銀河鉄道の父

著者 :
  • 講談社
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  • / ISBN・EAN: 9784062207508

作品紹介・あらすじ

明治29年(1896年)、岩手県花巻に生まれた宮沢賢治は、昭和8年(1933年)に亡くなるまで、主に東京と花巻を行き来しながら多数の詩や童話を創作した。
賢治の生家は祖父の代から富裕な質屋であり、長男である彼は本来なら家を継ぐ立場だが、賢治は学問の道を進み、後には教師や技師として地元に貢献しながら、創作に情熱を注ぎ続けた。
地元の名士であり、熱心な浄土真宗信者でもあった賢治の父・政次郎は、このユニークな息子をいかに育て上げたのか。
父の信念とは異なる信仰への目覚めや最愛の妹トシとの死別など、決して長くはないが紆余曲折に満ちた宮沢賢治の生涯を、父・政次郎の視点から描く、気鋭作家の意欲作。

感想・レビュー・書評

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  • かなさん、チーニャさんのレビューを拝見し、天空図書室で手にした「銀河鉄道の夜」、時を同じく本書はなおなおさんに教えて頂いた地区センターでお借りしました。

    天空図書室で「銀河鉄道の夜」を手にしたのは10/28、同じに日にお借りしたんです...

    でも2週間で読み終えることが出来ず、再度2週間の延長を...
    結果、お借りしてから24日目での読了です^^;

    明るい時間に「銀河鉄道の夜」を読み終え、夜に本書をお借りして24日...
    その間に写真集や絵本、電子書籍(図書館)に積読本、おまけに自己啓発本も読んだなぁ...それらを引っ括めて69冊も間に挟んだらそりゃ時間かかりますよね:(´◦ω◦`):


    そんな思い出深い一冊となった本書ですが、私には忘れられない一冊になりそうです。

    「宮沢賢治」もちろん名前は知っていますし、幼少期に「銀河鉄道の夜」も一度手にしたことがありますが、私の知識はその程度。

    さすが直木賞受賞作!!
    最後は取り憑かれるように読了となりました。

    本書は宮沢賢治の父である政次郎の愛の物語。
    家を継ぐべき長男の賢治は家業を継がず己の理想を求め、37年の短い人生を駆け抜けていきました。

    私自身も長男ですが、忘れもしない高校受験を控えた中学3年生のある夜、仕事から帰宅した父は母と子供(私と妹の2人兄妹)の前で突如「今日で会社を辞めてきた」と言い放ちました。

    すったもんだの後、結果的に独立という形で父は母と共に小さいながら商売を始めましたが、先週、そんな店も歴史に幕を閉じることに...

    本当であれば長男である私が後を継ぐべき店。
    私と妹を大学まで出させてもらい、それぞれが家庭を持てたのも店での父母の頑張りがあったからです。

    面と向かって伝えられていませんが、本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。

    普通にサラリーマンをしていれば、とっくに定年をむかえ、ゆっくりと過ごせたはずの年月。

    せめてこれからはゆっくりと、そして楽しい時間を過ごして下さい。

    本書の感想とは関係ありませんが、父母が店を閉じるタイミングで手にした本書。

    普段はお互い会話もなく、家に2人きりになるとどちらかが逃げるように家を出る、そんな父と私との関係でしたが、これからは少し私が変われそうな気がします。

    政次郎の愛を知り、父の愛を知ることが出来ました。

    オヤジ、少し落ち着いたら家族4人で温泉でも行こうな!

    <あらすじ>
    宮沢賢治の父・宮沢政次郎の人生を描いた小説です。直木賞を受賞した門井慶喜の作品で、2023年に映画化されました。

    明治から昭和初期にかけて、質屋を営む政次郎が、家業を継ぐはずの長男・賢治との葛藤や絆を通して、家族の成長や試練を綴っていきます。賢治は、農業や人造宝石、宗教などに興味を持ち、自由奔放に自分のやりたいことを追い求めます。政次郎は、厳格な父親でありたいと思いながらも、賢治の才能や夢を尊重し、陰ながら応援します。賢治の妹・トシは、文才に恵まれた優しい女性で、賢治の創作に大きな影響を与えます。しかし、トシは若くして病死し、賢治は深い悲しみに暮れます。その後、賢治は結核と闘いながら、『銀河鉄道の夜』や『雨ニモマケズ』などの名作を残しますが、生前はほとんど認められませんでした。政次郎は、賢治の死後も、彼の作品を世に広めるために尽力します。

