- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062762601
感想・レビュー・書評
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この本は白洲次郎の伝記的小説ではあるけれど、日本国憲法(象徴天皇)、日米講和、日米安保の背景を知ることができるとてもよい歴史教科書だと思う。
そう思えるのも、これらをまとめるために次郎が深く貢献しているからに他ならない。
これだけ日本の復興と外交政策について「今」どうあるべきかを考え、実行して来たにも関わらず、結局大臣にもならず、公職にも就かなかった。
そうしなくても一国の総理を動かし、国の舵取りをできるのだから、金や権力が欲しいのでなければそんな必要は無かったのだろう。
坂本龍馬や勝海舟と同じダンディズムを感じる。
しかし歴史や物語はケイディスのようなヒール役が登場すると俄然ドラマティックになるものだな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小説を読んだ限りでは、現在の日本の政治の舞台にも、次郎のような存在が必要であると感じる。
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前巻でGHQ案の新憲法の受け入れを強要され、煮汁を飲まされた白洲は、自国の憲法すら自ら決められないという敗戦国である事実がいかに厳しいものであるかを肌身を以って思い知らされた。その後、白洲は。吉田茂の側近として復興を支えることとなる。そして、占領からの開放に向けて再び、米側との交渉が始まる。日米安保、在日米軍、沖縄などの現在様々な議論が交わされる日本の外交を取り巻く秩序はこの時期に形成される。当時の、米国本国におけるソ連、中国の脅威に端を発する長期占領論や、一刻も早い主権回復の必要性などを考えると当時の決断は必然とも言える。ここでも、白洲は吉田茂の快刀として米側との水面下の交渉を行う。
表紙カバーのようにダンディで紳士なイメージとは裏腹に、逆鱗に触れると、馬鹿野郎、とべらんめぇ口調で、相手を恫喝するかのごとく叱り飛ばしたという。日本のエスタブリッシュメントである裕福な家柄に生まれながら、私利私欲に溺れず、プリンシプルを常に曲げずに、国のために尽くした白洲のような人物が今の政治家にはいないのであろうか。 -
白洲次郎自身の人柄とかエピソードには興味があるのだが、政治の話がなかなか入ってこなくてページが進まず読み終るまで時間がかかった。
混沌とする時代をとても痛快な言動で駆け抜けた素敵な人。時代を読むセンスとか学ぶものは多い。 -
初読
白州次郎エピソードも面白いんだけど、下巻は
ケーディスと鳥尾子爵夫人ツーちゃんの恋に釘付けw
元子爵夫人にして、その後別の政治家の愛人になってたり
興味深過ぎるでしょ
吉田茂が調印式の時ケアンテリアのつがいを買って帰って
サンとフランと名付けたとは知らなんだ -
サンフランシスコ講和条約を締結して再独立を果たした我が国。白州次郎は吉田茂の黒子として、GHQ との激しい攻防戦を繰り広げ、時に煮え湯を飲まされるが、不屈の精神で切り抜けて行く。型破りな人物だが、上司としてはどうだろう。波長が合えば最高の上司かも。。
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前半と違って白州次郎さん以外の主要登場人物のドラマが盛り込んであったためフィクションみたいな部分が感じられた。後半のサンフランシスコ講和条約のあたりは臨場感たっぷり、激闘ぶりが次郎さんの活躍を、物語っていた。沖縄の占領をみとめたあたりは 早く自立して独立国家体制に持っていきたい意向から 吉田茂首相の早期決断によって不条理なまま今も続いてる。 この点では私が知る吉田首相の評価はぐっとさがった。 沖縄問題は吉田さんの判断ミスではないが戦後ずっとひっぱている問題。 次郎さんの悔しさ がわかる気がする。 白洲さんが今の時代生きていたらすぐに東電も解体し、また、集団的自衛権を反対しているであろうと思う。 最後の桜井よしこさんの解説には不満残る意見文章。どうもこの方の解説は個人的には不満がいつも残る。
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下巻は上巻と異なり、きちんと書かれている。白洲次郎の奮闘ぶり、ディシプリンをベースにした行動に自分を振り返る。
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下巻は戦後日本の父・吉田茂とともに、経済復興を進めていくフィクサーとしての白州次郎像が見えてくる。公職には就かず、あくまで民間人として日本経済の発展を考え、国際的な交易によって国富を増価させていく通商産業省の設立、あらゆる産業の根幹となる電力の安定供給といった、現代にも通じる政策課題を手がけていった。
サンフランシスコ講和条約において、外務省幹部の書いた英文でのスピーチ草稿を破り捨て、「独立国として自国の言語で堂々と講演せよ」と、30mにも及ぶ巻き紙に毛筆で書いたスピーチを吉田茂に読ませた下りは圧巻である。
個人としてのプリンシプルから、国家としてのプリンシプルへ。現代の日本人にとって足りない要素がここにはある。