悪武蔵

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (554ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062158725

作品紹介・あらすじ

吉川英治が描かなかった、身悶え吐血し七転八倒する剣聖の姿。巌流島の決闘後の新たな武蔵像をも描ききった、著者渾身の長編時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 面白いし文章も良いのだけど、なんとも読むの時間がかかった。しんどかった。思いとか考えさせられるではなくて、しんどかった。

    ひと月前ラオスのルアンパバーンからビエンチャンまでバスに乗っていて、同行の友人と、家の前に上半身裸でぼけっと座っているおっさんを見ながら、こんな話をした。
    「あのおっさん、なに考えているんやろな。こんな道路とか車とか毎日見てても面白くないやろ。」
    「今日は天気ええなとか、今日の晩飯はうまかったとか、そんなことやろ。」
    「あれでもし、宇宙とか悟りとか超越とか考えてたら、すごいな。」
    「そら、その可能性はあるわな。限りなくゼロに近いけど、ゼロとはいえんな。」
    「でも俺ら、悟りとか超越とかいう概念を知ってるから、今こんなふうにして言葉にもできるし、頭で考えることもできるけど、あのおっさん、たぶんそういう言葉知らんやろ。もしそういう言葉とか、概念とか、そういうものの存在すら知らんと、なんの手がかりもなしにいきなりそういう事考えてたらすごいな。それってどんなんなんやろ。」
    「そら、もう、ひとつの時代にひとり存在するかどうかっていう大天才やろう。なんにもないところにいきなり体系を作るんやから。ブッダとかってそういうことやろ。」
    「あのおっさんが、実はそうやったらおもろいな。」
    「おもろいけど、やっぱり今日の晩飯のこととか考えてたんやと思うで。」

    我々は自我意識というものを、言葉としても概念としても知っている。実体のあるものとすら思っている。「近代的」という枕詞をつけて客観視する術すら持つ。
    もしそういったものなしに、概念も言葉も先行研究もなく近代的自我というものをもってしまったら、いったいそれはどういうものであるのか?
    この本は、そういう謎解きであるように思う。そこから逆算して書いたもののように思う。文体もそのためにそうしているように思う。
    だから、読んでいて、油をかき分けて泳ぐような、体力を吸い取られるような気分がした。

  • 厚みもあり、二段書きで読みにくかったが、内容はなかなか面白かった。
    吉川英治の話は頭から消しておいた方が楽しめるかもしれない。

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著者プロフィール

1944年、秋田県生まれ。早稲田大学卒。『鉄塔の泣く街』『清十郎』『おらホの選挙』「風が呼んでる」がそれぞれ直木賞候補となる。1995年、『刑務所ものがたり』で吉川英治文学新人賞受賞。2010年、『真幸くあらば』が映画化。『蜂起には至らず 新左翼死人列伝』(講談社文庫)、『ふぶけども』(小学館)、『水漬く魂』全5巻(河出書房新社)、歌集『明日も迷鳥』(短歌研究社)など著者多数。近年は、『悪武蔵』『我れ、美に殉ず』『蕪村―己が身の闇より吼て』(ともに講談社)、『天のお父っとなぜに見捨てる』(河出書房新社)、『走れ、若き五右衛門』(講談社)などの歴史小説、また体験的新左翼小説『彼方への忘れもの』『あれは誰を呼ぶ声』(アーツアンドクラフツ)を刊行。

「2021年 『ここは何処、明日への旅路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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