- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062585231
作品紹介・あらすじ
高度な哲学的思弁と卑俗な民俗信仰の入り交じる、矛盾と混沌に充ち満ちた不可思議な思想。教団・経典の解説から「気」の思想、はたまた妖怪怪異の世界にいたるまで、複雑怪奇な道教の世界の神髄を縦横無尽に解き明かす。
感想・レビュー・書評
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道教とは「道」の教えである。
では「道」とは何か。
『老子』は「道」を山あいの「谷」になぞらえている。あるいは水が流れこむ「淵」になぞらえている。あるいはまた、そこに流れこむ「水」になぞらえている。
「道」は天に先がけて存在すると『老子』は語る。天地万物ありとあらゆるものを生み出すのが「道」であるという。
しかし、それは「道」をたっとぶ思想が「天」の思想よりも先にできたという意味ではない。「天」の思想があるからこそ、それを凌駕すべく「道」が説かれたのではないか。では、「天」とは何か……
道教はとらえにくいと著者は言う。
いろいろなものがありすぎる。
そのいろいろなものの一部を著者は平易な文章で時にユーモアを交えながら分かりやすく紹介してくれる。
面白い。その一つ一つが興味深くて面白い。
だからと言って、それらを一つにまとめて、結局道教ってなに?と言われると、どう説明すればいいのかわからない。
いろいろなものがありすぎる……
道教はとらえにくい。そういうことだろう。
それが分かっただけでも、今回はよしとしよう。
私は道教の神さまとか天界への飛昇とか、そういう神さま系のことを知りたくて本書を手に取ったのだけれど、それらについてはほとんど紹介されていなかった。
それよりも、「道」を歩んでいる者たちの身近にある道教の一部が紹介されている。
それは「道」について説く老子の言葉や「不老不死」の願い、つまり「命をいつくしむ」信仰などの話からはじまり、山岳信仰、文学、怪異、年中行事、民俗、医療、日本文化などなど多岐に渡って繰り広げられていく。
「文学」の項目で紹介された『西遊記』は読んでみたい。『西遊記』は三蔵法師が天竺にお経を求めに行く話で、仏教の物語だ。だけれど、そのなかに驚くほど多くの道教の神々が登場し、ほとんど道教的な世界のなかで物語が展開していくらしい。
女媧が人間をこしらえたという神話。
体内に金丹を錬成すること、悪しき気を退ける呪文や護符。
日本で幽霊といえばあの世の存在だけど、中国では幽霊も人間と同じくこの世の存在であること(これは鬼と呼ばれる存在のことだよね)。
人は精神と肉体からできているという考えから、精神をつかさどるものを魂といい、肉体をつかさどるものを魄ということ。
それから「天官賜福」の言葉や元宵節などの行事に関することなど。
古代中国ファンタジーに沼落ちしている私には馴染み深い言葉がちょいちょい登場するのはワクワクして楽しかった。
ルキアノス、オウディウス、そうなんだ、そうなんだ!とアテナイエさんのコメントにワクワクしました。
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ルキアノス、オウディウス、そうなんだ、そうなんだ!とアテナイエさんのコメントにワクワクしました。
古代の世界にはそんな奇跡のような面白い繋がりがあったのですね。
私は古代ギリシャの作品は全く手をつけていなかったのだけど、すごく興味が出てきました。
アテナイエさんにコメントを頂くと、いろんな本に繋がっていって、ほんと読んでみたい本が増えていく一方です!
あ、古代ローマを舞台にした小説『クオ・ワディス』と、イタリア発、古代ローマ・ミステリ『剣闘士に薔薇を』、あ、あと漫画『テルマエロマエ』は読みましたが、どれも古代ローマに惹かれちゃいました。
マリモさんにコメントを頂いて気づいたのですけど、私はどうも古代系が好きみたいです。
この本にはルキアノスやオウディウスは出てこなくて、アテナイエさんの思う内容ではないかもしれないです……
『山海経』に出てくる生き物とプリニウスの『博物誌』に出てくる首なし族が似ている……とかチラッと出てきたくらいです(^^;
そして私、古代ギリシャと古代ローマとごっちゃになってました(ToT)
もしがっかりさせちゃったら、ごめんなさいっ。
すっかりわたくし思い込みまみれのおしゃべりになってしまい失礼しました。でも繋がる書物(世界)というか、書物...
すっかりわたくし思い込みまみれのおしゃべりになってしまい失礼しました。でも繋がる書物(世界)というか、書物が書物を呼ぶという感じで、世界は奥深いパズルのようなものかもしれません。
以前からなぜか古代ギリシャの思想や作品がわりと好きなので、不思議に思っていたのですが、これが仏教や道家思想とも近しい感触で、なるほどね~と勝手に納得しつつ、独りで感激して遊んでいるわけです、はい(笑)。
地球っこさん、古代ローマ時代お好きですか。おもしろいですよね! 血沸き肉躍るという感じです。『クオ・ワディス』は昔に読んだものの、残念ながらあまり記憶に残ってないです。再読の予定もいまのところはないかな……。お風呂のお話は笑えておもしろい! ローマ時代はカエサルや詩人ウェルギリウス、賢人皇帝つながりくらいしかわかりません。古代ギリシャ時代の知や文化を引き継いでいるので、地球っこさんと同じようにわたしもごっちゃになります。
>この本にはルキアノスやオウディウスは出てこなくて、アテナイエさんの思う内容ではないかもしれないです……
いいです、いいです。わたしの勝手な思い込みに近いですから。それでも脳内で繋がって、ふと思い出せて、とても幸せな気分です。
ありがとうー♪
東洋思想はしばらくはなれているので、思い出すために読んでみようと思います。もう図書館に予約したし。
>『山海経』に出てくる生き物とプリニウスの『博物誌』に出てくる首なし族が似ている……とかチラッと出てきたくらいです
それはおもしろい! プリニウス『博物誌』も以前から気になっている書物で、あまりにも膨大なので、尊敬する作家イタロ・カルヴィーノがチョイスした巻だけでもぜひ読んでみたいと思っています。繋がりますね~。
繋がりついでに、儒教・道教・仏教をコンパクトに一冊にまとめた随筆『菜根譚』はさらりと読むには面白いと思います。でも脳内でごった煮になります。嚙むには硬いからスープ状態になってかえっていいかも!?(笑)。
ごっちゃになりますが、やっぱり古代ギリシャや古代ローマは気になる時代です。
古代ギリシャ、ハマりそう~
『菜根譚』、読み...
ごっちゃになりますが、やっぱり古代ギリシャや古代ローマは気になる時代です。
古代ギリシャ、ハマりそう~
『菜根譚』、読みたいと思います。
ごった煮がまた頭を熱くさせて面白かったりするんですよね~