平家物語 (下)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062508124

感想・レビュー・書評

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  • 西国に落ちた平家は都を定めて皇居をつくることになる。多くの武士が源氏に寝返る中、源氏と平家の争いは激しさを増していき、源義経の活躍などにより天下分け目の戦いに平家は負け、二井殿は安徳天皇を連れて自害、生き残っていた宗盛、重衡は処刑される。

    下巻はほぼ合戦でした。誰か出てきた…と思ったら死に(大体首を切られる)、出てきた…と思ったら死に、の繰り返しで、上巻に比べると読み進めるのに疲れました。

    あとがきで吉村さんは

    「平易な現代文にするよう心掛けはしたが(中略)少年少女は、意味のわからぬ単語に出会い、その意味を知ることによって豊かな知識を得てゆく。少年少女におもねることは、知識の蓄積をさまたげるだけで、かれらに不親切だと思うのである。」(P315)

    と書かれており、意図的に易しすぎる文にはされなかったようです。

    文章が吉村さんということで贅沢な上に、少年少女好みではないかもしれませんが岡田嘉夫さんの挿画もとてもきれいです。眼福でした。

  • (2012.10.12読了)(2012.10.08借入)
    NHK大河ドラマ「平清盛」も驕り高ぶる平氏一族の繁栄も頂点に達し滅びへの道を歩み出しているようです。平清盛の死去で物語は終わるのでしょうか。残り10回ほどの放送で、壇ノ浦までやることなどできないでしょう。
    『平家物語』の平清盛は、上巻で既に死亡し、下巻は、ひたすら平家一族が滅びへの道をたどることになるのですが、それが結構長いですね。
    平氏一族のいろんな人々のエピソードが多く語られているし、木曾義仲や義経などのエピソードも多く語られているので、飽きることはありませんが、よくもこんなにたくさんのエピソードを集めて、これでもかと楽しませてくれるものだと思います。
    今日まで語り継がれてきたのももっともです。
    この本で読む限りでは、義経も頼朝もちょっと好きにはなれない感じです。義経はやることがちょっと荒っぽい感じで、義仲とどっこいどっこいという印象です。頼朝は、信長、秀吉、家康などの武将に比べると、戦場に出ることのない人で、非常に用心深く、だれも信用していない悲しい人という印象です。

    現代作家の方もたくさん平家物語を書いています。ちょっと検索して集めてみましょう。
    「新・平家物語(一)」吉川英治著、吉川英治歴史時代文庫
    「宮尾本 平家物語〈1〉青龍之巻」宮尾登美子著、文春文庫
    「吉村昭の平家物語」吉村昭著、講談社文庫
    「双調 平家物語〈1〉序の巻 飛鳥の巻」橋本治著、中公文庫
    「現代語訳 平家物語 上」中山義秀著、河出文庫
    「平家 (1)」池宮彰一郎著、角川文庫
    「絵巻平家物語 1 忠盛」木下順二著、瀬川康男絵、ほるぷ出版
    「平家物語〈第1巻〉」森村誠一著、小学館文庫
    「平家物語 巻之一」光瀬龍著、角川文庫
    やはり吉川英治が気になるのですが、16巻もあるみたいなので、ちょっと手が出ないというところです。このほかに漫画、学者さんのものも多数あります。

    【目次】
    大蛇の子孫
    波間にただよう天皇の舟
    いなか侍木曾義仲
    平家のふたつの勝利
    乱暴な義仲軍
    法住寺の合戦
    宇治川の先陣あらそい
    木曾義仲の最期
    中納言教盛父子の活躍
    鵯越えの逆落とし
    一の谷の戦い
    小宰相の身投げ
    平維盛の手紙
    平重衡の手紙
    千手の前
    横笛の恋
    平維盛の自殺
    藤戸の合戦
    義経の屋島攻め
    扇のまと
    壇ノ浦
    平家の人々の運命
    宗盛父子の処刑
    重衡の処刑
    頼朝のうたがい
    六代御前と文覚
    平家断絶
    あとがき  吉村昭
    解説  梶原正昭

