- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062768108
作品紹介・あらすじ
断崖絶壁に建つ夢の城にやってきたイコは、鳥篭に囚われた一人の少女・ヨルダと出逢う。「ここにいちゃいけない。一緒にこの城を出よう。二人ならきっと大丈夫」。なぜ霧の城はニエを求めるのか。古のしきたりとヨルダの真実とは。二人が手を取り合ったとき、この城で起きた悲しい事件の幻が現れ始める。
感想・レビュー・書評
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読了。
PS2で発売されたゲーム『ICO』を、宮部みゆき氏側からのオファーでノベライズ化された本書。ゲーム発売時のキャッチコピーは「この人の手を離さない。僕の魂ごと離してしまう気がするから」
女王とイコの対話が見所だと思う。
葛藤の末、イコの純粋さが世界を救ったのだろうか。
登場人物は多くなく、話の前後も分かりやすい作品だった。
上巻でも感じたが城の描写がイマイチ......残念
ストーリーや登場人物は原作が優秀なのだろう。素直に魅力的だし、オズマなんかはファンタジーの世界に引きずり込むのに抜群の効果がある人物だ。
楽しく読ませて頂きました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2001年12月6日に発売されたPlayStation2のゲーム「ICO(イコと読みます。ちなみにWikiのページはこちら
(https://ja.wikipedia.org/wiki/ICO_(%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0))」のノベライゼーション。
体験版を遊んだ宮部みゆきがすっかり惚れ込んで、自らノベライゼーションを申し出たそうです。
原作ゲームはアクションアドベンチャー。
朽ちかけた「霧の城」に連行され置き去りにされた角のある少年ICOが、城内で鳥籠のような檻に囚われていた娘ヨルダとともに、城からの脱出を目指します。
プレイヤーはICOを操作して城内を探索し、仕掛けを動かして道を開き、先に進みます。プレイヤーに同行するヨルダは、手をつないでいればついてきますが、ICOのように高い段差を上ったり広い割れ目を飛び越えたりすることはできません。ですからプレイヤーは時につないだ手を放し、一時的にヨルダをその場に残して先に進み、仕掛けを解いてヨルダでも通れるルートを開通させたうえでヨルダを誘導しなければなりません。
例えば、高い段差をよじ登ると木箱が置いてあり、これを段差の下に落とすと、それが足場になってヨルダが段差を登れるようになる、といった具合です。
手を離し、その場に残したヨルダは、その辺をフラフラし、景色を見たり、鳩と戯れたり(可愛いです)していますが、ICOが呼ぶと駆け寄ってきます。たまに仕掛けを解くための手がかりを指さす素振りをするなど、ヒントをくれることも。ただ、あまり長時間ひとりにしておくと、煙のような魔物が現れて彼女を連れ去ろうとします。ヨルダが連れ去られ、魔物とともに現れる煙の渦に引きずり込まれてしまうとゲームオーバー。でも、魔物はICOの攻撃で怯ませることができ、その隙にヨルダの手を引いてその場を離れれば、またしばらく時間の猶予ができます。
タイミングよくボタンを押すアクション要素と、画面をよく観察して仕掛けを解くアドベンチャー要素はいずれも難易度が高すぎることなく、ひどく詰まって先に進めなくなることはないと思います。
このゲームのいいところは何よりもまずその雰囲気でしょう。
舞台になっている朽ちかけた城の幻想的なこと。廃墟や遺跡はゲームで探索する舞台となりがちであるように、それだけで魅力的な舞台であるのに、あまつさえ光と影の表現がとても上手で、没入感を増す一助となっています。
暗いホールの先に光さす出口が見えて、その光の中に入っていくと緑あふれる中庭になっている…ゲーム内のキャラクターたちはもちろん、プレイヤーも開放的な気持ちにしてくれますが、その際に待っているのは目も眩む断崖沿いに設けられた頼りない線路をトロッコで進む場面です。そんな明暗を繰り返しながら先に進んでいくうち、いつの間にかヨルダと手をつないでいるのがプレイヤー自身であるように思えてきます。
