絶滅の地球誌 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062586412

作品紹介・あらすじ

この地球は、今まさに絶滅の危機に瀕している──。
本書は、この紛れもない事実を直視し、人類の未来を思考しようとするものである。
地球という星は、これまで五回にわたる「大絶滅」を経験してきた。そして、多くの専門家たちが警鐘を鳴らしている。現在、地球は六度目の「大絶滅」に突入しつつある、と。ある研究者によれば、毎年5万種の生物が地球上から姿を消している、そんな前代未聞の事態が今まさに進行している。
その原因は何か?
この問いに答えるために、著者は一見すると無関係な主題に向かっていく。それが「核開発」である。兵器としてのみならず発電のためにも使われる技術を、人間はいかにして生み出し、その現状はどうなっているのか。それを追求していくとき、「ニュー・パンゲア(超大陸)」と呼ばれる状態になった現代世界の姿に突きあたり、まさにその状態こそが「大絶滅」をももたらしているのではないか、という疑念がもたらされる。
では、どうすればよいのか? もしも処方箋を求めるなら、われわれは究極の問いに取り組まなければならないだろう。──「人間は人間自身を選別することができるのか? 生きてよい人間と生きなくてよい人間の分断線を引くことが人間にはできるのか?」
もちろん、簡単には答えられない。ことによると、誰にも答えられない問いかもしれない。だからといって現状を黙認すれば、無数の生物が姿を消し、憎悪を抱えたテロリストが生み出され続ける。
だからこそ、現実を直視すること。そして、むやみに絶望するのではなく、ただ愚直に思考すること。
本書は、前代未聞のテーマに全身全霊を捧げて取り組んだ著者からの、希望に満ちた贈り物である。

感想・レビュー・書評

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  • 本全体の内容を反映したものではないが、印象に残った部分を。
    テロリストとはだれか。「テロリスト」とはあらゆる身分秩序から排除された者である。彼らは法の下にないゆえに、「容疑もなければ、犯罪の要件すら充たすことなく即座に殺してよい者となる」(263)。「テロリスト」と名指された瞬間、この条件は充足され、その素性や詳細は問われることなく殺される。翻って、「殺されたからにはテロリストにちがいない、という倒立した判断すら罷り通る」(263)ことになる。
    「一般人」の秩序から排除されたとき、あるいは排除された・されていると感じたとき、「一般人」は「テロリスト」となる。あるいは、誰かからそう名指されたとき、自らそう名指したとき、その瞬間「一般人」は「テロリスト」となる。そして、行為や素性が問われることなく殺されるがままとなる。なぜなら、殺されたからには「テロリスト」であって「一般人」ではなかったからだ。
    したがって、「一般人」は「一般人」の秩序やカテゴリーから外れないように常に警戒し、逆に、ただちに誰かを「テロリスト」と名指すことで、自らが「テロリスト」でないことを明かすべく、つねに相互に監視しあい、相手を出し抜こうとするだろう。共謀罪が成立した世界とはこのような世界である。「テロリスト」とは名指しの問題以上でも以下でもない。「一般人は対象外」という答弁のロジックが孕む違和はここにある。

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著者プロフィール

1960年生まれ、明治学院大学教授。専門は社会思想、犯罪社会学。
主な著書『ドゥルーズを「活用」する!』(彩流社)『起死回生の読書』(言視舎)『絶滅の地球誌』(講談社選書メチエ)『ミルトン・エリクソン』(法政大学出版局)ほか多数。

「2023年 『科学と国家と大量殺戮 物理学編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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