    この小説は、賢治の作品の裏側や、宮沢家の人間関係を描いています。政次郎と賢治の不器用な親子愛や、トシと賢治の兄妹愛が感動的です。賢治の作品を読んだことがある人にも、ない人にも、おすすめの作品です。


    明治29年(1896年)、岩手県花巻に生まれた宮沢賢治は、昭和8年(1933年)に亡くなるまで、主に東京と花巻を行き来しながら多数の詩や童話を創作した。
    賢治の生家は祖父の代から富裕な質屋であり、長男である彼は本来なら家を継ぐ立場だが、賢治は学問の道を進み、後には教師や技師として地元に貢献しながら、創作に情熱を注ぎ続けた。
    地元の名士であり、熱心な浄土真宗信者でもあった賢治の父・政次郎は、このユニークな息子をいかに育て上げたのか。
    父の信念とは異なる信仰への目覚めや最愛の妹トシとの死別など、決して長くはないが紆余曲折に満ちた宮沢賢治の生涯を、父・政次郎の視点から描く、気鋭作家の意欲作。

    メディア掲載レビューほか

    銀河鉄道の父

    この小説に描かれた宮沢賢治はごく普通の青年で、そこがとても新鮮である。

    生き生きとした等身大の賢治像が立ち現れたのは、父である政次郎の視点から描くという構造によるところも大きい。この父がじつに偉大だ。賢治は家業の質屋が肌に合わず自分で事業を起こそうとしたり、国柱会の布教活動に熱中したりする。若さゆえの前のめりだ。父はそんな賢治を厳しくたしなめつつも援助を惜しまない。子が病気になれば病院に泊まり込んで看病までする。成功した実業家であり家族思いの父。偉大過ぎる親を持つ息子が、もがき苦しんだ末に儚く美しい詩と童話を紡ぎ出したことは、切なくも運命的だ。

    父を超えたい、という不変の命題に賢治も向き合っていたかと思うと、彼の作品にもいちだんと親しみが湧いてくる。

    評者:石原さくら

    (週刊朝日 掲載)

    内容(「BOOK」データベースより)

    宮沢賢治は祖父の代から続く富裕な質屋に生まれた。家を継ぐべき長男だったが、賢治は学問の道を進み、理想を求め、創作に情熱を注いだ。勤勉、優秀な商人であり、地元の熱心な篤志家でもあった父・政次郎は、この息子にどう接するべきか、苦悩した―。生涯夢を追い続けた賢治と、父でありすぎた父政次郎との対立と慈愛の月日。

    著者について

    門井 慶喜
    1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。他の著書に『パラドックス実践 雄弁学園の教師たち』『屋根をかける人』『ゆけ、おりょう』、共著『決戦! 新選組』などがある。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    門井/慶喜
    1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。’15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、’16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。’16年に『マジカル・ヒストリー・ツアーミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に第34回咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      ヒボさん、こちらでもこんばんは(*^^*)♪
      ヒボさんの素敵なレビューに胸がジーンとなってます。温泉旅行などいいですね〜(ღˇᴗˇ)。o♡
      ...
      ヒボさん、こちらでもこんばんは(*^^*)♪
      ヒボさんの素敵なレビューに胸がジーンとなってます。温泉旅行などいいですね〜(ღˇᴗˇ)。o♡

