首無の如き祟るもの (講談社文庫)

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著者 : 三津田信三
  • 講談社 (2010年5月14日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062766456

首無の如き祟るもの (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 本当は★★★★★★。
    久しぶりにミステリらしいミステリを存分に堪能しました。

    関東の奥多摩の奥深く媛首村(ひめかみむら)での神事で起こった事件。それを機に過去からの因縁に呪われたように発するさらなる事件。さて、その真相は。

    「淡首様(あおくびさま)」という祟り神を祭り、「首無(くびなし)」という怪異を畏れる村で起こる殺人。横溝正史的な世界観のフレームでありながら、骨子は新本格という傑作。
    『首無の如き祟るもの』というタイトルから、ミステリがお好きな方なら「ははぁーん、あのネタかな」と察するところはおありでしょうが、そう一筋縄にはいかないところが嬉しい。
    一応、僕もセオリーに則っていろいろ考えるのですが、それではあれとあれが繋がらない。ご丁寧に作中でも探偵小説講義として、ひとつひとつの可能性を検証し潰していってくれるのが歯痒くもあり面白い。

    しかし終盤、オセロの単純な一手によって、真っ黒だった盤面がパタパタと音を立てて、一面真っ白に裏返ってゆくような快感。やられました。

    ホラーとミステリのバランスも絶妙ですが、おどろおどろしいムードが単なる雰囲気作りではなく、ミステリの肝に必然的にリンクしているのがいい。解釈としては怪奇的に思えるエンディングも、きちんと考えればロジカルであるのもすばらしい。

    『宝石』『ロック』『ぷろふいる』や『江川蘭子』など、探偵小説好きにはわくわくするキーワードもいっぱい。雰囲気、伏線、トリック、どれをとっても抜群。
    三津田信三のこのシリーズ。遅ればせながらいいものに出会いました。ドキドキしながら追っかけてみようと思います。

  • ホラーとミステリーが巧く融合しています。フェアでトリッキーな書きっぷりが見事です。
    終盤、掛け違いだったボタンを直すような仮説を立てるだけで多くの謎が綺麗に解かれていくさまは、かなりのカタルシスを得られます。首切り死体ものの金字塔としてミステリー史に燦然と輝く傑作と言っても過言ではないでしょう。

  • 美しいからくりに首ったけ
     刀城言耶シリーズの3作目。私は前作は未読ですが、それぞれ独立した物語ということで問題ないと思います。少し読みにくさはありますが、前作の方がより難解だそう。
     ホラー街道まっしぐらかなと想像してましたが、連続殺人犯は誰か(Who)、複雑怪奇な密室への出入り方法は(How)、不可解な被害者の謎(Why)、と幾つもの疑問が提示され、読者への挑戦とも取れる章もあり、むしろ本格派のど真ん中。それでいて「怪異の伝承」が真相解明において、切っても切れない関係になっているのが見事です。
     首を切断する理由について、ずらりと書き連ねてあるのもまた一興。意味がないようでいて、実はどれかに当て嵌まるのか、それとも全く別の犯人の思惑が?・・・真実を知った時は思わず膝を打ちました。
     首無しミステリの歴史に名を刻んだのは間違いありません。全体で見ても、非常に重厚な作りです。

  • さて、まず何から書こうか、と迷うほど色々と詰め込まれているのがこの作品の特徴だ。
    一つ断言できるのは、おそらくここ十数年のミステリの中でも指折りの傑作の一つであることだろう。僕が読んだミステリの中でもこれに並ぶのは京極夏彦の『絡新婦の理』か有栖川有栖の『双頭の悪魔』くらいではないかと思う。実績としては本格ミステリ大賞でその有栖川有栖の『女王国の城』に大賞を譲り次点に収まっているのだが、『女王国の城』は確かに傑作だがシリーズとしての強みが大きく働いていたことを考えると、同じシリーズ物(刀城言耶シリーズ)とはいえ前作の知識を全く必要としない異質の今作は単独作品として捉えるべきだと思う(ちなみに僕は他の刀城言耶シリーズは未読だが完全に不都合なく楽しめている)し、そう考えればこの『首無の如き祟るもの』は大賞を凌駕している。

