- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062761420
感想・レビュー・書評
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賛否両論のようですが個人的にはヒット!な作品。
特殊な力を手に入れた男性が主人公の「魔王」と、その弟を妻の視点から描いた「呼吸」の2編による構成。
1度読んだだけでは作品の意図するところが分かり難いけれど政治、ファシズムをテーマに独自の視点で、読みやすく仕上げられています。
「ごきげんよう、おひさしぶり」には笑えます。
「死神の精度」の千葉さんが出てきているのも、なんだか嬉しい。
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すっきりとする内容ではなかったが、競馬の話が出たとき、「重力ピエロ」の春のお母さんのくだりを想像したが関連はなさそうではあった。
この世の中は便利になり過ぎている。
「栄養ドリンクも、ライブのチケットも、電球だとか避妊具もコンビニで、味気ない。コンビニで売ってないようなものを買いたくなったんだ。じゃないと何だか、コンビニに支配されているみたいだし」
「もし万が一、おまえの考えが、そこらのインターネットで得た知識や評論家の物言いの焼き回しだったら、俺は、お前に幻滅する。おまえは、おまえが誰かのパクリではないことを証明しろ」
あたかも自分の言葉のように話しているが、これは誰かの情報操作により、発しているのではないだろうか。まるで安藤の力のように。この世は見えない何かに支配されているのかもしれない。 -
正直難しかった。読みながら思考があちこちにいってしまうし、今自分が考えていることが、自分で考えていることなのかもあやふやでとても不穏な感情になった。インターネットが普及して、嫌でも色々な情報が目に映る。その情報が本当かどうか、どこまでを明記しているのかも当事者じゃなければわからない。現代社会で生活するにあたって安藤兄弟の生き方は極端ではあるが、充分我々にも与えられた選択肢のようにも思える。レビューってなんだろな。
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「相手を言い負かして幸せになるのは、自分だけだってことに気づいてないんだよ」(潤也)
「スカートがめくれてるのくらいは直してあげられるような、まあ、それは無理でも、スカートを直してあげたい、と思うことくらいはできる人間ではいたいなって、思うんだよね」(蜜代)
グラスホッパーでもそうだったけど群集心理は怖い。 -
小学生のころ初めてシューベルトの魔王を聞いてぞっとした事を思い出しました。考えることがいかに大切か考えさせられました。今モダンタイムスを読んでるので終わったらもう1回読んでみようかなと思います。政治や難しいことがたくさん書いてあるけど、あたしもあたしなりにお兄さんのように考えてみます。考えろ、考えろ、マクガイバー。そしてささやかでいいから、スカートを直す人間になりたい。
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兄の視点で書かれた「魔王」と、弟の妻の視点で書かれた「呼吸」の連作。主テーマではないけれど憲法改正という言葉が何度も出てくる。2004-2005年に書かれた作品ながら、今の時代を描いているよう。伊坂作品は出版された順に読むといいと言われて順番に読んでいるけれど、ここにきてなるほどと納得した。前の作品を読んでいるかどうかで、訪れる感覚が違うとおもう。
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これを読んでいた時期は、維新の会が破竹の勢いで大阪府民にセンセーショナルなインパクトを与え、中国や韓国との領土問題が表立ち、日本国民が愛国心を大きく声に出した珍しい時であり、現実とリンクするような感覚で小説の中の出来事だと片付ける事なく、深く考える事が出来た。
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ひっさしぶりに伊坂作品読んだけど、
やっぱすごいおもしろい。軽快で痛切。
私は重力ピエロが好きだから、
この話に出てくる兄弟愛もだいぶ好みで、
互いを信頼し合って尊重し合って、な関係に胸の奥熱くなります。
『猛禽類の定点調査』にものすごい魅力を感じちゃったので、
今の仕事に限界感じたら転職しよっと。
次、モダンタイムス行きます! -
兄弟が持った特殊能力。自分の思ったことを他人に言わせる能力と、10個ぐらいの選択肢なら、自分の選んだ奴が最良になる能力。前者はともかくも、後者はそれぐらいしか使い道ないよな。自分でもそうする。能力ないけど。