アフターダーク (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062755191

作品紹介・あらすじ

時計の針が深夜零時を指すほんの少し前、都会にあるファミレスで熱心に本を読んでいる女性がいた。フード付きパーカにブルージーンズという姿の彼女のもとに、ひとりの男性が近づいて声をかける。そして、同じ時刻、ある視線が、もう一人の若い女性をとらえる-。新しい小説世界に向かう、村上春樹の長編。

感想・レビュー・書評

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  • 初めて村上春樹を読んだが、残念なことにまったく好みじゃなかった。
    しかしこれは他の作品とは少し毛色が違うらしいので、これに懲りずに他の作品も読んでみたい。

  • BGMのような作品。それなりに雰囲気は楽しめる。

  • とても好きなタイプの物語だった。深夜に読みたくなる。登場人物も高橋くん、カオルさん、マリ等なかなか魅力的。
    古書店で出会った本。電車の中で、公園で、色んな場所で読んだ自分の記憶とも結びついている。
    物語の世界観も温度感も好き。

    文庫268ページ、AM 5:24の描写が読んでいてかなり気に入った。

    以下引用

    夜の最後の闇が、都会を薄皮のように包んでいる。ごみの回収車が路上に姿を見せ始めている。それとほぼ入れ違いに、都会のあちこちで一夜を過ごした人々が、駅に向かって歩を運び始める。流れを遡上する魚の群れのように、彼らは一様に始発電車を目指している。 終夜の仕事をようやく終えた人々、徹夜で遊び疲れた若者たちーー立場や資格こそ違え、彼らはおしなべて寡黙だ。飲み物の自動販売機の前でぴったりと身を寄せあっている若いカップルでさえ、今はもう語り合う言葉を持たない。二人は残っている身体の微かなぬくもりを、無言のうちに分け合っているだけだ。
    新しい一日がすぐ近くまでやって来ているが、古い一日もまだ重い裾を引きずっている。海の水と川の水が河口で勢いを争うように、新しい時間と古い時間がせめぎ合い入り混じる。自分の重心が今どちら側の世界にあるのか、高橋にもうまく見定めることができない。

  • 真夜中から少しずつ夜が明けていくその雰囲気がとても良かった。
    何かが起こりそうなのに結局何にも起こらない。
    なんだかいろんな想像を掻き立たせるそんな世界観が自分好みでした。
    自分は基本的に朝型人間なんで夜は大抵ぐっすり眠ってるんだけどたまには夜の街を歩いてみたくなった。

  • 夜の表現とかは巧みだったけど、なんか今一歩進展が足りないというか、物足りなさが残った。
    けど人間は記憶を燃料にしてるというのは印象的。
    辛いときは嬉しかったことや今よりしんどかったことを思い出して、乗り越えてる。
    裁判所は深海のタコ、夜が明けていく感じはナイス

  • なんかいつもの村上春樹と違う感じ。設定も、ラブホテルが出てきて馴染みにくい。途中のマリと男の子の掛け合いも、なんかくどく感じた。村上作品でめんどくさいと思ったのは初めて。

  • これも調べてみたら『他の作品と毛色が違う』というのを見かけて、気になったので読んでみた。

    確かに毛色が違うが、基本的なものは変わっていない。

    マリという少女の過ごす一夜が書かれている。
    マリが高橋という男の子に会って、その縁で中国人の女の子がラブホでトラブっているのを助ける。その後、高橋と話したり、ラブホのスタッフと話したりして、一夜を明かす。
    というストーリーラインが一つ。

    もう一つマリの姉エリが眠っていて、起きるというよく分からないエリのストーリーが絡む。


    さらにここに、中国人の女の子のトラブル相手の白川のストーリーも絡む。が、この白川のストーリーは女の子から奪った携帯電話をコンビニに放置して、それを高橋が拾ってしまう……という絡みしかしない。なのに、長々と仕事のシーンなどが差し込まれている。



    ・意味の分からないシーン(エリのシーンはほぼ意味が分からない)が多い。
    ・音楽が差し込まれるが、それが示している意味が分からない。

    という点においてはいつもの村上春樹だなと思った。

    エリのシーンは意味が分からないと書いたが、アレが『現実のような夢』という意味ならば、いつものような『夢』をテーマにした作品なのだろうなと思う。厄介なのは、何だか分からないままに物語が進むのでエリのパートも後から何か事件になるのだろうか?と思ってしまった事。