そして、ヨルダとつないだ手から、コントローラ越しにヨルダの鼓動が伝わってくるのです。
いや、PlayStation2のDualShockコントローラの機能を使ってコントローラにそれらしく振動させているだけなんですけれど、握っているのは手ではなくコントローラなんですけれど、いつの間にかプレイヤーたる自分自身がヨルダの手を引いて探索をしているような気になってくる、そんな雰囲気の盛り上げ方がとても上手なゲームでした。
そんな、プレイヤーの分身たるICOが見て感じられる部分以外のところ、ストーリーやキャラクターの背景――ICOやヨルダは何者なのか、どうしてICOは連れてこられ、置き去りにされたのか、どうして角が生えているのか、どうしてヨルダは囚われていたのか、煙のような魔物は何なのか、そして2人の行く手を阻む女王の目的は――はほぼ説明がありません。プレイヤーの分身たるICOが見聞きし知徳したもの以外は、プレイヤーに知らせない…そんなポリシーを感じます。
ゲーム内でヨルダは喋りますが、ICOに向かって「イコ!」と呼びかけ(ていると思われ)る以外は何を話しているのかわかりません。
実は2周目になると字幕がついて、ヨルダが何を話しているかわかるようになるのですが、1周で終わりにするプレイヤーも多いことでしょうから、ストーリーやキャラクターの背景はよく言えばプレイヤーの想像の余地が大きく、悪く言えばプレイヤー任せの投げっぱなしです。
ですから、プレイヤーが100人いれば、100通りの物語が生まれる余地があります。そんな千差万別の物語のうち、宮部みゆきが紡いだものが本になり、今読者に読まれています。
とりわけ、上巻の後半からこの巻の中盤までの霧の城の由来、ヨルダとその母である女王の来し方と行く末、そしてICOの父祖たる異国の剣士オズマへの憧憬と葛藤について書かれている章は、ゲームでは全く触れられていない部分であり、そこを宮部みゆきが想像力で補った物語となっています。
日頃から「幻想水滸伝」や「タクティクスオウガ」への傾倒をいろいろなところで公言している作者ですから、語られていないICOの物語を夢想していたらいてもたってもいられなくなったのでしょう。
饒舌で流麗な文章は壮麗で厳めしい架空の宮殿を生き生きと蘇らせてみせ、自分は栗本薫のグイン・サーガを思い起こしました。
でも、これは宮部みゆきがプレイして紡いだ宮部みゆきの物語です。言ってみれば二次創作。
宮部みゆきはその圧倒的な筆力で、ゲームプレイを見事に再現してくれた部分もたくさんあります(例えばシャンデリアを落として渡り廊下を崩落させるところとか、頼りない角材を振るって魔物と渡り合うところとか)。でも作者が書きたかったのはきっと、自分なりのICOとヨルダの物語であり、ヨルダと女王の物語であったのでしょう。
公式のノベライズですので言葉の意味としては当てはまりませんが、でもやっぱり「プレイヤーが公式設定とは別に想像した物語」である以上、二次創作です。
Wikipediaにはこうあります。
【
原作ゲームには構想として用意されていた裏設定もあったものの、原作のスタッフは小説化の際には自由に構想を膨らませて欲しいという意図から、そうした設定の詳細は宮部に伝えないことにし、同時に本作のファンがそれぞれ抱いている原作のイメージを大事にするように注文したという
】
自分はゲームを2周クリアし、宮部みゆきが自分から申し出てノベライゼーションしたという経緯を知っている状態でこの本を手に取り、読みました。正直に言えば、「一歩引いた」気持ちで、ちょっと斜に構えて、言ってみれば「お手並み拝見」というつもりで読みました。だって、ヨルダの手を引いて霧の城を彷徨したあの経験は、自分だけのもの。いかに宮部みゆきであってもそうかんたんに再現できるものか、そんな気持ちがありました。本作のファンである自分が抱いている原作のイメージは本当に大事にされているのか、そんな心配がありました。
読み終えた今、確かに「心配」は杞憂であったことが分かりました。このノベライズには、物語の補完だけではなく、ゲーム体験がかなり忠実に再現されていました。あそこは難しかった、何度も死んだ、そうそう、トロッコは印象的だった、と自分の体験を懐かしく思い出す手掛かりにもなりました。原作のイメージも大事にされているのはよくわかりました。ていうか、明らかに宮部みゆきこれどっぷり遊びこんでから書いただろ、と、クリア済みのプレイヤー同士が思い出話をしているような、そんな連帯感を感じることすらできました。