      私もこの作品、もう少ししたら読もうと決めているのですよね♡
      楽しみです〜(*^^*)♪☆
      2023/11/22
    • ヒボさん
      チーニャさん、こんばんは♪
      めちゃくちゃ良かったですよ(*^^*)
      父親の愛、やっぱり母親のそれと比較すると何処と無く不器用で...
      でもし...
      チーニャさん、こんばんは♪
      めちゃくちゃ良かったですよ(*^^*)
      父親の愛、やっぱり母親のそれと比較すると何処と無く不器用で...
      でもしっかりと感じられると思います♪
      レビュー楽しみに待ってますね☆
      2023/11/23
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      はい、ありがとうございます(*^^*)
      はい、ありがとうございます(*^^*)
      2023/11/23
  •  「銀河鉄道の夜」は宮沢賢治の作品だということは私でも知ってるけれど、この作品は「銀河鉄道の父」なんです!そうです、宮沢賢治の父、政次郎の視点から物語は展開します。

     宮沢賢治は、岩手県で裕福な質屋を営む政次郎の長男として生を受ける。政次郎は自身の父喜助から進学することを許されなかったことが、自身の子賢治には進学を許しまた金銭面での援助を行う。賢治は将来について、質屋を継ぐ意思は一切なく、好きなことを好きなように夢見てはお金を無心する生活…。そんな賢治を支援し応援する政次郎…。数々の名作がどんな経緯を辿って生み出されたか、また父政次郎からみた37年間の賢治の一生とは…。

     なんだか…すごく意外でしたね、宮沢賢治はどちらかといえば貧しい家の出で苦労したのかとばかり…先入観のみでの思い込みってダメですね(汗)。賢治にとっては家族の存在があったからこそ、こうして今の世でも読まれ続けられる作品を遺すことができたんだなぁ…ってしみじみと感じました。ちょっと、読みにくさはあったけれど、それ以上のものを得ることができました。宮沢賢治作品を読みたくなってきましたぁ~と単純な私です(^-^;

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      かなさ〜ん、こんにちは〜♪
      レビュー、ありがとうございます
      (*^^*)
      私も、もう少ししたら…ですが
      やっぱり読みたくなりました♡♡
      かなさ〜ん、こんにちは〜♪
      レビュー、ありがとうございます
      (*^^*)
      私も、もう少ししたら…ですが
      やっぱり読みたくなりました♡♡
      2023/10/17
    • かなさん
      チーニャさん、おはようございます!
      もとはといえば、
      チーニャさんの「銀河鉄道の夜」のレビューから
      この作品をいつか読もうと思っていた...
      チーニャさん、おはようございます!
      もとはといえば、
      チーニャさんの「銀河鉄道の夜」のレビューから
      この作品をいつか読もうと思っていたんですよ~
      やっと、読めてレビューもあげられました(*^^)v
      チーニャさんも、いつか、読めるときに
      読んでみてくださいね(*^^*)
      2023/10/18
  • 30年近く前、初めて賢治の故郷・花巻を旅したとき、最初に尋ねたのは賢治の生家だった。写真を撮っていると、木戸を開けて背の高いおじいさんが出てきた。一目で賢治の弟の宮沢清六さんだと分かった(のっぺりとした面長の顔で、賢治の面影があった)。
    「何をしているのですか?」
    「‥‥(すみません)」
    「何処から来たのですか?」
    「岡山県です」怖かった。
    でも写真を撮っているのを咎めることもなく、
    「この道を真っ直ぐ行って左に曲がると、羅須地人協会の跡があるから行ってみると良い」と言ってくれた。
    と、いうことをこの小説を読んでありありと思い出した。清六さんは賢治の父、政次郎に瓜二つだったのかものかもしれない。穏やかで物事を全て見通して、しかも厳しい。(清六さんの本については「兄のトランク(ちくま文庫)」を2013年11月に書評した)

    父親から見た長男・賢治像。
    だからか、中学時代のヤンチャも、入院の時の初恋も、農学校時代の友情も、この小説には一切出てこない。でも知らなかったことも出てきた。人造宝石は聞いたことがあったが、製飴工場経営を夢想していたなんて初めて知った。父親からしたら、穀潰しのニートにしか見えなかったかもしれない。もとより、にわかファンならばいざ知らず、賢治ファンならば賢治が聖人君子ではないことは周知のことである。賢治も自覚している。だからこそ「おれはひとりの修羅なのだ」と謳ったのだ。そして妹のトシだけには見えていた。賢治の才能が。同時にその純粋性が天才なのだということも、トシともに私たちも知っている。ハッキリわかっていなかったのは、やはり政次郎なのだろう。でも、政次郎は私たちには及びもつかないほどに息子を愛していた。生涯かけて賢治を支援したのは確かなのだから、愛していたのはやはり小説的フィクションではなく真実なのだろうと思う。

