- Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062125772
作品紹介・あらすじ
古の焼物・汝窯。奇跡のような色。いっさいの感情も、作為もゆるさない、「完全」。その奇跡を再現することが、自分の運命だと信じた。空洞が埋まらない心。それが欲したのは、「天空の色」。触れたい、手に入れたい。男は魔力に取り込まれる。
感想・レビュー・書評
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陶芸家として順調に歩んでいたかのようだった次郎は、中国の青磁、汝窯と出会い、魅せられる。
終わってみると、不遇のうちに人生を終えた陶芸家次郎の半生の物語でした。
汝窯と出会い、魅せられ、自分でそれを再現したかった次郎。
汝窯の青は、次郎にとっては幼い頃の満州の空の色で、それを極めることが出来たら、全ての償いになると信じていた。
志を貫徹出来なかったことが残念でなりません。
次郎を支え続けた君子は立派。
たくさんの借金をも、女優の仕事を続け自分の身一つで返し、妻としても母としても自分を律している様子が素晴らしいと思いました。
前半と後半とで、少し話の筋は変わってしまったようにも思いましたが、興味深く楽しみました。
ずっと以前、台湾の故宮博物院に行ったことがありましたが、汝窯の器を見た記憶がほとんどなく、見ているはずなのに、残念なことをしたなと反省しきりです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2018_06_21-070
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全体的にみると、次郎が汝窯のことを追及すればするほど自らも、周りもその得体のしれない渦に巻き込まれていく感じだった。結果は、次郎にとってなんか報われなかった気がする。
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はじめと終わりの話の執着点がズレてしまった感じ。
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おごそか。
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つづいて下巻。自身の窯をもち、平穏な日々が訪れたのもつかの間、中国宋代の青磁・汝窯に魅入られる次郎はそれを再現しようとし、まわりを顧みなくなってしまう。わたしは読みながら取り残されないようついていくのに精いっぱいになった。初めての青磁の世界。古く長い歴史と次郎を一瞬に虜にした汝窯の美しさ。文字で見るだけでもかなりのものなのだろう。次郎の蘇らせたいという情熱の行きつくところは・・・?ストイックで冷たいような壮絶な次郎の半生、上巻とちがい戸惑いが多かった。汝窯に出会わなければよかったのにと何度も思ったけれども、こうなったらぜひ、日本で唯一大阪の博物館に展示してあるというその水仙盆をぜひこの目で見てみたい!巻末の伊藤郁太郎氏の解説、よりわかりやすく物語を理解できました。
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順調だった陶芸作家の生活だが、「青磁」に出会い、「青磁」に引きずられる
女優になった妹、行方不明だった兄との家族の再会もつかの間、青磁によって暮らしは傾いていく
やり直しを決意した直後、脳梗塞により自由を奪われるが人生の最後において青磁発祥の地を尋ねることができた
なかなかの読ませる長編 -
人の生き方みたいなものを考えた。
何もかも投げ捨て一心不乱に目標へ向かって行く。
頂きは果てしなく成功する保証もなにもない。こんな熱い生き方ができるのか? -
芸術に魅せられた人々の物語、といえばありきたり。ただとっかかりとしては主人公が殺人犯であり、服役中の懲役から陶芸を学ぶ、てのが独特かな。そして彼とその家族とのドラマが、かなり読まされる。
それにしてもこの主人公の境遇は一見悲劇的に思えるけど。でも彼が犯罪を犯さなかったら幸せに慣れていたのか、と考えると……どうもそんな気がしない。あるべくしてあるべくところに納まった、という印象を受けるのがなんだか不思議な気も。 -
主人公が青磁に没頭していくさま。
恐ろしい。