- Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062153966
感想・レビュー・書評
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再読です。
印象的だったのは江戸川乱歩作品の「運命のふたり」要素について。
明智と二十面相、単なるライバル同士というだけではなく、どこか恋愛めいた相手への信頼と期待があるとの説に納得してしまいました。
それから、「ああ、あれは、まぼろしでしょうか」などの、読者への呼びかけ。
しかし、呼びかけの形をとる一方で、実は乱歩自身が自らの仕掛けた異様な事態に夢中になっている陶酔感の表れでもあるのですね。
そんな後ろ暗い悦びがつまっているからこそ、少年探偵団モノの魅惑は色あせないのでしょう。
それから「共感と驚異」についてもふむふむと納得。
人間は年をとるにつれて「驚異(ワンダー)」よりも「共感(シンパシー)」を求めるというもの。
現代のメディアが提供するテレビ番組や音楽を見ていても、視聴者の「共感」を求める内容や煽りのものが多いです。
「驚異」を「驚異」として楽しむことができる感覚を失わずにいたいものです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私は3年ほど前に穂村の魅力に“開眼”し、当時出ていたエッセイ集をすべて読んだのだが、なんとなく飽きがきて、その後はしばらく遠ざかっていた。
久しぶりに読んでみたら、やはりバツグンに面白い。
芸風は、相変わらず。自らの「世界音痴」ぶりをネタにした、いわば“キュートな自虐”が笑いを誘うユーモア・エッセイである。
相変わらずではあるが、言語感覚の鋭敏さと意表をつく発想の面白さが抜きん出ているので、マンネリ感はない。
収録エッセイのおよそ半分は女性誌『FRaU』と『本の雑誌』に連載されたもので、残りは各紙誌に寄せた単発エッセイ。
そのうち、『FRaU』『本の雑誌』連載分は総じて出来がよい。
『FRaU』に寄せたものは、女性一般に向けた畏敬の念や違和感をユーモアでくるむ手際が鮮やか。
『本の雑誌』連載分は、本好きの読者に向けて書かれた「文章と言葉や本について書いた」エッセイが中心で、穂村の表現者としての核を垣間見せるものになっている。
とくに、それぞれ3回にわたって同じテーマが追求される「共感と驚異」と「言語感覚」は、今後誰かが「穂村弘論」を書くとしたら必ずや引用されるであろう内容だ。しかも、それがけっしてお堅い文学論にはならず、ちゃんとエッセイとして愉しめるものになっている。
単発エッセイは雑多な内容だが、少年期~青春期の思い出を振り返る文章が多いのが本書の特長。「ほむほむ青春記」ともいうべき一群のエッセイは、笑えると同時にリリカルで切ない。
ところで、本書には何度か穂村の奥さんが登場するのだが、彼女の職業は図書館司書となっている。
あれ? 『現実入門』に登場する編集者「サクマさん」と結婚したのではなかったのか? 『現実入門』の最終回はフィクションだったのだろうか? -
普段あまり活字を読まない私でもサラッと読めた。すごく読みやすい。そしてすごく面白い。『共感と驚異』の話がとても興味深くて繰り返し考えてしまう
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穂村ワールドにはまった。
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内容が濃くボリューミーな一冊。
容姿についてや文学についてや過去について。
青春時代の心理とか精神世界と現在との違和感みたいな話があった。あぁ、こういう風に感じてるのあたしだけじゃなかったんだ。こんな日常の中でふと思うけど深く考えず通り過ぎてしまうことを、もっとたくさん、この人に表に出してほしい。
情けない話が少なめで、穂村さんて立派なひとなんだなって思った。 -
特にサイン会の話が何度読んでも笑っちゃう
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私は太宰の「人間失格」がぴんと来なかった人間であったけど、
主人公が「「生き延びる」がぴんとこない人間」、
そしてこの物語は「「生き延びる」を共通目的とする世界の網の目から零れてしまう魂の叫び」
そして、零れないためには
「みんなと同じように「生き延びる」感覚を身につけるか、もしくは別の世界に行くしかない。」
との書かれ方に、わからなかったわけが腑に落ちた。
大人になってからこの物語に触れた私はもう「生き延びる」方に必死で、「不要」「役に立たない」「なくても困らない」ものには目もくれないようになっていた。
役に立たないものに価値があるような、「別の世界」に、私はまた戻れるだろうか?
もう無理かもしれないけれど、詩歌や短歌に触れるとき、別世界を覗くように遊びに行くことはできるかもしれない。
あと、推理小説の美しい文やタイトルをよく挙げられてるのが嬉しくなった。
乱歩がお好きなの、わかるなあ。
「子供で詩人で大人で探偵小説家で醜くて美しい乱歩最高と、思わずにはいられないのだ。」
「うつし世はゆめ 夜の夢こそまこと」の乱歩だものね。
短歌って、意外性と飛躍、でもどこか連想が働くところが夜の夢に近いのかもしれない。
「もうひとつの時間」もとても良く、
バレエ少女がまとう別世界の気配にときめく感じがすごく共感できた。憧れる。
今不意に踊りたいのはわたしだけ展覧会の光る床板 / 大田美和 -
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エッセイ集のタイトルって難しいよね。
ほむほむのことを知らなければ初見で絶対手に取らないタイトル。
もしタイトルだけでぱぱっと取ったら違うコレジャナイ感満載だと思う。
あいかわらずとぼけた日常(女性誌FRAu掲載)と、歌人としての言葉に関する真面目な考察(本の雑誌掲載)の二本立て。
このエッセイ『FRAu』に載ってたらクレームでたんじゃない?てドキドキしたけど巻末の初出みたらそれは『小説現代』だった。
ほっとした。
あとこれ何故か目次が横書き。
なんとなく、横書きの方が目次のページ数少なくできるのかな?て気がするけど普通の横書きとは順序が逆だからちょっと違和感。
通読するわけじゃないからいいんだけど。
デザイン / 服部 一成
初出 / 『FRAu』2005年5月5日号~2006年12月5日号、『本の雑誌』2006年1月号~2009年4月号、毎日新聞2006年7月22日付け~2006年9月19日付け、『PHPスペシャル』2008年7月号・11月号、他。