    写真を撮っていた時、生垣の向こうのあの二階で賢治は最期を迎えたのだろうか、と想像していた(実際は戦災で焼けたらしい)。最期のとき、忘れられないやりとりがある。父親に遺言は無いか、と聞かれて賢治は「法華経訳本を一千部刷ってみんなに渡して欲しい」と伝える。それを聞いて政次郎は
    「えらいやつだ、お前は」
    と云ったというのだ。
    賢治は清六さんに
    「おらもとうとう、お父さんに、ほめられたもな」
    と呟いたという。
    この最後のやりとりは、小説でも私の知っている通りに描かれる。私は、小学校の時に「伝記宮沢賢治」を読んで以来40数年間ずっと思っていた。賢治にとって、父親とはそれほどまでに「大きな壁」だったのか?と。
    ところが、である。小説では、政次郎は(嘘だ)と心の中で抗議する。(とうとうどころの話ではない。これまで何度ほめたことか)。ここが、直木賞を獲ったこの小説の肝である。最初から壁なんてなかった。父親はいつでもお前(賢治)を認めていたし、愛していたんだ、と。それが父親なんだ、と。
    私は思う。それは政次郎さん、あなたの思い込みです。初めての童話集を褒めたのは、貴方の夢の中だったんじゃないですか?賢治がどうして『春と修羅』出版に関しては、貴方の援助ではなく、知人からの借金で出版したのか。トシとの最期のやり取りは、アレはあれで真実だった。でも貴方は必ず横槍を入れるから貴方の知らない所で無理して出版したのです。その他いろいろ。賢治にとって、貴方はずっと「怖い」存在だったんです。最期の最期に法華経の頒布に貴方は賛成した。それは賢治にとって、無常の喜びだったはずです。「いい気持ちだ」それが賢治の最期の言葉でした。父と子は、古今東西こういう関係を持つのかもしれない。


    • しずくさん
      宮沢清六さんにお会いになられただなんて何とも羨ましいこと! この本をきっかけに門井さんを読めるようになりました。大好きな一作です。
      宮沢清六さんにお会いになられただなんて何とも羨ましいこと! この本をきっかけに門井さんを読めるようになりました。大好きな一作です。
      2020/01/18
    • kuma0504さん
      しずくさん、ありがとうございます!この30年間で何人かに話したり、ブログで書いたりもしているのですが、初めて「羨ましい」という言葉を頂きまし...
      しずくさん、ありがとうございます!この30年間で何人かに話したり、ブログで書いたりもしているのですが、初めて「羨ましい」という言葉を頂きました。
      周りの反応はそれが何なの?というものなんです。
      もっとも、私が「逢った」のは正味30秒ほどだろうし、しかも嫌われた可能性が高い!それでも賢治ファンとしたら、「羨ましいだろ?」と、人生の密かな自慢になる出来事なんです。ありがとうございました!
      2020/01/18
  • これは、もはや伝記だろうか。
    フィクションだとしても、多くはほんとうのことが記されているように感じた。

    鉱石学、製飴工場、人造宝石、日蓮宗、教師、レコード、チェロ、農業、花卉栽培、農民の相談役、、
    興味関心があちこちに移る賢治を、ちっとも他人事とは思えない。
    将来の目標がひとつ決まっていて、それに向かってぶれずに努力し、一生の仕事として極めていく。そんな生き方が素晴らしいと、かつては思っていた。
    でも、必ずしもそうではないと最近は思うようになった。