    上記のあらすじでは横溝的な舞台であることは解るがあまりに情報不足なので、簡単にあらすじを書いておきたい。

    この小説はメタ視点を大いに利用した構造になっている。まず最初の『編集の記』も作品の一部であることに留意して読み進めるのがいいだろう。個人的には目次の後に挿入して欲しかったのだが、まあその辺りはあまり深く語ってもしょうがないのでスルーで。
    さてこの小説がメタ的というのは、まず媛之森妙元という作家の書いた小説の原稿の序文から始まるからだ。つまり作中作として物語が進行することが説明される。

    この説明としての序文は、媛首村という村で実際に起きた二つの未解決事件を小説として書くことで読者に謎を解いてもらいたいという体で配置された章で、そのためにまず高屋敷元巡査という媛之森妙元(本名 高屋敷妙子)の亡くなった夫の視点と、事件に内側から関わることとなる斧高少年の視点で交互に書かれているという説明がなされている。

    そこから二つの事件を時間軸順に二つの視点で描かれた小説として語り、その謎の解答を持ってクライマックスを迎えるという構造になっている。
    まあこの構造には非常に多くの伏線が仕込まれていて、単純に作中作とその解答でその全てが構成されているとはとても言えないのが面白いところであり、これは実際に読んでみてほしいところだ。

    内容としては、簡単に述べれば、奥多摩にある媛首村の首切り連続殺人事件が未解決に終わった経緯と、その真相についてのミステリ史上に残るレベルと思われる怒涛のどんでん返しの連続ということになるだろう。

    さて、その媛首村にはかつて首を斬られて死んだ女の怨霊である淡首様の伝説が語られ続けていた。そして謎の怪異である首無しもそのホラー的雰囲気に欠かせない存在だ。舞台になるのは淡首様に祟られているという奥多摩の村の大地主「秘守家」だ。秘守家には子供が十三歳になると行う「十三夜参り」という儀式があり、その十三夜参りの夜に第一の事件が起きる。本家跡取り長寿郎の後に儀式に向かった双子の妹である妃女子が井戸で変死したのだ。そして従者の斧高は謎の首無し女を目撃する。
    更に十年後に第二の事件が起きる。成人した跡取りの長寿郎は、集められた三人の花嫁候補から一人の花嫁を選ぶ「婚舎の集い」を行うこととなる。そんな中、首無し死体が発見され、事件は秘守家の存亡も関わる混乱に陥ることになる。そして更に首無し死体がされていき……


    と、まああらすじはこんなところ。
    ネタバレを避けようとするとここらが限界だ。正直この小説は表表紙を開いてから物語が終わるまで油断のできない伏線の塊のような小説だ。
    作中作が巧妙に構造上・物語上の二転三転する驚愕の展開に寄与していて、素晴らしいテクニックの美を感じさせるところだ。

    作中には4重の密室や首無し死体の謎といったもの以外にも、大量の謎が撒かれている。
    終盤ではそれらの謎が21個にまとめられ箇条書きになっているので、比較的理解しやすくなっている。そして驚くべきなのはその21の謎はたったひとつの「気づき」によって同時に、一挙に氷解するよう作られている。

    たった一つ、大胆に描かれているたった一つの事実に気がつくだけで20の謎が一気に解けるなど、僕は他の小説で見たことがない。そのカタルシスの凄まじさはあまりに鮮やかだ。

    そしてそれらの謎の解明はどんでん返しとはまた別に行われる。その謎の解明で驚いている場合ではなく、更に驚きの展開が待っているわけだ。
    この作品が独立した単体の小説であることは先に述べたが、それでもやはり「刀城言耶」シリーズとして数えられている以上、やはり「刀城言耶」の活躍については期待していいだろう。

    個人的には作中で行われる「首の無い屍体の分類」も面白かった。有栖川有栖の『孤島パズル』など、「密室事件講義」などは幾つか前例があるが「首無し死体」に関する講義・論議ともいえる章があるのは興味深い。

    終始ホラーとミステリが巧妙に融合させられており、その謎と解明にいたるトリック・サプライズ・カタルシスの壮絶な巧妙さ、秀逸さは、並の傑作ではあり得ないものだと思うので是非とも機会があれば読んでみて欲しい作品の一つだ。

