魔王 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.37
  • (1130)
  • (2775)
  • (4349)
  • (1041)
  • (217)
本棚登録 : 29484
感想 : 2232
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062761420

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 賛否両論のようですが個人的にはヒット!な作品。

    特殊な力を手に入れた男性が主人公の「魔王」と、その弟を妻の視点から描いた「呼吸」の2編による構成。

    1度読んだだけでは作品の意図するところが分かり難いけれど政治、ファシズムをテーマに独自の視点で、読みやすく仕上げられています。

    「ごきげんよう、おひさしぶり」には笑えます。

    「死神の精度」の千葉さんが出てきているのも、なんだか嬉しい。

  • すっきりとする内容ではなかったが、競馬の話が出たとき、「重力ピエロ」の春のお母さんのくだりを想像したが関連はなさそうではあった。

    この世の中は便利になり過ぎている。

    「栄養ドリンクも、ライブのチケットも、電球だとか避妊具もコンビニで、味気ない。コンビニで売ってないようなものを買いたくなったんだ。じゃないと何だか、コンビニに支配されているみたいだし」

    「もし万が一、おまえの考えが、そこらのインターネットで得た知識や評論家の物言いの焼き回しだったら、俺は、お前に幻滅する。おまえは、おまえが誰かのパクリではないことを証明しろ」

    あたかも自分の言葉のように話しているが、これは誰かの情報操作により、発しているのではないだろうか。まるで安藤の力のように。この世は見えない何かに支配されているのかもしれない。

  • 正直難しかった。読みながら思考があちこちにいってしまうし、今自分が考えていることが、自分で考えていることなのかもあやふやでとても不穏な感情になった。インターネットが普及して、嫌でも色々な情報が目に映る。その情報が本当かどうか、どこまでを明記しているのかも当事者じゃなければわからない。現代社会で生活するにあたって安藤兄弟の生き方は極端ではあるが、充分我々にも与えられた選択肢のようにも思える。レビューってなんだろな。

  • 不思議な本だった。

    何より不思議だったのは安藤兄弟の不思議な能力よりも、本作「魔王」の単行本が発売されたのが2005年10月だが、初出は2004年12月。

    小泉自民党が郵政改革を叫び、歴史的な圧勝を収めたのは2005年9月11日で、この選挙で与党は戦後初の衆議院で2/3位上の議席(改憲を可能にする議席数)を確保したという事実。

    本作では新しいリーダー、改憲や、ファシズムなどの政治色も色濃く描かれているが、本作はまるで未来を予想していたかのような作品であった。

    著者の洞察力というか、感覚こそがまさに「魔王」だと感じた。

    説明
    内容紹介
    魔王とは何者なのか?魔王はどこにいるのか?
    世の中の流れに立ち向かおうとした兄弟の物語。

    会社員の安藤は弟の潤也と2人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、1人の男に近づいていった。5年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語。
    内容(「BOOK」データベースより)
    会社員の安藤は弟の潤也と二人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、一人の男に近づいていった。五年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語。

  • 「相手を言い負かして幸せになるのは、自分だけだってことに気づいてないんだよ」(潤也)

    「スカートがめくれてるのくらいは直してあげられるような、まあ、それは無理でも、スカートを直してあげたい、と思うことくらいはできる人間ではいたいなって、思うんだよね」(蜜代)


    グラスホッパーでもそうだったけど群集心理は怖い。

  • 小学生のころ初めてシューベルトの魔王を聞いてぞっとした事を思い出しました。考えることがいかに大切か考えさせられました。今モダンタイムスを読んでるので終わったらもう1回読んでみようかなと思います。政治や難しいことがたくさん書いてあるけど、あたしもあたしなりにお兄さんのように考えてみます。考えろ、考えろ、マクガイバー。そしてささやかでいいから、スカートを直す人間になりたい。

  • 兄の視点で書かれた「魔王」と、弟の妻の視点で書かれた「呼吸」の連作。主テーマではないけれど憲法改正という言葉が何度も出てくる。2004-2005年に書かれた作品ながら、今の時代を描いているよう。伊坂作品は出版された順に読むといいと言われて順番に読んでいるけれど、ここにきてなるほどと納得した。前の作品を読んでいるかどうかで、訪れる感覚が違うとおもう。

  • これを読んでいた時期は、維新の会が破竹の勢いで大阪府民にセンセーショナルなインパクトを与え、中国や韓国との領土問題が表立ち、日本国民が愛国心を大きく声に出した珍しい時であり、現実とリンクするような感覚で小説の中の出来事だと片付ける事なく、深く考える事が出来た。

  • ひっさしぶりに伊坂作品読んだけど、
    やっぱすごいおもしろい。軽快で痛切。

    私は重力ピエロが好きだから、
    この話に出てくる兄弟愛もだいぶ好みで、
    互いを信頼し合って尊重し合って、な関係に胸の奥熱くなります。

    『猛禽類の定点調査』にものすごい魅力を感じちゃったので、
    今の仕事に限界感じたら転職しよっと。

    次、モダンタイムス行きます!

  • 兄弟が持った特殊能力。自分の思ったことを他人に言わせる能力と、10個ぐらいの選択肢なら、自分の選んだ奴が最良になる能力。前者はともかくも、後者はそれぐらいしか使い道ないよな。自分でもそうする。能力ないけど。

全2232件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

伊坂幸太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×