物語論 基礎と応用 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062586504

作品紹介・あらすじ

私たちは常に、物語に囲まれて生きている。小説や漫画などのフィクションが「物語」なのはもちろん、著者によれば、スポーツ中継や日々のニュース、歴史叙述も「物語」だという。では、ここでいう「物語」とは何か。どういう性質をもつものなのか――。これを論じてきた理論が物語論(ナラトロジー)である。
動物もコミュニケーションを行えるが、物語を語れるのは人間だけである。その意味では、物語とは、人間の言語活動に特徴的かつ本質的なものである。しかし、「物語」というと、これまでは往々にして、作者の意図や作品の社会的背景、歴史的意味の解釈にのみ、力点がおかれていた。本書でいう「物語論」はそうではなく、言語学や文体論を用いながら、物語そのものの構造を論じ、設計図を分析していく。
第一部では、フランス構造主義の物語論を中心に、その理論を紹介し、第二部では、カフカ、田山花袋、ボルヘスから、「シン・ゴジラ」「エヴァンゲリオン」「この世界の片隅に」まで、具体的なテクストを分析し、私たちの現実認識が、物語の仕方によっていることを明らかにしていく。

感想・レビュー・書評

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  • 用例が沢山載っているのだけど、何について扱っているのか、例示に対する解釈と物語論の部分とで右往左往したー。再読前提。

    「『詩学』のアプローチの仕方は、物語を『解釈』する行為と、逆のことをする。つまり、ある解釈があったとして、なぜ、その解釈が生まれるかを明らかにしようとする。」

    「物語の時間は、どのような順序で語るのか、どのくらいの速度で語るのかが二大要素であった。」

    なぜ、「それ」を読むと私たちの琴線に触れるのか。なぜ、名作は名作たりえるのか。
    物語の構造から考えようというアプローチは、ものすごく面白い。

    「歴史や、ドキュメンタリー、ニュースなどが物語だとするなら、これは明らかに現実とつながっている。しかし、それはすでに語られている以上は、もう現実そのものではない」

    その通りだと思うし、それを俯瞰するために手に取ったのだけど(難しかったなあ)。

  • 読み終わった。
    物語論にはもともと興味を持っており、大塚英志『ストーリーメーカー』でちゃんと触れた。今度は創作応用が前提ではない、普通の研究書・入門書としての物語論を読もうと思った。
    はじめは橋本陽介『ナラトロジー入門』を読もうとしたが、何かの授業の参考書に指定されていたようで、図書館でなかなか借りられなかった。そんな中近くの公共図書館に行ったら、同じ作者が選書で物語論の入門書を書いていたので、この本を読む運びとなった。

    やっぱり物語論は面白い。
    普段何気なく触れている物語たちを分解するのは楽しいね。

  • 『基礎編』『応用編』の2部構成になった入門書。
    前半で『物語論』について基本的なことを解りやすく述べ、後半では実際に作例を挙げて、『物語』の分析が行われる。
    圧倒的に面白いのは後半の『応用編』。ごく最近のヒット映画やアニメから、ノーベル文学賞受賞作家、教科書に載っているような文豪の作品まで、様々なタイトルが挙げられる。後半部分だけで相当なブックガイドになるのではないか。

  • [出典]
    amazon

  • 「第一部 理論編」では平易な言葉を用いて、物語論が生まれた経緯とその理論についての概説がされている。
    「第二部 分析編」では外国文学やアニメ、映画といった多様な作品に対して、物語論の理論を用いた分析をしている。

    前半の理論編は物語論の全体像を概観するのとができ、専門書へ踏み込む前の導入として優れていると思う。
    後半の分析編では、文学作品に限らず人間が生みだしたものは基本的に物語として分析できることを示している。

    本文引用
    p258「物語論では、作者の意図が無視されているとよく言われる。しかしこれは誤解である。構造主義時代の物語論でも、無視されたのは『完全に作品を決定できる存在』としての作者である。作者の意図なるものを解読し、作り出すのは読者の側だと考えたのであって、まったく無視したのではない。」

    p268「思うに物語というのは、人間の観念による構築物である。現実は物語的に把握され、物語は把握され、物語は把握された現実のように表象される。換言すれば、それは現実認識を抽象化し、普遍化したものである。現実は私たちの感情に作用するが、物語よ読み手の感情に作用する。それも、抽象化され、普遍化されている分、時には現実以上の作用をおよぼすのである。」

  • 叙述のスピード(物語の時間)を決める要素として何があるか、またそれによってリアリティや臨場感がどのように変化するか、などが実例込みで説明されている。
    この分類手法を使うと読者に対してこんな影響をこれくらい与えられる、という情報がたっぷり出てくるのを期待して後半の分析編を読んたが、あまりなかった印象。

  • 本書は物語論(ナラトロジー)を紹介する本である。物語論とは、小説や映画などの文芸作品を読解する手法の一つで、内容よりも形式を重視し、物語の設計図を解き明かそうとすることに特徴がある。大学入試現代文の小説の読解方法に似ている、いや、私自身が習った方法が物語論に依拠している部分があるのかもしれないと感じた。テキストの文法や叙述の仕方に忠実に読解を進める点で、汎用性が高く機械的に適用するのにも向いている。だから、受験勉強にも有用だろう。高校時代に読みたかった・・・。

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著者プロフィール

1982年、埼玉県生まれ。慶應義塾志木高等学校卒、慶應義塾大学大学院文学研究科中国文学専攻博士課程修了。博士(文学)。慶應義塾志木高等学校講師(国語科)等を経て、現在、お茶の水女子大学基幹研究院助教。専門は中国語を中心とした文体論、比較詩学。著書に『7力国語をモノにした人の勉強法』(祥伝社文庫)『物語における時間と話法の比較詩学』(水声社)『物語論 基礎と応用』(講談社選書メチエ)『日本語の謎を解く』(新潮選書)『ノーベル文学賞を読む』(角川選書)などがある。

「2019年 『使える!「国語」の考え方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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