    その人がその人である限り、すべての日々はつながっている。
    文房具屋の店先で原稿用紙の山を見た、265ページ目のシーンが大好きだ。

    賢治は、父政次郎に思いきり甘えて生き切った。
    そのことも、ちっとも他人事とは思えない。

  • 第158回直木賞受賞作品
    一度図書館で予約待ちをしたのですが、なかなか順番がこないので、あきらめて、今回はすぐに借りられてやっと読むことができました。
    宮沢賢治の詩集を最近読み返したばかりだったので、場面場面で作品が浮かび大変身近に感じられる作品となりました。
    賢治は放蕩息子であったとか、働き者ではなかったとかいう話を何かで読み、詩人童話作家としての宮沢賢治のイメージが崩れるのではないかとも思いましたが、杞憂でした。
    例えば、妹トシの病に倒れた場面では「永訣の朝」が、自身が結核を疑われ静養しているときに「雨ニモマケズ」が書かれたことも初めて知り、泣けました。

    賢治は父の政次郎の信仰していた浄土真宗を攻撃し、日蓮に帰依しましたが、賢治には、父に反抗する、しなければならない、もっともな理由がありました。幼いころから神童と呼ばれ、父の期待が大きすぎたのです。賢治は放蕩息子ではありませんでした。
    p269より
    自分は父のようになりたいが、今後もなれる見込みはない。みじんもない。それが賢治の結論だった。自分は質屋の才がなく、世わたりの才がなく、強い性格がなく、おそらく長い寿命がない。ことに寿命については親戚じゅうの知るところだから嫁の来手がない。あってもきちんと暮らせない。すなわち子供を生むことができない。
    自分が父になれないというのは情況的な比喩であると同時に、物理的な事実だった。それでも父になりたいなら、自分には、もはやひとつしか方法がない。その方法こそが、(子供のかわりに童話を生む)このことだった。

    賢治は神童と呼ばれるほどの秀才でありながら、質屋を営むということが性に合っていなかったのです。そして早逝した妹のトシと同じように体が弱かった。ただの道楽息子ではありません。こころの中でいつも葛藤していたのだと思います。
    賢治が生前、自費出版した『春と修羅』は世の中にとって早すぎる作品だったので、売れなかったのではないかと思いました。賢治が弟の清六に託したトランクいっぱいの作品が、その死後になって高村光太郎、草野心平、横光利一らにより全集刊行の運びとなったのは本当に良かったと思いました。

    「雨ニモマケズ/風ニモマケズ/雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチ(中略)サウイウモノニ/ワタシハナリタイ」この詩は賢治の魂の叫びの詩だと思いました。

    • やまさん
      まことさん
      おはようございます。
      「うちの旦那が甘ちゃんで」にコメントを追加しました。
      やま
      まことさん
      おはようございます。
      「うちの旦那が甘ちゃんで」にコメントを追加しました。
      やま
      2019/11/13
    • まことさん
      やまさん♪
      こんにちは。
      お知らせありがとうございます♪
      コメントは拝見しました。
      ご丁寧にありがとうございます。読みやすそうな本で...
      やまさん♪
      こんにちは。
      お知らせありがとうございます♪
      コメントは拝見しました。
      ご丁寧にありがとうございます。読みやすそうな本ですね!
      私は、たいてい毎日タイムラインはみているので、コメントは大体見逃さないでみていると思います。でもわざわざありがとうございました(*^^*)
      2019/11/13
  • 宮沢賢治の生涯を父の目線から描いた本作。
    正直、この本を読むまで宮沢賢治がどんな人生を歩んだのか考えたことすらなかった。
    教科書に載っていたいくつかの作品と、個人的には「銀河鉄道の夜」を読んだことがあるだけだ。
    原文のままだと子どもだった私には難解に思え、大人になると童話作品に興味を持てずにいた。

    これだけ有名な作家なのになぜここまで興味を持てなかったのか考えてみると、勝手に描いていた賢治像のせいかもしれない。
    貧しい農民のために尽力した聖人君子のような人。
    これが私の賢治に対するイメージである。
    「雨ニモマケズ」ってなんだか説教臭い。そんな思いで敬遠していたのかもしれない。

    で、この本。
    いやまるで違うじゃないか!
    金持ちのボンボンで苦労知らずな我儘息子。
    勉強はできるけれど、自活できない脛かじり。
    生涯モラトリアムだったんじゃないかと思うほどひどい。
    そんなダメ息子の才能を信じ、支え続けた父がすごい。
    フィクションの部分が多いにしても、生前まるで本が売れなかったにもかかわらず作品を創作し続けることができたのは、まぎれもなく父親の経済力あってのことだろう。