  • 伏線が張り巡らされた話の運びを追いかけているうちにいつの間にか怪異のなかに囚われているような本でした。面白かったです。
    死体の首が無いとなると死体のすげ替えが筆頭に上がるでしょうし登場人物もそれを考えたりしますが、二転三転する状況に目が離せません。
    最後の最後、謎が明かされるときの展開は疾走感があって緊張します。
    そうして、最後の最後、話のほんとうの終わりを迎えるときのあの恐ろしさ。空気が一気にかわり、今まで信じこんでいたものが凍りつき崩れ去る瞬間。
    ぞくっとして、とても興奮しました。

    今のところ外れがないシリーズなので次を手に取るのがたのしみです。
    とても面白い本でした。

  • 三津田作品をまだ手に取ったことのないミステリスキーの皆さん←
    表紙の印象や「ホラーはちょっと…」な先入観は捨てて、まずは読んでほしいです。このシリーズはまだ三作目ですが、そろそろ断言しちゃいます、ものすごい本格推理小説の王道作品と太鼓判を押せますー!←
    横溝御大もかくやの古い因習に縛られた舞台設定と、これでもかと繰り出される謎のジャブ、怪異現象の裏に隠された思わぬ真実、そして大胆不敵な真相究明! うん、やっぱり私の貧しい語彙ではこのシリーズの魅力を余すことなく伝えることはとてもできません。
    なので、読んで下さい(丸投げ…

    一番すごいなと思うのは、どうしてもホラー色が強くなりそうなのに、というか実際にその手の有象無象が闊歩してるような雰囲気が充溢してるのに、最後の最後の謎解きで見事な本格推理小説の真髄で魅せてくれる点でしょうか。で、その後にしっかり不気味な余韻を残して終わる。何かもう…すごいな!←

    婚舎の集いに端を発した連続殺人事件と、10年前に起こった首無騒動と不審死。
    双方の事件は、村の有力な一族であり殺人事件の被害者を出す屋敷に雇われた少年と、事件を追う村の駐在さんの視点で進んでいきます。相変わらず、少年視点で描かれるホラー描写が怖い怖い(笑)。
    トリックに関しては、触れたいことがあり過ぎるのですが全部ネタバレになってしまうので避けます…。とりあえず、今作でもこれでもか!とふんだんに意匠が凝らされてて、捻くれたミステリファンも大喜び間違いないんじゃないかな(笑)。


    首無しにまつわる伝承が伝わる奥多摩の山村、媛首村。村の旧家である秘守一族の儀式の日、恐ろしい惨劇が幕を開けた!密室での殺人と人体消失、そして首無し死体。刀城言耶が指摘する、意外すぎる真犯人の正体とは?

  • 今まで読んだ三津田氏の著作の中で、一番ホラーとミステリーのバランスが
    絶妙だった話でした。
    最後に理論的な推理をされると白けることもこれまであったけれど、これは
    得体の知れない怖さを残したまま。かつ人間が原因で起こった現象については
    きちんと説明がされています。読後も損した気がしない名作です。

    トリックについては、予測できた部分が半分、
    まさかそうくるとは思わなかったー!!と痛快な気分にさせられた部分が半分でした。
    これはしっかり推理しながら読むべき一作。
    人里離れた旧家のしきたり、因縁……。
    三津田氏の著作を最初に読む方がおられるなら、私はこれを推します。

  • 奥多摩の小さな村、媛首村。そこには旧くから淡首様や首無の伝説が伝わっていた。ある夜、首のない少女、“首無”が目撃される。伝説の再現、しかしそれはこれから起こる、連続首狩り殺人事件の序章にしか過ぎなかった――

    小説としてはこの前読んだ『幽女の如き怨むもの』のほうが好きだけど、ミステリーとしては『首無の如き祟るもの』のほうが、というより本作はミステリーとしては超一流である。

    四重の密室や関係者の完璧なアリバイ、一向に見えてこない動機、そして怪異の伝説など複雑怪奇な点の数々が、たったひとつの事実によって一気にひとつの線につながる。それはまるで壮大なドミノ倒しを見せられたようで、作者の構成力にただただ脱帽する。

    ミステリーの定番として有名な『十角館の殺人』や『ハサミ男』よりずっと好きです。まあ、『葉桜の季節に君を想うということ』が私のオールタイムベストですけどね。

  • 『厭魅の如き憑くもの』、『凶鳥の如き忌むもの』と
    刀城言耶シリーズを最初から続けて読んできたので
    シリーズ3作目の本作は、今までの刀城言耶シリーズとは
    やや毛色の異なる作品のように思えた。

