絶滅の地球誌 (講談社選書メチエ)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062586412

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  • 本全体の内容を反映したものではないが、印象に残った部分を。
    テロリストとはだれか。「テロリスト」とはあらゆる身分秩序から排除された者である。彼らは法の下にないゆえに、「容疑もなければ、犯罪の要件すら充たすことなく即座に殺してよい者となる」(263)。「テロリスト」と名指された瞬間、この条件は充足され、その素性や詳細は問われることなく殺される。翻って、「殺されたからにはテロリストにちがいない、という倒立した判断すら罷り通る」(263)ことになる。
    「一般人」の秩序から排除されたとき、あるいは排除された・されていると感じたとき、「一般人」は「テロリスト」となる。あるいは、誰かからそう名指されたとき、自らそう名指したとき、その瞬間「一般人」は「テロリスト」となる。そして、行為や素性が問われることなく殺されるがままとなる。なぜなら、殺されたからには「テロリスト」であって「一般人」ではなかったからだ。
    したがって、「一般人」は「一般人」の秩序やカテゴリーから外れないように常に警戒し、逆に、ただちに誰かを「テロリスト」と名指すことで、自らが「テロリスト」でないことを明かすべく、つねに相互に監視しあい、相手を出し抜こうとするだろう。共謀罪が成立した世界とはこのような世界である。「テロリスト」とは名指しの問題以上でも以下でもない。「一般人は対象外」という答弁のロジックが孕む違和はここにある。

著者プロフィール

1960年生まれ、明治学院大学教授。専門は社会思想、犯罪社会学。
主な著書『ドゥルーズを「活用」する!』(彩流社)『起死回生の読書』(言視舎)『絶滅の地球誌』(講談社選書メチエ)『ミルトン・エリクソン』(法政大学出版局)ほか多数。

「2023年 『科学と国家と大量殺戮 物理学編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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