    こんな賢治の姿を知ってがっかりしたかというと、まったくそうではなかった。
    聖人君子だった賢治が一気に身近な人間としての賢治となった。
    さまざまな葛藤を抱えながら生きた賢治、その生々しい姿を想像しながら改めて「雨ニモマケズ」を読んだ。
    やだ、「雨ニモマケズ」読んで涙出ちゃったの初めてよ。
    そうか、そうだったんだ。そう言うことなのねって勝手に解釈して納得。

    この本一冊で宮沢賢治を分かったつもりにはならないけど、もっと読みたいと思う気持ちが俄然出てきた。
    さて、何から読もうか・・・。
    門井慶喜さん、ありがとう。こんなに分かりやすく小説にしてくれてありがとう。感謝です。

    • nejidonさん
      vilureefさん、こんにちは♪
      またお会いできて嬉しいです!!!
      ところで、珍しい選択だわと思いながら読みました。
      そうかー、そう...
      vilureefさん、こんにちは♪
      またお会いできて嬉しいです!!!
      ところで、珍しい選択だわと思いながら読みました。
      そうかー、そういう訳だったのですね。
      思い込みあるある、ですね。
      確かに宮沢賢治は一部のコアなファンの方に過剰に神格化されていて、正直な感想を述べにくい部分があります。
      特に現国の教師の中にファンが多くて、それでよけいに困ります(笑)。
      どうしてこんなこと書くかなぁ、意地悪だなぁというような作品もたくさんあるのです。
      (私はそれで、宮沢賢治よりは新美南吉の方が好きなのですよ。)
      作品からすると、かなり偏屈なお坊ちゃんではなかったかと、秘かに思っておりましたわよ。
      vilureefさんの見方を変えたこの本を、ぜひ読んでみたいものです。
      2017/12/01
    • vilureefさん
      nejidonさん、こんにちは(^.^)
      コメントありがとうございます。

      私のような者が宮沢賢治について語るなんておこがましいんです...
      nejidonさん、こんにちは(^.^)
      コメントありがとうございます。

      私のような者が宮沢賢治について語るなんておこがましいんですが…(^_^;)
      逆に何も知らないからこそ良かったのかもしれませんね。興味を持つきっかけになったので。

      新美南吉!彼こそ童話作家ですよね!
      ごんぎつねと手袋…くらいしか知らないなぁなんて思っていたのですが知らぬ間に読んでいますね。
      つい最近息子に赤いろうそく読み聞かせしました。二人でほっこりしましたよ。
      nejidonのおっしゃることよくわかりますよ。

      宮沢賢治は子供目線の童話作家というより、文学者ですよね。たまたま表現する場所が童話だったという感じで。
      付け焼き刃で語っても説得力ないですが(笑)

      nejidonさんの感想も聞きたいです。
      楽しみにしていますね♪
      2017/12/02
  • 第158回直木賞を受賞作。
    表紙の題字『銀河鉄道の父』の父の字が1.5倍くらい、扉の父の字も若干、大きくなっています。

    花巻で有数の商家を営む政次郎は、長男出生の知らせを出張中の京都で受け取る。
    「ヲトコウマレタタマノゴトシ」
    時は明治29年9月。宮沢賢治誕生。
    宮沢賢治の生涯を父親である政次郎の目線で追った物語です。

    子供の頃から成績はいいが友達の話にに耳を貸さない。青年になってからは子供と接するのは好きだが、大人と接するのは難しい。頑固もの。これと決めたら突き詰める。賢治は難しい人だったのだなぁ、と思います。そんな賢治を政次郎は信じ、理解し、金銭的にサポートします。
    家長としては威厳を保つけれども親ばかで、葛藤するもののなんだかんだで激甘な政次郎。けれど、政次郎がわが子の才能を信じていなければ、今、『銀河鉄道の夜』や数々の名作は残っていないのではないのでしょうか。
    この本を読んだ後に『銀河鉄道の夜』と『セロ弾きのゴーシュ』を読みました。『銀河鉄道の夜』にちりばめられた様々な知識と流れてゆく美しい景色。『セロ弾きのゴーシュ』の生き生きとした動物たちとの会話…。
    花巻という土地と家族愛があってこその物語だと思いました。

  • すごくよかった(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
    でも宮沢賢治ファンに申し訳ないから☆−1に笑

    この本が読みたいが為に三冊ほど読んで一夜漬け
    天才を作り出した父を知りたかった!