ただ、解説の米光一成には申し訳ないけれど、宮部みゆきの筆をもってしても、ゲームで感じていた没入感、インタラクティブ性をこの本に感じることは、自分にはやっぱりできませんでした。原作がゲームであるコンテンツとしてはやむを得ないと思います。
逆に、ゲームをプレイしたことがない人がこれを読んでどう思うかは自分にはちょっと想像しにくいです。
ゲーム原作のノベライゼーションということすら知らずに読んだら…うーん、「普通のファンタジー」って感じになるかもしれませんね。読了後に「え?ゲームが原作だったの?」って驚くみたいな。作者がゲームプレイを一度自分の体験として自分の中に取り込み、消化してから書いているからじゃないかなあ。
いずれにせよ、未プレイの方はゲーム本編のプレイをお勧めします。この本を読んで楽しかったと思う方も、そしてイマイチだったと感じたなら尚更。原作あっての二次創作だと思いますから…。
蛇足。
表紙の「ICO」の「O」に角生えてますねw。
そうそう、表紙と言えば、ブクログの本棚に読了順(登録順でも、要は「新しいものから順番」)に並べると、下巻が左、上巻が右に来てしまいます。上下巻の表紙を並べるとICOとヨルダが手をつなぐ仕組みになっているのですが、これでは二人が泣き別れです…。
この「ICO」に限らず、分冊されている本って並べると表紙が繋がるものが結構多くて、宮部みゆきだけを見ても「小暮写眞館」も、「ソロモンの偽証」も、「あかんべえ」も、「英雄の書」も…分冊されている文庫本ほとんどがこのパターン。
そもそもの本の並び順を逆順にすればいいのですが、それでは古い本が上に来てしまい、アクセスしにくい本棚になってしまいます。
ブクログさん、どうでしょう、今「左上から右下」に並べることしかできない本棚ですが、「右上から左下」に並べることができるようになりませんか。
表紙を並べて一覧できるのは、自分にとってはブクログの大きな魅力です。
本って本棚に並べると背表紙しか見えないじゃないですか。普段はブックカバーをかけている(本が傷むのが我慢できません…)ので、なかなか装丁をじっくり楽しむこともありませんし、ましてや分冊されている本を横に並べてみるってリアルの本ではあまりやりませんよね。
だから、ブクログの本棚に並べる順番もちょっとこだわっています。分冊されていればできるだけつながるように、コミックスやラノベなど巻数が多いものは数巻ずつまとまりができるように。
――読了順が大前提ですので、そういう順番になるよう読了しています。積読があるからこそできる方法ですねw。
(音楽も同じで、MP3プレーヤーやiPhoneでずらりと並んだジャケットを眺めて悦に入る時間が何より楽しい。)
ブクログさん、ぜひお願いします。
「右上から左下」です。
……だめですかそうですか…。-
hanemitsuruさん、こんばんは。
レビューのおかげで、もうすっかりICOをやってみたくなりました。
おもしろそうですね~^^
...hanemitsuruさん、こんばんは。
レビューのおかげで、もうすっかりICOをやってみたくなりました。
おもしろそうですね~^^
今はできる環境にないので残念ですが、でも、きっとそのうちにやってみようと思います(まずは中古のPS2を手に入れなくては)。
本棚についてもまったく同感です。
自分は見た目重視で、下巻から先に登録したりしていますよ。
文庫版「かがみの孤城」、「犯罪者」、「ボーン・コレクター」など。
でも、自分で好きなところにカスタマイズできるとたのしいですよね~。
最後の一文の「……だめですかそうですか…。」には笑いました。
2022/04/07 -
>土瓶さん
こんにちは。コメントありがとうございます。
PS2から用意しなければならないとちょっとハードル高そうですね…。
機会が...>土瓶さん
こんにちは。コメントありがとうございます。
PS2から用意しなければならないとちょっとハードル高そうですね…。
機会があればぜひ、ということで。
そして、改めて本棚をしげしげと拝見しました。
ホントだ~、「かがみの孤城」、「犯罪者」、「ボーン・コレクター」、引っ繰り返して置いてあるっ!
