末裔

著者 :
  • 講談社
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感想 : 84
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062167376

感想・レビュー・書評

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  • 2011.10.2読了。

    世のオヤジが好きだ。昔の話をしてくれるところ、精密機械に疎いところ、身体の匂いを気にするところ。照れたり開き直ったり落ち着かなかったり、その辺の若者よりよっぽど可愛くて素敵で。

  • 最初読み出したときはそうでもなかったのだが、途中から飽きてくる。
    誰かの見た長い夢の話を聞いているようで、鍵穴が消えた秘密がいつわかるかと読み続けたのだが、さして解明されなかった。

  • 最近読んだ高橋秀実さんの『ご先祖様はどちら様』とラフカディオ・ハーンの『怪談』をシャッフルした感じでした。怪談は怖くもあるのですが、因果関係が明らかになると怖さが半減し、化け物に対し、いとおいしい、いたわしい気持ちを持ちます。ご先祖様と自分の間に連綿と続く何かに気付いたとき、同じ気持ちになるのではないかと思いました。

  • 著者初の長編。
    鍵穴がなくなって家に入れなくなる、という非日常な始まりだけど、それが当たり前に感じてしまう不思議。
    面白かった。

  • 富井省三。二年前に妻靖子に先立たれ現在ひとりぐらし。息子朔矢は結婚して家を出て行き、娘は行方知らず状態。ある日、一人住まいの家の鍵穴が憤然と消失してしまった。物語はここから始まる。かつて妻から多大なる恩義を受けたという見知らぬ男から紹介されたホテルでしばし過ごした後、鎌倉の伯父伯母の家を尋ねることにした省三。そこで久しぶりにであったインコや、思い出した数々のできごとをきかっけに「富井家」の人々に思いをめぐらせ故郷の佐久へ行こうと考える。富井家の末裔である省三が家へあがることを拒絶されてから両親祖父祖母兄弟子供たちに思いをめぐらす日々が描かれる。作者の気分がもうひとつつかめなかったよ。

  • 読みやすくはあるけれど、物語自体はうまく呑み込めなかった。

  • 久し振りの小説で,どうやって辻褄を合わせるのだろうとわくわくして読み始めた~省三は出世の見込みのない区役所職員だ。国語辞書の編纂者であった父が釣りの事故で死に,妻子と共に母と同居し始めたが,母は認知症が進んで施設に入り,妻は急な病でなくなって,息子は結婚と同時に家を出て,父親との息が詰まる生活に娘が別居し,一人だけの暮らしだ。ある日仕事を終えて家に帰ると鍵穴がなくなっていて家には入れず,息子は相談相手にならなかったので,新宿で呑み,終電を逃すと,声を掛けてくる男がいる。デリバリー専門の占い師だという乙は,ホテルを紹介し,未来も過去も見えると云う。かつて小学校の時に名古屋に一人で出掛けようとして,財布をなくした時に妻に助けて貰ったという。ホテルにいても危ないというので,鎌倉の伯父の家に来るとインコがまだ生きていた。しかも犬らしき姿を持つものが水をくれて喋り出す。家に入ることができずホテルも消えてしまい,鎌倉から世田谷に通い続ける内に父の東大時代を知る人とも知り合い,父と伯父のインテリ風の会話を思い出す。ある夜帰宅すると家に灯りが点いていて娘を発見し久し振りに話をすると,母が好きではなかったのだと意外なことが語られ,伯父の妻はあの花をどうにかしないといけないと忠告を受ける。30代後半の女性同僚からはアメリカに行ったきりで音信不通の8歳年下の弟と結婚することになったと告げられる。富井のルーツを探るために息子から車を借りて出掛けた佐久の社で乙の文字を見つけ出し何となく納得する。弟と電話で話をするとアメリカで日本文化を研究しているようで,近々帰国するから家で姉を加えて三人で会う約束が成り立つ。いよいよ家を片づけなければならない。隣家の庭でうるさい犬を蹴りつけて自宅の庭に入り,パンツの花をむしり取り,掃き出し窓を割ってゴミ屋敷化した家に入るのだ~58歳の冴えない男を主人公にして身の回りに起きる不思議な出来事を綴っていく手法だが,祖父や伯父・父のようなインテリではなさそうなのに,ちょっとインテリの片鱗も見える。乙という人物の素性は富井家に時々関係してくる人なのか。犬が喋り出すのは自分が犬にとっての七福神の一人だから。鍵穴が消えた謎は明かされず,力業で空ける必要が生じた。不思議は不思議で良いじゃない・という開き直りが嫌だ。作者の私生活が透けて見えないのが良いなあ,小説を書いた方が良いよと感じていたが,信州へのドライブで彼女の車の趣味が見えちゃったので残念。一年掛けて雑誌に連載したが,開始早々に広げてしまった大風呂敷の隅を数カ所畳んだけど,きちんと片づけることは出来なかった。パンツのような花の咲く木は,花を毟る必要はない

  • ふと思い直して、自分はこれから心機一転のびのびやれる!という全能感にも似た爽快な気分になる時がある。この小説は、丁寧にその過程を描きながら見事に小説として表現してくれているように感じる。

    最後のページの文書が素晴らしい。
    “俺はみっともないが、気分がいいんだ。めちゃくちゃなんだ俺は。”

    という風に、非常に好ましく感じた作品ではあったのに、読み進めるのはいまいち苦労した。吸引力がないというか、漠然とした退屈感のようなものを感じてページを捲る手が進まないのだ。これはなぜなんだろう。
    でも、良い作品でした。

  • 絲山秋子さんのファンタジー風な作風にびっくり。前半は「1Q84」を彷彿とさせる設定が続き、後半昭和の良きインテリ家族の挿話と家族小説としてのハッピーエンドと続く。

  • 思いムードのお話でしたが、おもしろかったな。

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著者プロフィール

1966年東京都生まれ。「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。「袋小路の男」で川端賞、『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、「沖で待つ」で芥川賞、『薄情』で谷崎賞を受賞。

「2023年 『ばかもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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