れ流し。これが最終的な印象。 -
金春禅竹の『明宿集』に拠りながら、宿神と呼ばれ、秩序や体制の背後に潜んでいて、自分自身を激しく振動、励起させることによって、世界を力動的なものにつくりかえていこうとする古層の神、神というより精霊と呼んだほうがよいような存在を探求して、哲学的な思考の中によみがえらせようとする、実に知的で、スリリングな試み本です。
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これはなかなか面白い。著者のわくわくが伝わってくる。
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この世界を見えないところで守っている存在があり、私たちは元来、尊い信心が根底にある文化を築いてきたんだと実感させる一冊。