- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062648806
感想・レビュー・書評
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とても不思議な物語。
4つの短編で構成されていて、全て「三月は深き紅の淵に」という幻の本を巡って話は作られている。
ざっと簡単に説明すると、一章は本だらけの大きな屋敷の中から「三月」の本を探す話、二章は2人の女性が「三月」の作者を突き止めるべく推理を進める話、三章は異母姉妹の美人な女子高生を巡る話でおそらく「三月」が書かれる前の話、そして四章はまさに作者が「三月」を書いている話。これらは、作中に出てくる「三月」と話は全く違うのだか、それぞれどこか似通った話で構成されていると感じた。特に四章は作中に出てくる「三月」の四章とほぼ同じ流れで書かれている。つまり本書自体が作中で出てくる幻の「三月」の本になぞらえているのだろう。
第一章で、この幻の本についてこう書かれている。
『なんというか奇妙な印象を受ける小説でね。種類の違う素材のかけらをモザイクにしたような小説。びしっと隙がなくて文句なしの傑作、っていうのじゃないんだ。なんだこれは、と読んでいるうちにずるずると引きずり込まれて、しばらくたっても小説のかけらが頭のどこかに残っているような小説なんだ。』(31ページ)
本書はまさにこんな小説。本当に読後しばらくたっても頭のどこかでこの作品がもやもやと残っている。物語自体がベールを被ったような作品。一言で感想を言え、と言われても表現出来ない。
好き嫌いが分かれる作品だと思うが、読後、読者それぞれがいろんな考え方が出来る作品だと思う。これを読んだ人同士でこの本について語り合いたいと思った作品だった。ただ一度読んだだけでは足りないというか、この作品が言いたいこと、大切なことが読み取れていない気がするので、もう一度読んでみようと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
不思議な世界観。読んでいて嫌な感じはしないものの、何となく退屈を感じた。私には合わなかった。
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これまで2回チャレンジしたが、第一章を読んだところで「面白いけど、読み続けるのはちょっとしんどいな」と思いしばらく放置していた。三度目の正直で今回は読み切った。
全体を通してみるとそんなに悪くないような気がしているが、第二章あたりは正直「長いな…」と思いながら読んでいた。しかしその後の第三・四章では打って変わってスラスラと読み進めることができた。
第三章は不穏で重く苦々しい青春小説だが、儚く煌めく美しいものも感じられる。
第四章は作者の地の部分も出てきながらも、幻想的な雰囲気の物語も展開される。また作者側の場面であっても、深夜に執筆をしている場面、出雲に取材旅行にいった場面と分かれているため、やや慣れが必要かもしれない。
各章での感想が結構異なっているため、本全体を通じての感想や印象を決めるのは難しい。ただやはり恩田陸は面白い作家だと思ったので(これが自分にとっては初の恩田陸の本だった)、『ユージニア』や『中庭の出来事』、『六番目の小夜子』、『私の家では何も起こらない』なども読んでいきたい。 -
なんかちょっと難しかったぁ。
第4章が。
でも恩田陸さんらしい感じで良かった。
もう一回、今度読み返してみよう。 -
#読了 #恩田陸 #三月は深き紅の淵を #読書好きな人と繋がりたい
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同じ著者の本を読むのは久しぶり。記憶に残っているのは「蜂蜜と遠雷」。あれは面白かったなあ。
その印象に比べると、本書は正直かなり期待外れ。
4章構成の内容を読み進むうちに、なんとなく「物語の入れ子構造」みたいな試みを展開しようとしている著者の企図が明らかになり、期待も膨らむ一方で、残る紙数が減るにつれ「ありゃ?コレって結局『回収されない伏線だらけ』になるんじゃね?」みたいな不安が頭をもたげ・・・結局その不安が的中する形に(苦笑。
その作風?もしくは試み?そのものには興味も持てたし、期待通りのカタルシスを感じさせて貰えれば大いに満足も出来たのだろうと思うが、実際はさにあらず。
著者自身としても意欲的かつ実験的な取り組みだったのかも知れないが、であればこそ、書き終えた著者本人にとって、その企ては成功したと思えたのだろうか?その点だけは興味があるなあ。 -
「作者不明の幻の本」を共通のテーマにした中編4作。この中編同士は連作という訳ではありませんが、小説が入れ子式になっていて面白かったです。
幻の本『三月は深き紅の淵を』は四部構成で、物語同士の関連はなく、唯一「ザクロの実」というワードのみ共通している、という設定です。
そして本作もまた四部構成であり、物語同士の関連はなく、唯一『三月は深き紅の淵を』の存在を匂わせていることが共通しています。
また、なんとなく第一部で示された幻の本のあらすじと、本作の物語も似通った点があること、そして第四部では恩田さん自身の視点も描かれており、入れ子の入れ子…という一筋縄ではいかない構造にもなっています。
本作だけでは閉じきらない世界が、後作に繋がっていたのだと思うと、いくつもいくつも鉱脈が埋まっているような気持ちになり、読むのが楽しかったです。 -
「理瀬シリーズ」の最初にしてちょっと異作、コレが一番好きかもしれない
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どの話も細かい所まで世界観が作られていて臨場感があり特に最初の話の色んなことを語るシーンのそれぞれの登場人物は印象的だった。