24時間 (講談社文庫 あ 72-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (594ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062732444

感想・レビュー・書評

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  • 米国のベストセラー作家による2000年発表のスリラーで、ストレートに「誘拐物」に挑んだ力作。身代金目当ての誘拐事件を扱うミステリは、警察/犯罪物を中心に数多いが、新たなアイデアを盛り込まなければ、過去作品の単なる焼き直しと評価されかねない。現代では堅牢なセキュリティシステムだけでなく、GPS機能搭載の携帯電話普及などにより、成功率は極めて低いため、犯罪者にとってはリスクが高い。さらに、幼い子どもの誘拐を扱う場合は物語のトーンは重くなるため、いかに娯楽小説として成立させるかが作家の腕の見せ所となる。

    若くして頭角を現した麻酔科医ジェニングス。出張した隙を突かれ、5歳の娘を誘拐された。家は山中にあり、近隣の住人は異常に気付かない。犯人は3人組。それぞれがジェニングス、妻カレン、娘アビーを引き離して監禁状態にした。主犯格の男ヒッキーは、仲間二人の定時連絡が途絶えた場合は即刻子どもを殺すと脅す。身代金受け渡し完了までを24時間で終えると告げ、同様の誘拐を年に一度、一人も死人を出すことなく過去4回成功させていると付け加えた。肝は、決して警察とFBIを介入させない狡猾なプランにあったが、ジェニングスのケースでは重要な見落としがあった。誘拐したアビーは小児糖尿病を患っていたのだった。この一点によって、ヒッキーの周到な筋書きに狂いが生じていく。

    本作も前半は概ね誘拐物の定型に倣っており、序盤ではパニックに陥ったジェニングス夫妻の焦燥と葛藤をメインとするが、中盤からはいかにして誘拐プランの穴を突き、娘を救出するか、という犯人との知恵比べに移行する。傲慢で強欲な犯罪者ヒッキーをどう打ち崩すか。

    文章は淡泊だが、簡潔でスピード感に溢れる。ハリウッド映画張りのクライマックスも、極めて映像的。案の定、映画化もされていた。人物造形やストーリー展開に意外性は無く、これまでの誘拐物にド派手な演出を施したという感じだ。一捻り加えた犯罪計画も、主犯の高慢さ故に破綻していくのだが、これも読者の倫理観を配慮した結果だろう。主人公が金持ちで救出に自家用飛行機を駆使するというのも、いかにもアメリカ的。ヒッキーの仲間となる無垢な大男と誘拐された少女が次第に心を通わせるさまを「美女と野獣」になぞらえるなど、娯楽小説のツボは過不足なく押さえている。
    ただ、安心して読めるのは良しとしても、あまりにも毒がない。読み終えた後に、なにも残らない。家族の絆は何よりも強く、卑しい者はどこまでも卑しい。この型通りのアウトラインに物足りなさを覚えたからだろう。

  • 誘拐もので、犯人と被害者の主人公との対決である。
    犯人は毎年誘拐を行い、5回も捕まらず身代金を手にしてきたプログループであるが、今回は計画通りにいかず、両者の心理作戦がかわされる。
    24時間内の出来事を息もつかせずはらはらしながら読ませるところはすごいと思う。
    結末はあっけなかったが、人の感情は計算できないものだと思わせる作品である。

  • 一気に読ませてしまうノンストップスリラーでした
    グレッグ・アイルズに外れなしです
    主人公の娘が可愛くて泣けました

  • 裕福な医者が、学会などで家族と離れたときに起こる、子供の誘拐事件。その手口は従来とは違った手法で、犯人は過去に四度の成功をしてきた。そして、五度目の誘拐を行ったとき、それはいつもと違った動機が混じったためか、それとも完全犯罪はありえないという証明なのか、医者である夫、妻、誘拐された子供、過去の事件の当事者などがそれぞれ動き出した結果、新たな様相を見せ始める誘拐事件。

    妻と子供を持つ身として、考えさせられる一方、物語のおもしろさ-犯人や被害者の心理描写-に引き寄せられた作品。久しぶりに通勤電車の細切れ時間だけでなく、家に帰ってからも読み続けて読了したくなる作品でした

  • 私にとって「神の狩人」以来のグレッグ・アイルス2冊目。
    3人(夫・妻・子供)家族の各々に、犯人グループの3人がそれぞれ迫る。3つの細かい場面描写が読み手を一気にサスペンスの世界へ引き込んでいく前半が実に面白い。
    FBIの登場、自家用飛行機での追跡、インターステートでの強引な着陸。後半、物語は一気にアメリカならでは、ハリウッド映画を見ているように展開していく。

    飽きさせず、本編通して楽しめる小説だと思う。
    できれば、後半も前半同様淡々と話を進めて欲しかったけど。

  • 2001年9月15日初版 1086円税別。ISBN4062732440
    【ストーリー】
    年次医学大会出席のため家を空けた麻酔医ウィルの妻子の元に魔の手が伸びる。身代金誘拐犯は家族を分断し一夜を明かそうとするが、5歳の娘アビーは小児糖尿病を患っているので早急な処置が必要である。犯人グループと一家の攻防が続く。

    【感想】
    映画『コール』の原作。映画の方、最初とてもスリルがあって面白くて終盤になるほどハリウッドアクションものになってしまってちょっと違うな〜〜と思ってたのですが、原作はもうちょっといいよって母が言ってたので読んでみたら大体同じでした。
    まあ、大体ありがちな設定なのかも。ちょっと映画『パニック・ルーム』を思い出す。
    なかなか誘拐の設定が考えてはあるけど。ストーリー自体はこの作者の本の中ではそんな感銘を受けないけれど、たまに見せるエピソードがやはり一瞬泣けたりする。アビーとヒューイのやりとりと、ヒューイとジョー(ヒッキー)の結末とかが、何気に心に残りました。

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