    作り出したのではなかったのですね…
    賢治の理解できないほどの才能に悩み、理解しようとする大きな父親の姿がありました。

    物語前半までは賢治のガキ大将ぶりや、ともすれば狡賢い部分に対する父親の威厳と甘やかしたい気持ちとの葛藤が書かれてます。

    この時代跡取りである長男に、子どもの好きなように道を進ませると言う事がどれだけ凄い事か。
    若くして死んでいく賢治に最後まで愛を注ぐ父親の姿に感動です(u_u)

    「……おらは、お父さんになりたかったのす」

    この賢治の言葉が切なかった(>_<)


  • 面白いタイトルが効いてますね。
    宮沢賢治の生涯を、主に父親の視点から、描いてあります。
    さまざまな問題に直面しつつ、いつしか才能を開花させていった息子。

    明治ですからねえ‥
    真面目一方の堅物だった祖父の喜助が興した質屋と古着屋が成功し、地元の名士となった宮沢家。
    父親の政次郎は、喜助の「質屋に学問はいらね」という方針で、小学校までしか行かせてもらえなかった。
    成績は良く、教養もあり、浄土真宗の信仰に熱心で、年に一度夏には勉強会を主催していたんですね。
    講師を招いて数日温泉に滞在してもらい、聴衆の滞在費まで費用のほとんどを負担していたとは太っ腹。

    あいにく長男の賢治は、質屋には向かない性質だったのです。
    政次郎は呆れたり不安になったり、それでも感情は溺愛に近い。
    今の基準から言えば古くて頑固で横暴な夫で父親かもしれませんが、当時としてはむしろ甘いところもあるぐらい?
    賢治が重病の時は二度も自ら病院に泊まり込んで看病して、周囲を驚かせることに。
    進学を認め、何かとお金を出してやります。
    賢治は才能の片鱗を見せつつ、若い頃は甘やかされたぼんぼん、って感じで、「雨ニモマケズ」のイメージと大違い。
    それに、作家になろうとも考えていなかったんですね。

    妹のトシも優秀で、日本女子大を出て、母校の女学校の教員もしていたそう。
    トシは賢治の作った話を聞くのが大好きで、賢治も話して聞かせるのが楽しく、父親の目には仲が良すぎると映るほどだった。
    いや、創作したものを喜んでくれる存在というのは、何より貴重ですからね。
    トシが就職した後、孤独になった賢治は父への反発もあってか?父とは違う宗教へ。
    日蓮宗にはまって経文を唱えながら町を歩くほどになり、かと思うと突然、東京へ行ってしまうのだが。
    8ヶ月後、トシが結核になったと知って、すぐ戻ってきた賢治。
    大きな荷物は、東京で一人、書き溜めた原稿だった‥

    農学校に就職して、わかりやすい講義が生徒に好評だったという頃には、だいぶ大人になっていたのでは。
    自費出版をした後、教職を辞めて、田んぼの中の離れに住み、畑仕事もして自立しようとした。
    肥料の相談などの指導も、無料で試みていた。
    その頃には、雨ニモマケズのような理想を抱いていたのでしょう。
    ただ身体が余り丈夫でないことを考えると、野良仕事をしつつ粗食というのは無理だったのかも‥

    奇矯にも見える行動をとる賢治ですが、ワガママとはちょっと違うんじゃないかな‥
    めったにないほどの才能を抱えた人間には、やむにやまれぬものが内面にあるような気もします。
    それが形となって奔出するまで、色々なことがあるのはどうしようもないのかも。