「かがみの孤城」のカバーイラストなんて寓意があるんで、ちゃんとつながるように置いておきたいですものね。
ダメ元で談話室「ブクログのここを改善して欲しい。」に書いておきました(下のほうに土瓶さんの投稿発見w)。
ついでに、グイン・サーガがずらりと並んでいることに共感。
自分は手元にあるんですけれど未登録なんですよね…。
2022/04/08
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美少女ヨルダが取り戻した記憶…なんと彼女は霧の城の女王の一人娘だった。母の恐ろしい本当の力を知り、父の急逝にも疑問を抱いたヨルダは、勇者オズマと共に女王を滅ぼそうとするのだが…
明かされる過去の過ちと悲劇。イコに突きつけられる生贄のしきたりの真実。絶望から立ち上がり、彼は世界を救えるのか。そしてヨルダの運命は…?
このゲーム自体を知らないので世界観については何とも言えないのだけれど、回想にページを費やしすぎて後半急展開すぎる気が…。後日譚が欲しいところ。 -
ずっと手を繋いで居られる人と出会えたらな。
宮部さんのこうした物語も好き。 -
上巻よりストーリーに引き込まれますが、サラッと読めるファンタジー。
最後は微妙な感じではあるけど、結果オーライ?
私的にはファンタジー系微妙かも。
宮部さんのファンタジー系より、やっぱりミステリーが大好きです。 -
面白かったけど、もう一度読みたいとは思わなかった。ロールプレーイングゲームみたい。そのような嗜好を狙っているよう本。私個人はあまり好きではないな。
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本作の世界観を表すキーワードは、太陽神と闇の魔神の争い、太陽神に仕え大地を守護する血統=角を頭に戴く者達、魔神を退ける呪文「光輝の書」、女王=闇の魔神の落とし子、ヨルダ=時を封じる要石、等。
本作、テレビゲームのノベライズ版だったこと、解説を読んで知った。キャラクター設定やストーリー展開は、著者オリジナルじゃなかったんだな。ラストがあっさりし過ぎていて今一つ感動が得られなかったのも、ゲームをやっていないからなのかも。ゲームファンには興奮ものなのかもしれないけれど…。
そう言えば、イコが高い塔に侵入して探索するシーンでは、「図書館の魔女」を思い出した。 -
宮部みゆきのファンタジー。
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文庫になっていたので何気なく購入。読んでみてようやく以前読んだことがあると気づきました。 5~6年ぶりの再読ですが細かい部分は忘れていたので気持ち新たに。 この手のファンタジーものが苦手だということがよくわかりました。久しぶりに読み進めるのが苦痛になった。上はまだよかったが、下の途中でもどかしくなった。
やはりゲームと小説の違いかな…と。
宮部さんのミステリ、時代小説が好きで読んでみた。というひとには期待はずれと感じると思う。