- Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062157735
作品紹介・あらすじ
戦争を通じて描かれる歪んだ家族の忌まわしき絆。鬼才・田中慎弥が到達した現代文学の真髄(『犬と鴉』)。家業を継がず一冊の本に拘泥するのはなぜか、父と息子が抱く譲れない思い(『血脈』)。定職を持たず母と二人で暮らす三十男、古びた聖書が無為な日々を狂わせる(『聖書の煙草』)。
感想・レビュー・書評
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「共喰い」の人、という印象しかなかったのだけれども。
戦争と戦争と平和、そしてまた戦争。
なんという残虐、なんという狂気。 -
著者・田中慎弥さんの名前は芥川賞をとり話題になったので知っていたが、それでかえって天邪鬼的に読んでいなかった。文章が、表現が、うまい。うますぎる。手の中でくるくると言葉を回転させるような言い回しを得意としているようで、共感するような暗いような面白いような、さまざまな言葉の組み合わせに右往左往しているうち、作者の目指すテーマへと流されていく。表題作の雰囲気は、なんだか平山瑞穂さんを思い出した。こういう作風をなんというのか分からないけれど、僕が好きな作風だ。ほかの作品も読んでみよう。
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戦争、生と死、家族。「悲しみでお腹を満たす」しかない環境も、悲しみを糧に生きようとする方法も、辛すぎる。溢れるような表現で、心に突き刺さる表題作。
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表題作はまあ、一時期の芥川賞っぽい感じ。
だいぶこの方の受賞した作品とは毛色が違って面白い。
でも「聖書の煙草」の母ちゃんのたまんない感じが一番来る。 -
「図書準備室」に続き本作を読みましたが、読んでいて作中の人物の顔が、著者本人の顔と重なってしまった… とにかく疲れたという感想しか持てませんでした。
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芥川賞を取ったのはもう1年も前だけど、とりあえず短編が面白かったから読む。
今回も不思議な話が多かった。でも、掌編じゃなくて短編だから話もそこまですんごい飛び方とかしてない。むしろ整然とまとまっているというか。不思議感を残して終わっていく刹那の後味の悪さは健在。お薦めは「聖書の煙草」 -
短編三つが収められています。
田中氏は,高校卒業後,一度も定職に就いたことはなく,小説は二十歳ぐらいから少しずつ書いていたとのことですが,芥川賞を受賞するまで,母親がずっと生活を支えたという話を聞いたことがあります。その情景が「聖書の煙草」から少し読み取れます。
田中氏は,自分をさらけ出すことができないから自分の作品はあくまで小説といいますが,詳しい本人の生い立ちはわからなくても,父親,祖父,戦争,母親というキーワードからにじみ出て来るものは既に私小説と感じます。また,彼は戦争について特に絡めています。祖父から聞いた戦争の話が彼の血や肉となって小説として出て来ているのでしょうか。 -
人は悲しみで腹を満たす。
自分の不幸ネタで、よく、自分の虚栄心?エゴ?を満たしている人を見るなぁと思う。
表題作以外の2作が、あまり好きではなかったので★3つで。