巻三 (源氏物語)

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  • 講談社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062521031

感想・レビュー・書評

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  • 二巻まで新装版を読んでいましたが、貸し出し中なので、こちらを読むことに。
    字が大きいので読みやすく、絵も綺麗なのがついていて、参考図録もある。良いです。

    須磨に流れいろいろと大変な目に遭って、光源氏も落ち着いたのか。第二巻までのように次々に新たな女性が出てくるわけではないですが、明石の君が登場し、帰京に伴う別れ、姫君の誕生、明石の君母子を都に迎える、という物語が中心になっています。そこに、六条の御息所の娘の前斎宮の入内や後宮の様子、末摘花や空蝉との関わり、朱雀院と朧月夜のやりとりなどが書かれていました。

    気に入って読んだのは、蓬生の帖。どうにも末摘花が私のお気に入りらしく、強情に父君の邸を守って源氏を信じて待っている様子が、この巻のなかで一番浮世離れして、物語らしい感じがします。これで末摘花が可愛い娘だったら、話が成り立たないでしょうが。結果、源氏が末摘花を思い出してくれて良かった~、分かってはいたもののはらはらしました。

    前斎宮の入内などが書かれた帖は、政治的なにおいのする生々しいところを感じます。藤壺と源氏の密議や、源氏の野心や下心や朱雀院への後ろめたさなどいろいろな感情の交錯するところでした。前斎宮は、いろいろと思うところはあっても、身近に後ろ楯がないので、どうしようもない。かわいそう。

    紫の上は、源氏の浮気にご機嫌を損ねたときにちょこちょこ登場。最後の松風の帖で、明石の姫君を引き取って育ててみない?と源氏に提案をされるのですが、その時の会話で、源氏が紫の上に明石の上のことについて

    「比べものにもならぬ相手を、対等にお考えになるのはつまらないことですよ。自分は自分だと平気で無視していればいいのです。」

    明石の上にも、紫の上にも、あんまりにも失礼…。

    明石の上からきた手紙を
    「この手紙は、あなたが捨ててください。あぁ、わずらわしい。…」
    なんて白々しい上に、やっぱり失礼…。

    平安時代の読者がこの辺を読んで、どんな風に感想を言い合っていたかな?と、思うと面白いです。男性は源氏の立場になって言い訳してみたり、それに女性がいろいろ言ってみたり、なんてことはなかったかな~。
    ところで、朱雀院は朧月夜を一途に思ってる設定ですが、前斎宮にもご執心で自分のもとに引き寄せようとします。あれれ。一途に思うって、同時に二人はアリなの?平安男子の一途は当てにならない。


著者プロフィール

1922年、徳島県生まれ。東京女子大学卒業。63年『夏の終り』で女流文学賞、92年『花に問え』で谷崎純一郎賞、11年『風景』で泉鏡花賞を受賞。2006年、文化勲章を受章。2021年11月、逝去。

「2022年 『瀬戸内寂聴 初期自選エッセイ 美麗ケース入りセット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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