- Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062169370
作品紹介・あらすじ
満員電車でふと自分の手に触れた冷たい手。間違いなく、それは、38歳で死んだ嫁の手だった。生前からちょっと変わったところのある女だった嫁が、どうしても伝えたかったこととは-。不器用だけれどあたたかい人情に溢れ、人間がいっそう愛おしく思えてくる全7篇を収録。
感想・レビュー・書評
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加藤元さんの作品を立て続けに三作読んだ。
『本日はどうされました』(2020年)、『四百三十円の神様』(2016年)、本作(2011年)と遡る形で読んだけど、一貫して読みやすく、読ませる作品。
表題作の評価が高いようだけど(なので表題に選ばれる訳でしょうが)、不器用な不良の良くんと彼の出所を待つラーメン屋の娘有子のお話『さよなら、ボギー』がいちばん良かった。(作中に登場する、沢田研二の『カサブランカ•ダンディ』はすぐにYouTubeでチェックした。世代的にはギリギリ聞いたことがあった。)
出てくるひとたちはみんな、いわゆる『勝ち組』に属するわけではないけど、そんなことに大した意味はないのだろう、と思わせるくらい、いろんな形の深い親子の愛情があるんだなあ、としみじみした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いくつか面白い短編が散りばめられている。チョット上手く書け過ぎな感もあるが楽しめた。
「いちばんめ」は、初恋を幼いプライドやら恥ずかしさ、臆病さでボタンをかけ違ってしまったことが友人の結婚式でわかり、胸キュンの秀作。
「あの人への年賀状」は、二世帯住宅の建設を巡って、自分の両親の結婚の形を知り、母に女の部分があって、幸せの形も色々あることに思い出したように気付く息子の話。
「嫁の遺言」は、妻を亡くした夫ってわびしいんだなと思う。きっと死を受け入れるためには、形があるかないかではなく、自分の心の問題なんだと思う。 -
加藤元さんの本始めて読みました。
短編集で読みやすくて、方言語りだったり、1人語りだったりと楽しめました。
「いちばんめ」はキュンと来たけど、えっ?今なん?なんやそれ?とも思いました。 -
文学
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縁故、情愛を感じる短編7作
・嫁の遺言
・いちばんめ
・あの人への年賀状
・不覚悟な父より
・あんた
・窓の中の日曜日
・おかえり、ボギー
どれも不器用に人生を生きている主人公で、だけど人間の情愛は簡単には割りきれない切なさを上手く表現していると思う。
最後の2作品が特に好き。 -
切ない短編集なんですが、どれもすごくいい!泣けます!
タイトル小説でもある『嫁の遺言』は、関西弁の独り語り形式、というのかな。すごく耳に心地いい語り口で、まさに声に出して読みたい日本語、です。落語の大家の方に読んでもらえたら、私ずっと聞いてしまいそう~
素敵な作品でした♪ -
どれも面白かった
ちょっと困った人たちが
なんだか愛おしい -
ちょっとクサイような、そんな語り口。
不幸で悲しいのに、なんか綺麗な話がたくさん詰まってる。
表題の作品は最初に収録されているが、すごく素敵で、さみしくなる話。
みんな不幸になりたかったわけじゃないのに、みんな悪い人じゃないのに、なんか悲しい人生になっちゃってる人がいっぱい出てくる。
でも悲壮感より、温かい気持ちになる読後感は素晴らしい。
とても良いお話たちでした。 -
読みやすい短編集。
みんな不器用なひとばかり。ハッピーエンドじゃない、ハッピーさは気持ち小さじ1程度にあってもそれも可愛げなくやや一癖ある終わり方をするお話が7つ。
母親がほそぼそと理容店営んでる自分には「あの人への年賀状」がしんみり切なく感じました。