- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062770057
感想・レビュー・書評
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某氏曰く『稀有な本』との帯に惹かれて読んでみたが。
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価値判断の物差しについて、色んな視点から問うている本。
狭い視野で見ていないか。
信じすぎていないか。
一面を見ただけで分かった気になっていないか。
▼読書の"毒"
私が興味を持ったところはこの部分。
本と言うのは、私達によい"知識"を与えてくれるが、
その一方で"毒"を与えている。薬と同じ。
例えば、
利他主義の素晴らしさを受け入れるあまり、自己犠牲に走るようになったり。
犯罪者心理の読み過ぎで、実際に行動に移して事件を起こしたり。
これだけではない。
本には、作者の人柄が現れたりする。
後述するが、作家だっていい人だけではない。
内容についてもそうだが、"いい本"だと思ってあまりに影響され過ぎると、それはそれでよくない。
(ショウペンハウエルの『読書について』を読んでいると、この点引っ掛かりを覚える)
結局、自分の軸、自分なりの価値観を持っていることが不可欠なのだ。
自分だけの視座でその本の内容について、"なぜそうなるか?"と問いかけ続ける。
そうしていれば本の内容だって、自分なりに考えて比較・判断できる。
必要な価値観を、無理なく消化吸収できるはず。
(ショウペンハウエルが"多読"を批判している理由はここにあると思う。『知性について』にも同じ事を述べている)
本なんて、偉い人が書こうがそうじゃない人が書いていようが、結局は「他人の人生」「他人の価値観」。
自分には、「自分の人生」「自分の価値観」がある。
他の"木"から取ってきた、あまり相性の良くない枝を無理につぎ木して、自分と言う"木"をわざわざ枯らすこともないだろう。
▼この人は、いい人? 悪い人?
「さぁ、どうだろうね^-^」。これが全てだ。
何から何まで、いい人なんて言うのは存在しない。"いい"の捉え方でも多種多様。その人をどう見るかで良くもなるし、悪くもなる。
美点も欠点もある。それが人間。
人の評価は、得てしてその人のある一面を見たもの過ぎない。
人間として素晴らしい人が、事業で成功しているとは限らない。
"人格者"として有名な人が、家庭でどうかはわからない。
ある分野での大家が、人間的に優れているかどうかは分からない。
そもそも、人間を一面だけ見て「なんて素晴らしい人だ! きっと、この人はこんな面でも理想的な人に違いない」なんて思うのはむしろその人にとって酷だ。
人に対する評価が以下に危ういかは『自分の小さな「箱」から脱出する方法』を読むとよくわかる。
なので、
その人のいい所を見たときには、「この人は、この一面ではとても素晴らしい人だな、見習おう」と思い、
悪いところを見たときには、「こういう面もあるのか、もったいないなぁ…」と思い、
適切な人間関係の形成や、アクションを取っていけばいいのではと思う。
そして、その人の真贋を問うなら、筆者の言うように、ある一面を見て、その一面でその人が目指すあり方(モチーフ)に合致しているかで評価すればいいんでないかと思う。
人に対する評価は、慎重に、丁寧に。
▼その他
この著書で一番印象に残っているのは、最後の方に出てくる、人間の生い立ちと人格形成について述べている5章。才能は、コンプレックスの裏返し。何かしらで成功している人の中には、その面であまりに人並み以下だったから、一生懸命努力して、いつの間にか人より抜きんでるようになった人もいる。"大家"にこそむしろ"歪み"のある人間がいるということ。あまりに突き抜けていて、色々欠けている感じ。とても共感できた箇所だった。
他にも、作家についての評価や、人からの批評についての考え方(一番思い入れのあるものは自分の中に隠しておくといい、という考え方は共感できなかった)等、
手を変え品を変え、その価値判断は「真」か、「贋」か、を問うてくる。
一度は手に取ってほしい、そんな一冊です!! -
なんでだろう、全く没頭できず。。。
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吉本隆明さんの、いろいろなテーマについての考えです。
とても読みやすいです。
本当のこと、について考えられていて、いつもその落としどころに共感します。
人の性格は青春期までの主に母親との関係で決まる、とか、凶悪は健康の延長である、とか、納得する言葉だらけでした。 -
読み込まないとちゃんと落ちてこない。。
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学生運動時代の代表的思想家と聞いて、一度読んでみようと思いました。
思った以上にやさしい言葉で、分かりやすかったです。
全てに納得できる内容ですが、案外読後にのこっている内容は薄いです。 -
吉本隆明『真贋』。賢人の言葉と言う感じがすごくする。
戦後最大の思想家などと言われるが、本人は日本固有の文化・思想について考える文芸評論家という認識にブレがないのが、すごいな。 -
<目次>
1 善悪二元論の限界
2 批評眼について
3 本物と贋物
4 生き方は顔に出る
5 才能とコンプレックス
6 今の見方、未来の見方 -
「デカルトからベイトソンへ」を読んだあとだったので、「善悪二元論の限界」はすごくしっくりきました。娘のよしもとばななさんの書くものにもナラティヴ的な(小説だからナラティヴなのは当たり前だと言わないで…)ものを強く感じるのですが、父親の吉本隆明氏が「乳児期から前思春期における母親またはその代理との関係が人格を形成する」ということを繰り返し繰り返し述べているのは非常に興味深いですね。吉本家のお母さんとはどういう人物だったのか……?
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読まなくても良かった