- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062727846
作品紹介・あらすじ
近代大衆社会がどのような形で暴走し、どのような形で行き詰まるのか(中略)その兆候をすばやく察知し、わが国の現状に警告を発したのが、作家の三島由紀夫(一九二五~七〇年)です(中略)三島は自衛隊市ヶ谷駐屯地でクーデターを促し、割腹自殺しています。(中略)
三島は時代のいかがわしさに吐き気を覚えていた。
なぜ今の日本はおかしくなったのか?
なぜ世の中バカばかりなのか?
そういう疑問を持ったとき、三島が残した厖大な量の評論は非常に参考になります。
だから、三島の言葉を振り返りながら、今の世の中、ひいてはわれわれの思考の土壌について考えてみようというのが本書の趣旨です。(「はじめに」より抜粋)
感想・レビュー・書評
-
三島由紀夫は表現者であり小説家、かつ顔も名前も売れていた。その彼が、ひっそり死なず、大衆に晒して割腹し、そこに主張を込めたのだから、その死はパフォーマンス以外の何物でもない。時代の変化に命を賭けたなら結果を見ずには無責任。諦めたという事なら、自らが忌避した小説家の自死と何が違うか。
その三島が憂いた日本の未来に関し、保守の定義に囚われて、結局、大衆を揶揄するだけで、その構造的変革に踏み込めないならば、B層以下だろう。今更、三島由紀夫を祭り上げた所でA層にもC層にも届かない。故に、放言は空中浮遊し虚しく響くだけで、ならばB層を使いこなす活動家の方がマシではないかと。自らの死を高く見積もっていたか、単に一人の生き様だったか。
同時代人が嫌いで、反時代人が好きだと三島由紀夫。時代に流されるだけの大衆が数の論理で過ちを犯すのは許せないが、自らは衆目に置かれて主張をしたい。愚行権は認めながら衆愚政治を許さぬ制度設計のように、非エリート層を諦めた上で、一体何を覚醒させようとしたのか。男一世一代の啖呵を切るも行動変容させるはずの決定打はミスり、自衛隊のガヤによってかき消され、言葉の音量が小さく聞こえやしない。そんな実務的なミスに命をかけて、何が残るというのか。
適菜は人間理性に懐疑的であるのが保守だと言う。いつからの保守、何に対する保守、いつまでの保守なのか。捉え方が変わるならば一意の定義は無駄だ。そこに時間をかけて意味があるか。逆バーナム効果のように、誰でも的を外し、安全圏から他者批判だけできるようなポジショントークが可能だ。批評家の話法に過ぎない気がした。卑怯だし、合理性もなく、無意味である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
保守とは何か。
僕は、いわゆる保守派とされる層とは折り合いが良くない。であるならすなわち革新であるのか。
しかしそうとも言えない。
本書でいう保守は、「いい悪いの前に、異物が来たらまず追い返す」「いかがわしいものを肌で察知する」ものであり、また伝統を、文化を守るものである。
であると僕は保守かもしれない。いやむしろ保守だ。
一方で保守派といわれる政治家は実のところ、こうした保守の理念は持たない。むしろ破壊者であろう。
本書はいわゆるB層と、それらが支持する破壊的政治家をこき下ろす。バカ、バカ、と。Bがつく言葉には悪意のあるものが多い。
保守の定義の前半と、安倍・橋本といった破壊者への批判の後半に別れる。書き方が上品ではない。絶対的であるべきだないといいながら絶対的な匂いが漂う。
こういう本は十分警戒して読まなければなるまい。ただ、それでも読まないよりいいかな、と思う。 -
豚による豚の支配 ミシマへの誤解、俺もBだな
-
人間理性に懐疑的であるのが保守
-
B層とは、郵政選挙の際に自民党が広告会社に作成させた企画書において、構造改革への支持とIQの高さの2軸で分け「構造改革に肯定的でIQが低い層」「具体的なことはわからないが、小泉のキャラクターを支持する層」と規定したもの。郵政選挙では、「改革なくして成長なし」「聖域なき構造改革」といったワンフレーズ・ポリティクスが集中的にぶつけられ、「郵政民営化に賛成か反対か」「改革派か抵抗勢力か」と単純化することにより、B層の票を集めた。これは、ナチスなどの全体主義政権下で確立された手法でもある。
ナチスは、ふわっとした民意にうまく乗り、既得権益を持つ人間という敵をでっち上げ、大衆のルサンチマンに火をつけ、社会に蔓延する悪意を吸収することにより拡大した。全体主義者の手口は、社会不安を煽り、弱者の情念を集約することで権力を一元化する。橋下はナチスより純粋な全体主義。大阪都構想の住民投票が通れば、「特別区設置協定書」に記載されていない事項の多くは市長により決定されることになっていた。個人が極端な形で分断されてしまった現代社会では、常識が消滅し、社会に偏在するあくが極端な形でつながってしまう。それが「橋下」という現象だったと著者は分析する。
ハンナ・アレントは「革命について」で、フランス革命を分析し、同情や平等の概念がテロリズムに行き着く構造を明かした。また、「民主主義と独裁の親近性は明確に示されていた」と指摘している。
ニーチェの「神は死んだ」は、世の中の人間は神は死んだと思っているかもしれないが、唯一神教の神は近代イデオロギーに化けて、我々を支配しているということ。ニーチェは、宗教一般を否定したわけではなく、キリスト教の根底にある反人間的なもの、真理が隠されており、真理を代弁する僧侶階級が権力を握ることを批判した。 -
三島由紀夫は正しく理解されていない。彼は「真っ当な保守」であり、民族主義、国家主義、愛国主義、国粋主義、軍国主義、全体主義、徴兵制、核武装を否定し、議会主義と言論の自由を守ろうとした。真っ当な保守は伝統・習慣を重視し、理性に懐疑的である。一方、B層は教養がなく、構造改革を妄信するバカ。B層が声援する安倍晋三は対米追従・売国路線であり、決して「保守」ではない。売国政治家に自称保守のB層が声援を送っているのが日本の現状。橋下徹もヒトラーと同じ手口。結局、怠惰で無知で愚鈍な人々が悪を放置してしまう。
-
「保守」と現在の日本の自称「保守派」は違うというところからはじまり、三島由紀夫の著作を援用しつつ、著者一流のB層批判、橋下元市長批判等が展開されます。
-
快刀乱麻の一冊。やはりよく考えたから発言しないといけないと切に思う
-
好き放題 言っているなぁ って感じ。