野中広務 差別と権力

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062123440

作品紹介・あらすじ

部落差別の壁に挑み、頂点まで登りつめる寸前、なぜ「影の総理」は躓いたのか?権謀術数を駆使して政敵を叩き潰す恐ろしさと、弱者への限りなく優しい眼差し。本当の姿はどちらなのか?辣腕政治家の足跡を追った著者は、現代史の光と闇に到達した。水平社宣言から80年余、差別と闘った政治家の軌跡。

感想・レビュー・書評

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  • 古本、2004(平成18)年刊行。
    早いもので、野中が亡くなってもう5年も過ぎた。野中が政界を引退してから、20年になる。
    野中の政界引退については、同和地域(被差別部落)出身という出自が取り沙汰されたことが大きい。その際、麻生太郎が、「野中ら(麻生は、野中の他の有力議員についても、実名を挙げたとされる)部落の人間が総理大臣になるべきではない」と発言したという。その麻生は、自らの首相時代に自民党を下野させてしまうという、世が世ならば切腹となるようなことをしてしまった政治家なのだが、自民党の政権復帰と同時に副総理という要職に返り咲き、現在も80歳を超えてなお、自民党副総裁という要職で政権に影響を与えている。その間、自由民主党という政党は、民主党政権下での野党経験もあったが、野中が影響力を持っていた時代と比較し、確実に劣化してしまっていると言わざるをえない。

  • 差別について記載している場所はほんのわずかであり、ほとんどが野中の政治での手腕についてであった。
     差別の説明はあまりないので、学生にとってはわかりづらいかもしれないが、政治家とのやりとりについてはわかりやすい。

  • 権力闘争とはかくも熾烈なものか、差別と闘う為に差別を利用までしなければならないのか、考えさせられる本であった。

  • タイトル通りの人の伝記。最近亡くなったので読んでみた。

  • 2017年9月19日読了

  • 魚住昭はさすが。
    野中を差別した麻生太郎は許し難い。

  • 4-06-212344-4 357p 2004・8・9 6刷
    野中広務 差別と権力 (講談社文庫) の元になったもの

  • 先日の研修に刺激を受けて気になっていたコレ読了。うーんとちょっと違っていた、どっちかというと当時の自民党・政界ルポ。もっと深い闇のようなものが垣間見えるかと思ったのだが…。

  • 野中広務という政治家を通して、差別や人権、金と権力という現代日本の政治システムを陰に陽に動かした力を描く。差別はいけないという通り一遍のタテマエではなく、本書の執筆自体を当事者である野中自身に問い詰められながら、それでも書くことを「業」として選ばざるを得なかった著者の気迫がにじむ。
    あまりに情報収集とその処理という実務能力に長けていたため、権力への階段を駆け足で上がっていった野中は、一方でその師である角栄のような「大きな構想力」はなかったと著者は言う。いつしか目の前の仕事を誰よりも早くこなすことに自らの存在意義を見出し、所謂「一番病」となって官僚機構に操られてしまう。そして最後には「総裁」という大きな壁の前にまたしても自らの出自が立ちはだかる様を見せつけられ、永田町を去る。

  • 部落差別に苦しんだ幼少時代から、大阪鉄道局での活躍。そしてそこでも経験した部落差別体験から出身地・園部へ戻って町会議員への挑戦。そして園部町長、京都府議、京都府知事、衆議院議員、官房長官、幹事長と権力への道を駆け上っていった人生は大変ドラマティックです。蜷川虎三への支持・対決と揺れた微妙な関係も興味深いものがあります。その権謀術数の数々がが差別体験とも無縁でなかったことを痛感しました。そして小泉政権誕生、小泉2選の際の野中待望論に対して立候補しなかったその理由にもそれが影響していたというのは、ショッキングな内容です。最後に野中が引退を決めた際に麻生太郎・政調会長に向かって言う言葉は日本の底知れぬ恐ろしさを感じました。「あなたは大勇会の会合で『野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ』とおっしゃった。君のような人間がわが党の政策をやり、これから大臣ポストについていく。こんなことで人権啓発なんてできようはずがないんだ。私は絶対に許さん!」この言葉に総務会は凍りつき、麻生は顔を真っ赤にして俯いたままだったというがが、事実なのでしょうか?小沢一郎の凄さが良く語られますが、この人も劣らずに一方の歴史を作った人物であることを思い知らされます。この本は必ずしも野中を持ち上げるわけではなく、その豪腕辣腕と弱者への優しさの2面性を強調しています。細川・羽田連立政権の崩壊、自社の運命的和解による村山内閣の誕生、河野総裁を蹴落としての橋本総裁・首相の誕生、梶山静六の失脚と小渕政権の誕生、加藤紘一の乱の失敗などここ数年の日本政治史は野中を抜きにしては語られないようです。とにかく凄い本でした。丁度、台風23号により舞鶴・豊岡方面の水害がニュースになりましたが、野中・園部町長は水害復興により、中央からの支援獲得で名を上げ、また町財政も豊かになったとのこと。今でもそのような面はあるのでしょうか?

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著者プロフィール

魚住 昭(うおずみ・あきら)
1951年熊本県生まれ。一橋大学法学部卒業後、共同通信社入社。司法記者として、主に東京地検特捜部、リクルート事件の取材にあたる。在職中、大本営参謀・瀬島龍三を描いた『沈黙のファイル』(共同通信社社会部編、共同通信社、のち新潮文庫)を著す。1996年退職後、フリージャーナリストとして活躍。2004年、『野中広務 差別と権力』(講談社)により講談社ノンフィクション賞受賞。2014年より城山三郎賞選考委員。その他の著書に『特捜検察』(岩波書店)、『特捜検察の闇』(文藝春秋)、『渡邉恒雄 メディアと権力』(講談社)、『国家とメディア 事件の真相に迫る』(筑摩書房)、『官僚とメディア』(角川書店)などがある。

「2021年 『出版と権力 講談社と野間家の一一〇年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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