    前2作を読んで、刀城言耶シリーズとは自分の中で、
    「これでもかと盛り込まれた様々な民俗学・民間伝承の薀蓄を
    浴びるように読みながら、その土地ならではの風習・習俗を理解し
    土地信仰などにまつわる恐ろしい儀式に恐れおののきつつ、
    その土地を訪れた放浪作家刀城言耶が怪奇的現象の謎を
    紐解いていくものである」と位置づけていたから。

    あくまでも、土地に根付いた怪奇的儀式の中に
    放浪作家刀城言耶が飛び込んで体験し、謎解きをするというのが
    このシリーズの醍醐味かと思っていたので、
    語り部からして刀城言耶ではなく、民俗学的語りも少ない本作は
    シリーズの中ではちょっと趣きが違う印象を受けた。

    刀城言耶自身、本作品の中で「はじめに」で登場しただけで
    作中は一切出てこないのだから、シリーズ番外編に近いのかもしれない。
    ※最後に出てくる人物は、あくまで刀城言耶を名乗っているだけである。

    まあ、そんな異色だなんだというのは、
    民族学的ホラーとミステリーの割合の差に起因するところが多く
    これまで、建物の図とか出て来なかったのに、
    今回はちゃんと舞台となる土地の地図や建物の構造図が出てきたり
    終盤になって、読者への挑戦状的な間(読者投稿による真相解明)をもたせて
    刀城言耶による真相解明が行われたりと、しっかり本格ミステリーとして書かれ、
    読者にも本格ミステリーとして読ませようとしているからのものだと思う。

    作中で古典ミステリーの言及も多くされていること含めて
    ミステリーとして見てもらいたい、ミステリーとしてちゃんと評価されたい、
    という作者の思いのようなものも見えてくるし、
    本作が日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞で候補になったというのも
    わかるような気がした。

    ただ、ミステリーとしてはよくできていると思うけれど
    個人的には刀城言耶シリーズの前2作の雰囲気が好きだったなあという感想。

  • 今回は主要人物(事件を担当した警官)を支えた奥さん(実はミステリ作家)が過去夫が遭遇した謎の事件を執筆しながら振り返りつつ解決を求めていく、というのが体裁となっていました。刀城言耶は最後の場面で登場するにとどまり、事件には全く関わっていません。

    と、書き出しを読んだところで叙述トリックか?と想像したものの、書き手(奥さん)が何度も作中で『私が犯人ではない!』と断りの記述を入れており、これで犯人はいくらなんでも反則だろ?と思わされます。

    さらにタイトルの『首無』からも容易に想像されますが、首のない死体が多数登場し、加害者と被害者の入れ替わり、実は被害者は別の人等々古くから何度も描かれているミステリの定石テーマが絡んできます。

    と、いうことで読んでいき読了となりましたがラストにおける二転三転どんでん返しに、ホントにひっくり返るほどの衝撃を受けました!ここ最近では、どんでん返しモノナンバー1の称号を与えます。

    一言で言うなら叙述+首無による入れ替わりの複合コンボ、スパイスとしてのホラー風味…と、一言じゃなくて長いですが、そんなカンジでした。物語の背景としてホラー要素があり、祟り、呪い、それに対抗する為の儀式が重要な謎解きヒントとなってます。その伏線が見事というか、それは気づかないわ!というか…読み終えてから読み返したのですが、ラストで明かされていくにつれジャブジャブ、ボディ、左フックに返しの右ストレート!くらいで打ちのめされ、至福のテンカウントを聞いてしまったかのようでした。

    叙述モノは大好物です、個人的叙述トリック見本市として『葉桜の季節に君を思うということ』歌野晶午氏があります、この首無~には『伏線グランプリ2』が個人的読書録に組み入れられることになりました。(ちなみにグランプリ1はイニシエーション・ラブです)

    読了に苦労しましたが、ホントに読み終えることができてよかった。

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首無の如き祟るもの (講談社文庫)の作品紹介

奥多摩の山村、媛首村。淡首様や首無の化物など、古くから怪異の伝承が色濃き地である。三つに分かれた旧家、秘守一族、その一守家の双児の十三夜参りの日から惨劇は始まった。戦中戦後に跨る首無し殺人の謎。驚愕のどんでん返し。本格ミステリとホラーの魅力が鮮やかに迫る。「刀城言耶」シリーズ傑作長編。

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