辺境図書館

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 484
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062205351

感想・レビュー・書評

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  • こういうのを読むと、本を探しに図書館書店に飛んで行きたい、ネットなんかやってられないという居ても立っても居られない焦燥感に駆られてしまう。
    ストーリーや基本設定やキャラ設定に凝るラノベ系が全盛の昨今、小説における文体の重要性を説く皆川さんに共鳴します。
    皆川さんの好みは文学好きとしては王道だと思う。
    本作で初めて知った郡虎彦、作品にも人生にも興味をそそられた。探してみよう。
    私も皆川さんのご令孫と同じく、作家と作品名は知っていても、読んでいないクチです。お恥ずかしい。
    時たま挟まれる皆川さんの人生も興味深かった。自伝を書いてくださらないかなと思っちゃいました。

  • 皆川博子による書評集。著者が自身の偏愛する古書・稀覯本を紹介していくというスタイル。図書館と称して貸出は不可、それと著者の紹介に「辺境図書館館長」とあるところにクスリとした。お茶目だ。
    偏愛の書を紹介するというだけあって、装丁はさすがの美しさ。本自体もしっかりした作りで、小振りながら少々重みがある。愛する本を語るこの内容でそっけない本だったら嘘だよね。

    本を読むとはこんなに楽しい、とあらためて思える一冊。各章が直接取り上げる作品はほとんど知らないものばかりなのに、館長の紹介を通して、その魅力の一端に手を触れさせてもらえるのが意外なほどに楽しかった。おかたい書評でなく、他の色んな作品やその著者に言及したり、著者自身の創作への影響を想像したりと、ほどよく緩い雰囲気なのがよかったかも。
    ブクログのようなとっつきやすさと、緩やかにくるまれた中の館長の読書体験と人生経験、そして何より愛と憧憬が美味しかった。アンナ・カヴァンとマルセル・シュオッブ、野溝七生子はぜひ読んでみたい。
    書下ろし短編「水族図書館」には溺れた。きっと本望。

  • 読書欲に火がつく本。未だに手に取ることができないでいる本が多いが、美しい装幀と文体に導かれ、開いた本は著者の言うとおり、どれも印象的で本当に面白い。長らく遠ざかっていた読書習慣が蘇り、自分では決して選ぶことはなかったであろう本との出会いを作ってくれた一冊。時折読み返したくなる。

  • 鍵のかかるひきだしに、そっとしまっておきたいような。

    中には手に入りにくい本もあるが、探し出す楽しみもある。
    どこかで出会えたら、それもまた僥倖と思えるだろう。

    後続の作家たちの作品もあれこれ読まれているようで、恐れ入る。しかも決して高いところからではなく、丁寧に敬意を持って語られるので、更に恐れ入る。

    どの章も宝石のようで、ため息と共に読んだ。
    極めつけはカースン・マッカラーズ。それからアンナ・カヴァンも再読しなくっちゃ。

    最後の一篇がまた素晴らしい。

  • 購入当初、こだわり抜かれた装丁の美しさに、直接触れることを躊躇しました。
    本文もそれを裏切りません。
    皆川博子さんは他の追随をゆるさない、精緻な骨と爛熟した肉のような文章をお書きになると、ご著作を拝読して私は勝手に思っております。けれど本著からは皆川さんの、アンナ・カヴァンや野溝七生子、マッカラーズ(寡聞にして初めて知りました)に通ずる「少女性」が窺える気が致しました。
    それは世間には容易く傷つかされるけれども、文学にーー否、物語に真っ直ぐ相対し、おことばを借りるならそれをブイにして生き抜こうとする透明なたましいの響きにも感じられます。

  • これから読みたい本がたくさん出来た本です。
    皆川さんの個人的意見と感想ですが、だからこそとても興味を唆られるモノばかりでした。
    幻想小説は最近ハマりだしたジャンルなので、イロイロ勉強にもなった一冊です。

  • 集英社版「世界の文学」…図書館にある!1巻抜けてるけど!読む!

  • 皆川博子さんの偏愛する物語たちをご本人の思い出と共に語る便覧?
    最初が夜のみだらな鳥だったので思わず手に取ったが、途中まで読んで放置してしまった本。
    改めて読むと、ちまちま読むよりも一気に読んだ方が返って想像がしやすい。
    読みたい本が一気に増えたけれど、手に取ったのは銀河と地獄。幻想小説と現実世界との重なりへの指摘に、無粋だなと感じる意味がわかった気がした。
    最後の月と海の物語も好き。色々な言い回しが海という想像をより掻き立てた。一つではないものね。

著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

皆川博子の作品

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