- Amazon.co.jp ・本 (658ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062192583
作品紹介・あらすじ
ムーミンの作者、トーベ・ヤンソンの決定版評伝。ムーミン作品の背景と、「仕事と愛」をモットーに生き抜いた生涯を徹底紹介!
感想・レビュー・書評
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ムーミンの原作者 トーベ・ヤンソンの伝記
人生、仕事、フィンランド、そして、ムーミン。
今年行われた、大規模なムーミン展で見てきた展示物などの意味を、改めて伝記で確認。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この題名が全てを語っている。ムーミンの作家・トーベヤンソンは、芸術家一家に生まれ、極めて恵まれた少女時代を送り、天賦の才に恵まれていた。ただ、彼女が凄いのは、与えられた天分に奢ることなく、天分を発揮することを己の義務・使命とし、誠実に忠実に愚鈍に仕事として亡くなるまで邁進し続けたことである。そして、男性、最終的には女性を愛した。その過程でムーミンは生まれ、ムーミンに振り回されつつ、画家、作家として活躍し天分を発揮した。あっぱれな人生に乾杯!といった感である。しかし、辞書のように分厚い本で、読み通した自分も偉い。
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トーベが実際に書いた日記や手紙を軸とした伝記。
弱音や愚痴、文句など、人間味溢れるトーベ自身の言葉に親近感が湧きました。喜びや怒りや絶望が素直に表現されている文章から彼女の人となりが浮かび上がってきて、面白かった。
ムーミン物語の草稿や完成版には載らなかったエピソードなども書いてあり、戦争や劇、当時の恋愛など、いかに時代背景やトーベ自身の状況が物語に影響を与えたのか、どのように物語が生まれていったのかがよく分かりました。
トーベが書いた物語ひとつひとつの書評、分析にもなっていて、読み応えがあります。
ただ、ムーミン物語に心酔していた子供の頃に読んでたら、トーベがムーミンで疲弊していく様子にショックを受けてたかも。ある程度客観的に物事を捉えられるようになってから読めてよかったと思います。
時系列がわりと細かく行ったり来たりするので、今語られているのがどの時期の話なのか掴みづらいところもありました。年代は書かれてはいますが、注意深く読まないと頭に入ってきません。
70年代以降は駆け足になってる印象。個人的に好きな「誠実な詐欺師」の裏話はもうちょっと知りたかったです。スウェーデン系フィンランド人というアイデンティティに関しての言及など、掘り下げてもっと知りたい部分はありました。
また、序盤は若干「芸術至上主義」的な描写が目立ち、ちょっと鼻につきました。トーベを美化しすぎてるようにも感じました。「トーベヤンソンは画家として、作家として、そして人間として、人生のすべてを芸術に注いだ」みたいに、文章が大げさだからかも。 -
大阪樟蔭尾j氏大学図書館OPACへのリンク
https://library.osaka-shoin.ac.jp/opac/volume/629520 -
2014年はムーミンの作者トーベ・ヤンソンの生誕100周年であったため、ヨーロッパだけでなく日本でも各地でイベントが催され、新装版の本が出たりしている。その盛況ぶりは「100年に一度」と謳われているだけあり、たとえば原画展では、これまでフィンランドでしか見られなかった作品が相当数、日本に来ている。
本著は研究者ボエル・ウェスティンによるヤンソンの評伝である。日記やメモ、手紙などから読み解かれるヤンソンの人生がここで初めて語られている。トーベは本を執筆しないときも日記、構想ノート、手紙と常に何かを書いていた。活字を書かないときは絵を描いていた。ヤンソンにとって人生の二大テーマは「仕事」と「愛」であり、そのことを念頭にムーミンを読み直すといかにそれらが愛に溢れ、筋の通った働き方をしているかがわかる。
アニメでしか知らないという方は是非、本当は大人向けのヤンソン作品に触れてみていただきたい。
2014年から今年にかけて引き続き全国巡回中のトーベ・ヤンソン展と併せてどうぞ。