- Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062164542
感想・レビュー・書評
-
「人」の事かと思った。
最初そのタイトルを目にした時は。
今の所、「人」以上に「悪魔」の名に相応しい者になど、お目にかかった事もないし。
序盤は(やはり、そうか。)と、思わざるを得ない展開。
たいした理由もないのに、友人を卑劣な行為で傷つけてしまう主人公。
殺意こそ無かったが、その暗い感情が、結局実体無き刃となり、
友人を死に追いやってしまう事となる。
そして、追い込んだ本人は、『罪悪感』と言う、決して拭い去れない返り血に塗れてしまった…。
ぬるぬると浴びた返り血の中で、もがき苦しむ主人公の無様を笑う者、
彼が犯した行為の非道さに怒り苦しむ者、
そこかしこに、悪魔の気配はする。
…が、
自分の愚かさに気付き、嘆いたりする悪魔なんているのだろうか?
結局、混沌とした黒いインク壷のなかで、どろどろに溶けかかっていた彼の魂は、ある出会いにより救い上げられ、
ぽとん、と広大な中国大陸に落とされる事となる。
この広大な大地に落とされた一滴は、
このまま浄化出来るのだろうか?
罪の意識に逃げ場など、あるのだろうか?
まさかのラストに驚愕の思いではあったが、
死神の大鎌を、人がイタズラに弄んではいけない。
それは生者には、決して扱えないシロモノなのだ、,と思い知らされた。
生きるものの使命は必死で生き延びること、これ以外には何もない。
死神の大鎌を振り下ろすのは、
やはり『悪魔』の役目。
その終わりを告げるのは、人では無い。
あくまで『悪魔』なのであった。(^^;詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ずいぶん昔の近藤さんの作品。
冒頭でいきなり主人公の親友が自殺するところからスタート。
あいかわらず、簡単な理由で人が死ぬなあ・・と思いながら読み進めていきましたが、途中からすっごい面白くなった。
舞台はなんと中国へ。北京からどんどん奥地へ。ついにカシュガルまで。
登場人物全員後ろ暗くて、ダークな空気感だけど、でも一方で沢木さんの「深夜特急」と矢作さんの「ららら科学の子」を足して2で割ったような展開にワクワク。
中国奥地の列車旅、現実には自分は絶対耐えられないと思うけど、想像するのは楽しいし、砂漠をジープで走るなんて超クール!と思ったら突然「悪魔」のラストが・・。
悪魔ってそういうことでしたか・・。
近藤さんって、人のダークな一面を描く作家さんだと思っていたので、ちょっと意外。
チベットのダライ・ラマも結局亡命したままだし、いろいろある国だなあ、中国。
ウイグル族の話は、自分が勉強不足でこれまであまり知らなかったので、もっと知りたいと思った。 -
親友を自殺に追い込み、それをヤクザに付け込まれ、中国との運び屋をやらされてしまう話。結末は、なんだかなーって感じ。
-
最初はミステリー的な話かとも思えきや、壮大なる展開へと。ハードボイルドだなぁ。とてもありえないけど。
-
なんてひどい主人公なんだ!と最初から嫌悪感たっぷりだったが、その報いにしてはおつりがくるくらいの転落人生。
人生を転落する人としない人ってもしかしたら紙一重なのかも知れない、そう思わされた。
物語の展開が凄まじすぎて、若干無理があるなと感じずにはいられなかった。
驚きのラスト。
砂漠の悪魔というタイトルはそういう意味だったのね、としばし呆然としてしまった。
こんなにめまぐるしく展開する小説は本当に久しぶりに読んだ。 -
読者が置いてきぼりにされた感がある。
夏樹の死からいきなりヤクザが出たり、中国に行ったりしない。 -
何か事件が起きて謎解きをするタイプの話ではなかった。東京から北京へ、北京からカシュガルまで、ロードムービー的な話の進行で一気に読んでしまった。
タイトルの意味は途中で分かる人には分かるのかも。私は全然気づかなかった。 -
小さな悪意から友人を自殺させてしまった主人公。
贖罪というよりも、現状から逃げ回っている主人公。
どのような形で自らと向き合い、心の平安を取り戻すのか?と、期待してどんどん読み進めたけれど…。
あまりに突拍子もない結末で、肩透かしをされたよう。
これが小説なのかもね。