- Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062632492
作品紹介・あらすじ
奇妙な出来事の数々は、壮大なドラマの前兆だった。誘拐と間違われた少女が無事もどって、銀河鉄道の夜を体験したと語り、ゴジラに襲われたと訴える青年が現われる。そして蒸気機関車に引かれたミステリアス銀河列車が60人の乗客とともに消えて殺人事件が…。犯人の狙いはなに。牛深警部の推理は。
感想・レビュー・書評
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たぶん知らない人が多いと思います、この作品も、そして作者も。
しかし、この本はいい。理屈抜きにいい。
冒頭が最もいい。
極寒の北海道。その新雪の原野に、二条の車輪の蹟が続く。
そして、その先の大木に、列車が一台引っかかっているのである。
雪原を走り疲れて、眠っているかのように。
この美しさは、北国に生まれ育ったものにしか分からない。
作者の阿井氏は北京生まれということだから、たぶん真冬の厳しさと美しさを
知り尽くしているのだろう。
推理小説(それもこれほどの超越した「あり得ない状況」を設定した物語)の書評に
顛末をあらすじで書くような野暮はしない。
ただ、読んでみてほしいと、願うばかりである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
身長数十メートルの怪獣ゴジラに襲われたという青年。少女誘拐。バラバラに切断された彼女の遺体写真。しかし誘拐と思われた少女は無事に戻る。…も、銀河鉄道に乗ったり、恐竜時代の地球に行ったと言う。
さらに北海道では、ミステリアス銀河列車が60人の乗客とともに消える。車掌だけ保護されるも、宇宙を旅して月面や火星に行ったと証言。しかも、黒こげの死体ひとつを乗せた客車3両と蒸気機関車は、空を100キロメートル以上飛び、原野のただ中、天へ昇りゆく途中とでもいえる格好で、樹高20数メートルの巨木の上に、まるで船が座礁でもしたかのように、引っかかって発見される。
それから、妖怪ぬりかべやカラスてんぐの目撃情報。ゴジラに食われた2つの死体。まだ起こる第二の銀河列車事件…。
まるでファンタジーのような、これら詩的な事件の謎に、警視庁捜査一課の牛深警部が挑む。
北海道を舞台にしていたり、メルヘンのような事件のシチュエーションを、現実的に解明してゆく物語の展開は、島田荘司の『奇想、天を動かす』を思わせてワクワクしました。解説を島田先生が書いてるのもうなずけます。情景が絵のように浮かび、好きな世界です。