- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062763998
作品紹介・あらすじ
なぜ日本の子どもたちは勉強を、若者は仕事をしなくなったのか。だれもが目を背けたいこの事実を、真っ向から受け止めて、鮮やかに解き明かす怪書。「自己決定論」はどこが間違いなのか?「格差」の正体とは何か?目からウロコの教育論、ついに文庫化。「勉強って何に役立つの?」とはもう言わせない。
感想・レビュー・書評
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当座の報酬の期待値の低さ・不確定性に対し、経済合理性の下、消費者マインドで「こんなん何になるんだよ」と突っぱねちゃうのがニートと不登校、つまり労働や学びの拒否の始まり。
その曖昧さや不確定性に対して「きっとなにかになるはず」と、気長かつ楽観的・期待的に身を投じて、労苦を負って行くこと。そして自己の不確定な変化という性質を認め、受け入れ、期待し、勘定に入れた上で学びに向かうこと。それらの勇気ある殊勝な態度が知性。
また「自身の存立」時点で社会や周囲の人間から受けてきた恩義、つまりは贈与に負い目を認められ、その反対給付義務意識に駆られて積極的に労働という(返報)贈与を社会に行っていくこと。それこそ伝統的人間らしさ・文化人類学的知見に合致する労働者マインドであり、労働の倫理・哲学・美学である。
※ただこの倫理に関しては(薄給なだけならともかく)ハラスメントや長時間労働強制、肉体的・心理的安全性侵害が横行するような、日本に跋扈するブラック職場では成立しないと思うけど(2005年の本だししゃーなし?)。
含蓄が多い本だと感じました。
勇気と忍耐のある、道徳的な内発的動機づけに強く意志付けられた人間になりてぇ。詳細をみるコメント1件をすべて表示-
ゆうさん確かにリスクヘッジ全然できてへんなぁ。ぶっちゃけ絶望しか無いから、さらにリスクのこと、それに立ち向かうことを考えるだけでもしんどいわ。確かにリスクヘッジ全然できてへんなぁ。ぶっちゃけ絶望しか無いから、さらにリスクのこと、それに立ち向かうことを考えるだけでもしんどいわ。2024/02/12
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自分も含めてですが、コスパよく結果がでることや収入が得れるというのが一般的な時代になっています。そんな時だからこそ本書で述べられている
教育という本質的な部分は忘れてはならないと感じました。親と子で学ぶ。なぜ勉強するか?そこは問わずに楽しいよね?学ぶって出来るってという変化をしっかりとみてあげること。子どもも含めて感謝をする。人間として大事な教育という土台をもう一回作り直して現行にも活かせる一冊だと感じました。 -
冒頭の事例は「事実の一部」、「メディアで変に強調されているところだけ」を基にしているように思われたけど、「消費主体」という視点にはかなり納得。そしてリスクヘッジの意味を再認識させられた。
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「どうして勉強しなくちゃいけないの?」
こういった子供の問いに、大人として最適なふるまいとは『絶句』してそのような問いは「ありえない」と斥けることだと著者は主張しています。
なぜなら、その答えを教師から引き出すという体験によって、子どもがあるゆることにおいて自分に有益そうならやるし、気に入らなければやらないという採否の基準を身体化した『等価交換する子ども』になってしまうからだと言います。
それは子どもたちが「家で労働する」という体験から自己形成をする機会がなくなり、その代わり早い時期から消費活動への参加を促されていることに原因があるとのことで、その説明は納得するところもあるのですが、平和で豊かな生活を送る日本の子どもが、勉強の意義を考えることがそんなに悪なのでしょうか?とも考えてしまいます。私もなんとなく考えたことあったと思うし。
そんな質問に教師として「答えがない問いに答える必要はない」と斥けるのは、「つべこべ言わずにやれ」という昭和の感覚をよっぽど引きずっているのではとも思ってしまいます。
「君は歴史で習った、戦時中の子どもの話を聞いてどう思った?これがその質問の答えになると思うから、一度自分で考えて、あとで先生に教えて」
みたいな子どもに気付きや考える力をサポートするのが最適なのでは。
ちょっと自分と意見が違うけど、子供をとりまく教育、家庭の構造がわかって面白かったし、色々考えるきっかけになりました。また読みたいです。
ちなみにこのあと『ドラゴン桜2』を読むと、なかなか味わい深くなります。「考えるな!動け!」 -
学ぶことができるという環境を放棄している日本の子どもたち。納得のいく内容でした。
生産と消費がかけ離れ、生産することへの尊敬と感謝が失われている日本社会。たくさん消費することが良いライフスタイルであることのように報じられるメディア。日本はどうなっていくのでしょう。 -
再読はしないけど、一度は読んで良かったと思う本。特に転職を繰り返す人の件は、自分自身がそうなので納得感があった。
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面白かった。
本人も書いておられるように「ずいぶん力んで書いている」力作であります。
消費者として全てを同時性の中で生き、世の中を等価交換で見る体質。
こういったことが学びを馬鹿にし、労働を無意味なものと見る価値観に結びつくと見る。
解明していく際の気押される程の勢いある文章に引き込まれて行く。
学校内の状況は改善はされてきているのだろうか。
ニートの数は減少しているのだろうか。
外からは見えない隠れた部分。実態を知る術が無いが、良くなってきていることを望む。
対談部分は文庫化に際して削っても良かった気がする。何か著者にもしがらみがあるのかも知れないが… -
著者の的確な視点から見つめる現代の教育、改善点、問題は山積みであるが、やるべきことが明確になった。
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今まで読んだ中でベスト・オブ・ベスト。
ウチダイズムの原理というか、ベースを知れた=社会の構造。
如何にして社会的上層と下層の差が生まれているのかそしてその原因は何なのかを考えさせられる書籍である。個人主義がいかに恐ろしい思想であるか。
そしてすべて個々人に降りかかるという、良い意味でも悪い意味でも。
勉強を放棄してもそれは将来の自分が連帯保証人として存在する。