    一部は賢治の視点から、偉大な父を超えられない重圧なども、描かれます。
    家族の葛藤がトシの病気中に激しいせめぎ合いになるあたり、息を呑むような迫力。
    どこまでが史実あるいは通説で、どこが想像を膨らませたものなのか、わかりませんが‥
    どちらかと言えば抑えた状況描写の中に、生々しい感情が力強く描かれていて、引き込まれました。

    第158回直木賞受賞作☆

  • 158回の直木賞受賞作。

    この時、もう一冊受賞した作品があったけれども、私はずっとこちらが読みたくて仕方なかった。TVで朗読された文章を聞いて、読みたい!と忘れられなかった1冊。今日、朝から読み始め16時40分読了。息もつかせず読んだ。

    なんという純愛だろう。
    政次郎も賢治も、そして、トシも。
    こんなにも父というのは、愛の深いものなのだろうか。今際の際に、やっと父に褒めてもらえたと慨嘆する賢治。何度も褒めたのにと、声にも出せない父の思い。宮沢賢治の人生を思う時、結核の影が去り得ないので、病臥の場面はまことにつらいのだけれど、この作品、最初から最後まで、とても清冽な空気を持っている。

    お父さん、私はあなたになりたかった。

    その、賢治の痛いほどの思い。お前はよくやったと言ってほしいという願いは、愛憎半ばする親を持ち、さんざん悩んだ子供としては、男女の差を超えて非常によく分かる。だから思うのだ。賢治さんは愛されていたなあと。雪や氷が融け出すような、山の奥から下り来る透明な水のような…。溢れるような政次郎の、父としての愛。愛さずにはいられない、その衝動の熱さ。優しさ、細やかさ…。

    賢治の死後になって文名が高まり、弟の清六氏による回顧録も残っているけれど。もう少し報われるのが早かったなら…と、せつなくなる。それでもおそらく親というものは、『うちの子は、誰にも負けとりゃあせん』というのもよく解っており、同じだけの重さで、自分と同じ道を歩かせ護ってやりたいと思う時、『ありゃあモノにはならぁせん』とも、見抜いてしまう。手厳しくしすぎるのも捻じくれるし、甘すぎるのもまた困る。その匙加減の揺れを、親も子も感じながら、親子を不器用にやってゆくのだろう。

    2001年に宝塚の星組で、『イーハトーヴ 夢』という舞台が上演され、その折、夢輝のあさん演ずる賢治と、久城彬さん演じる政次郎の、賢治臨終の場面が素晴らしく、この小説にもある、「やっと褒めて頂ける者になった」と涙する場面が、非常に印象に残っている。その時からの、父親から見た宮沢賢治は、どんなだったのだろう…という心がかりに、一つの納得ゆく解答を出していただいたようで、舞台と小説は関係ないのだが、非常に満足だった。

    小説で、雪を踏むように、そくそくと父と子、兄と妹を丹念に描くと、こんなにも胸打たれるのだなんて。

    政次郎の子育ては、まさに作中にある通り、『女は花をあたためるように。男は霜を踏むように』育てよというのを、通しぬいたのだ。霜を踏むとは酷薄なようであるが、足下の霜の砕ける感触を知るのは、誰あろう、父その人だけである。繊細さ、脆さ、キラキラと冷気に煌く透明さ…その全てを呑んで、子どもたちを慈しんだ。

    賢治の作品で好きなのは、『雪渡り』なのだけれど、この主人公たちが遊ぶ雪原の、なんときれいなこと。当作『銀河鉄道の父』を読んでから、賢治の作品を読んで、振り返ると、むしろ父は、賢治の草稿を読む時、霜よりも、真白い新雪を踏むような、柔らかく、踏み固めれば芯があり、どこにもない跡をつけては、またいつのまにかまっさらになる雪野原を、きっと感じていたのではないか。それはあたかも、多くの人が読んでも、賢治の作品が、いつも光を放つ、真新しいものであること、そのもののように。

    こんなにも夢中になって、こんなにも惹かれながら読んでしまうから、読書はやめられない。小説だから、全てが事実ではないだろう。でも、今読み終えたばかりの感動が、全てを凌駕する。ああ、読んでよかった…!

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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