    ●平頼盛(186頁)
    頼朝は、法皇に手紙を送り、頼盛に荘園や私領地を与え、またもとの大納言にしてほしいとお願いした。
    (源頼朝は、平頼盛の母の池の禅尼に助けられたので、清盛とは別行動をとった頼盛に恩返しをした、ということでしょう。)
    ●源義経と梶原景時の逆櫓論議(194頁)
    「戦というものは、後ろへ逃げることなど考えていては勝てぬ。これから出陣するというのに、縁起の悪いことを口にするな。そんな逆櫓など、お前たちの舟にはどんどんつけろ。私の舟は、今迄通り櫓は一つでいい。」
    「優れた大将軍というものは、進むべき時は進み、ひくときはひいて身の安全を守り、その上で敵を滅ぼすものです。進むことだけ考えるのは、愚かしいイノシシ武者です。」
    ●那須与一が扇の的を見事射た後(214頁)
    舟の上に鎧をつけ長刀を手にした五十歳ほどの男が出てきて、興奮したらしく扇が立っていたところで舞い始めた。
    伊勢の三郎義盛が、与一に近づき、
    「ご命令だ。あの者を射よ。」
    といった。
    与一は弓に矢をつがえて放ち、その男の首を射通した。男は、船底にあおむけに倒れた。
    ●義経の特徴(232頁)
    「義経は色白で背が低く、前歯が特に突き出ているそうだ。すぐにわかる。」
    ●平重衡(269頁)
    (重衡は、かつて、東大寺を焼き払ってしまったので、源平合戦で、捕まえられた後、奈良の僧徒たちに引き渡された。)
    ●六代御前(296頁)
    (源頼朝は、文覚の願いを聞いて、平維盛の子息を文覚に預けたのですが)
    頼朝は、六代御前のことを不気味に思い、文覚房に、
    「維盛殿の子息はどうしておる。兵をあげて私を滅ぼし、天下を取るようなことはしないだろうか。」
    と、しばしば手紙でたずねた。
    「そんな心配をなさるとは、底なしの意気地なしでござりますぞ。そんなことは決してありません。御安心なさい。」
    文覚房は、そのたびに返事をした。
    ●吉村昭版『平家物語』(314頁)
    『平家物語』には、仏教を主とした宗教に関する記述が多く、ある部分では説教調になり、ある部分では長い説明となっている。これらの部分は煩雑なきらいがあり、しかも物語の本筋にさほど関係なく、むしろ物語の緊張をそいでいる傾きすらある。
    私が大胆に削ったのはそれらの部分で、初稿の筆を置いた時、原稿用紙の枚数は八百枚強であった。(元の3分の1ぐらいになっています)

    ☆関連図書(既読)
    「平家物語 巻之一」光瀬龍著、角川文庫、1987.07.25
    「平家物語 巻之二」光瀬龍著、角川文庫、1987.08.10
    「平家物語 巻之三」光瀬龍著、角川文庫、1989.04.25
    「平家物語 巻之四」光瀬龍著、角川文庫、1989.06.25
    「平家物語 巻之五」光瀬龍著、角川文庫、1989.08.10
    「平家物語 巻之六」光瀬龍著、角川文庫、1989.12.25
    「平家物語 巻之七」光瀬龍著、角川文庫、1990.02.10
    「平家物語 巻之八」光瀬龍著、角川文庫、1990.04.25
    「平家物語(上)」吉村昭著、講談社、1992.06.15
    「清盛」三田誠広著、集英社、2000.12.20
    「平清盛福原の夢」高橋昌明著、講談社選書メチエ、2007.11.10
    「海国記(上)」服部真澄著、新潮文庫、2008.01.01
    「海国記(下)」服部真澄著、新潮文庫、2008.01.01
    「平清盛-「武家の世」を切り開いた政治家-」上杉和彦著、山川出版社、2011.05.20
    「平清盛 1」藤本有紀作・青木邦子著、NHK出版、2011.11.25
    「平清盛 2」藤本有紀原作・青木邦子著、NHK出版、2012.03.30
    「西行」高橋英夫著、岩波新書、1993.04.20
    「白道」瀬戸内寂聴著、講談社文庫、1998.09.15
    (2012年10月12日・記)

  •  重衡の世話をした千手の前はギリシャ神話のナウシカア姫みたい。そうそう瀧口入道も敦盛も平家物語やったなあ。けっこう知ってるエピソードが多いんや。いろんなタイプの話が集まってる感じ。たぶんあちこちから集まってきたお話集なんやろうと思います。そして背景に滅びの気配が流れてるのでさらに盛り上がる。この本は二冊合わせて一気読みできます。

  • 上に続いてこちらも同じ。大原御幸、六代被斬まで入っている。一ノ谷から壇ノ浦までの一門の死は、子供向けながらも涙を誘う文章。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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