    何も起きずに朝になってしまったのには笑ってしまった。



    起きた事件と言えば、中国人の女の子のトラブルぐらいだろうか。いや。細かい点では色々と起きているけど、どうせなら朝までに白川が殺されているというような話を読みたかった。

    物語の中では、白川は殺されない。エリは目覚めない。マリは朝になると真面目に家に帰る。

    不良を書きたかったのかもしれないが、おそらく村上春樹の中にそのストックはないのだろう。どこまでも『真面目』でしかない。読んでいても、中途半端な不良に違和感しかなかった。全てのキャラが『夜の街にいる』には真面目過ぎる。


    主人公のマリもだが、高橋という男の子も……というか、男の子ならもう少し危険な目に合っていてスレてそうな気がするのだけど。エロい下ネタは言えるケド、気に入った女の子を無理やりどうこうしようという意気込みはない。

    つまり真面目。


    ラブホスタッフも基本的には堅気で、スレてないというキャラになっている気がする。



    女の子が暴力を振るわれていた……というシーンはあるケド、暴力を振るわれてる最中の描写はない。



    エログロのない……でも多少の下ネタはある作品。
    それでも私が、村上春樹作品を好きになる事はないけど



    これも同じく『眠り』や『夢』がベースの物語にしか見えなかった。
    そして、説明的な台詞回しに違和感しかない。不良というものが出てくるけど、不良っぽくない。天の高みから闇を眺めて感じがする。

    脇役っぽい『コオロギ』や『コムギ』のラブホスタッフキャラはおちゃらけすぎ。



    夢の解釈は人それぞれなのだろうけど、私はもうこの人の作品の夢の解釈はしたくない。闇は薄い。

    帰る家があるマリと帰る場所がないコオロギを対比させるのか。
    姉がいるマリと兄弟のいない高橋を対比させるのか。
    か弱いマリと力強いカオル(元プロレスラー)を対比させるのか。
    起きていて事件が起こるマリと、眠ったまま何も起きないエリを対比させるのか。
    お金の心配のないマリとお金のために身を売る中国人を対比させるのか。
    暴力を振るうことのないマリと暴力を振るった白川を対比させるのか。

    どれも、対比させるには情報が足りず『なんだかわからないけど』すごいよね。可哀想だよね。強そうだよね。で終わる。


    圧倒的に情報が足りない。闇は光があってこそ、存在するが、光と思われるマリの存在はとても薄い。


    家があって家族がいて、明日の心配をしなくて良くて、親はすっかり娘を信頼しているから帰って来なくても気にしない。それ、放任って言うんだぞ。一人暮らしならいざ知らず、親と同居で『夜に友達の家に泊まる』のを安易に信じるのか。まして、女の子の親だろ。成人済みなら分かるが、まだ未成年の年齢なのに。としか、思えなかった。

    しかも、携帯を持ってない……ありえない。最低限、携帯を持たせて相手の家に連絡を入れてから許可ではないのか。

    娘を持つ親の不安はスルーされているのもモヤっとする。虐待家庭だから、こうなのだと言われた方がマシだが、そうなるとマリもまた光にはなり得ない事になる。



    こういうところが、嫌いなんだ。

  • さらっと読んだ。
    深夜のファミレスに行きたくなった。

  • 夜の7時間の間の出来事をいろんな視点から描いた作品。コオロギとの会話のシーン。「人間ゆうのは、記憶を燃料にして生きていく〜」という言葉が印象に残った。ラストは夜明けのシーンということもあり、明るい未来を感じさせる雰囲気を感じた。

  • 一人の少女の一晩の数々の出会いと、出会った人々の人生について。全てを語ることなく、曖昧だったり理由もわからない、その後もわからないまま終わったけれど、彼の紡ぐ言葉にはどうにも私は惹きつけられてしまう。言葉選びが好きだなあ。それぞれ色々なものを抱えているし、自信もないし希望だってあるような無いような。だけどそれって今を生きる私たちも同じだよなあ。それぞれの未来が明るくなればいいと思った。謎は多いけど。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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