虚夢

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 511
感想 : 120
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062147415

感想・レビュー・書評

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  • これも刑法39条をテーマにしたもの。被害者からみれば、そして被害者の家族からみれば失われたものはかけがえがなく、刑法39条の適用によって罪に問われないことにやりきれない怒りを感じるだろう。でも逆にみれば加害者も加害者にならざるを得ない状況があったのだろうし・・・。主人公もやり場のない怒り、どこへ向けていいかわからない感情にスッカリ荒れ果てた生活をしていた。彼の元妻がやろうとしたことは社会への復讐。でもやはりそれは違うなと思う。作者自身もこの重いテーマに苦しんでいるのか、どうもすっきりとはしない結末なのだが、それでも立直りの兆しを感じさせる終わり方は好感が持てる。

  • やり場のない思いが全体を貫くけど最後にあんな展開が待ってるとは。
    面白かった!09.02読了。

  • 愛娘を奪い去った通り魔事件の犯人は「心神喪失」で罪に問われなかった。運命を大きく狂わされた夫婦はついに離婚するが、事件から4年後、元妻が街で偶然すれ違ったのは、忘れもしない「あの男」だった。
    意外な展開でストーリー自体はおもしろかったが、後半は描き方が少しご都合主義で雑かな。

  • 三上孝一・佐和子夫妻は4年前に娘留美を通り魔で失った。しかしその犯人藤崎は統合失語症と診断され、刑法39条規定(心神喪失)により罪に問われることはなかった。煮え切らない中、三上は佐和子と離婚。その佐和子から突然「藤崎を見た」という連絡が入り・・・。

    「心神喪失の者はこれを罰しない」という、誰もが一度は疑問に思う刑法39条規定と正面から向き合った作品。
    このような作品はストーリーそっちのけで深すぎる問いや主張といったほうに流れがちだが、
    本作はあくまで物語としての面白さを重視しているところが素晴らしいと思う。
    設定も無理がないし、キャバ嬢ゆき・医師松岡という脇役も無理なく効果的。
    最後にあっと驚く展開も待っていて読後感もとてもよかった。

    オススメです。

  • 重いです・・・
    でも面白かったです。

  • 常々精神鑑定というのは当てになるのだろうかと疑問に思っていた。でもこの本を読んで色々と考えさせられた。
    もう一人の主人公のゆきちゃんの事を考えると、やっぱり病気では仕方がないのかとも思える。子どもだから罪に問えないのとは違う。
    精神を病んだ犯罪者にどう対処して行くべきかの視点こそ追求されるべきだと思った。

  • OPは「おっ!」と思わせてくれた。
    希望から絶望への陥落の仕方がまるでルースターズの「CMC」。
    かなり期待してしまう。
    だが、物語が進行するにつれて停滞。
    既視感がつきまとう。
    統合失調症・風俗・レイプetc、
    どれも描かれ続けてきた世界と何ら変わりない。
    野島伸司的手法とでも言えばいいのか?
    過激だけじゃ今さら何も伝わらない。
    瞬間の輝きを持った文体なんだけどな。
    残念。

  • 『天使のナイフ』では少年犯罪、『闇の底』では幼女への性犯罪を、そして今回は心神喪失による不起訴となった犯罪。刑法39条における問題をテーマとしています。相変わらず問題点をストレートにぶつけてくる薬丸さん。「そもそも人間の心の中に在る正常と異常の境目を、他人で在る精神科医がどうやって判断出来るのだろうか。」とか、すっごいストレート!でも、無差別殺傷事件を起こした統合失調症の藤崎を一方的に悪とするわけじゃなく、娘を殺された佐和子も藤崎と同じ統合失調症の診断を受けるなどとの展開もあり、この問題の難しさが客観的に書かれています。しかもドンデン返しもちゃんと用意されている。あまり意外性はなかったけれど。

  • 初執筆作品「天使のナイフ」が2005年に江戸川乱歩賞受賞。
    この作品も新人とは思えないすばらしい作品だったが・・・
    3作目にして、もはや新人とはいえない安定感のある作家だな、という感想を持ちました。
    精神異常者の犯罪という難しい題材をテーマにしていますが、とても丁寧に書かれていて
    佐和子を通して“精神異常者の犯罪”に対するメッセージが強く伝わってきました。

  • 初めて読む作家さん。もうすごい良かった!!ほんといろいろ考えさせられます。
    読み出すとほんと止まらなくなった 。
    2008.11.7

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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