変死体(下) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062771429

感想・レビュー・書評

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  • 変死体の謎は解けたけれど、なんだかすっきりしない。
    最新技術を駆使した検屍なのだと思うけれど、いくつかの可能性を考えた上で真相にたどり着くというよりも、真相に向けた思考が一つしかないので、すべてがケイのこじつけのような気がしてしょうがないのだ。
    フィールディングについての最後の謎に関しても、状況的に考えうるというだけの仮説が、事実のように扱われているのは彼にとってあまりに酷では?

    そもそも今までみんなマリーノについてずいぶん非難がましいことを言っていたけど、今回はその矛先がフィールディングになっただけで、人間関係の在り方は変わっていない。
    ケイが絶対的な正義。
    その周辺にいる人たちは、言葉足らずで行き違い対立することはあっても基本的に善。
    その外に、みんなが嫌う人がいるが、ケイだけがそういう人をかばう。見捨てない。
    いつものパターン。

    科学的にというのは最新機器を使うということではなく、思考の合理性とか、不可逆性とか、そういうことだと思うんだよな。
    頭がいい人たちばかりが出てくるのに、どうしてみんな感情的で一面的なんだろう。
    もやもや。

  • ニューヨークを離れ、マサチューセッツ州ケンブリッジでCFCの立ち上げに関わったスカーペッタ。だがドーヴァー基地での研修中にCFCで検死された遺体に問題が発生する。CFCの秩序は崩壊していた。軍の機密、謎の研究、正体不明の企業、果たしてここで何が起きているのか?

    久しぶりにケイの一人称で進む形式がうまくはまっています。みんなが(まあ主にはベントンが)秘密を抱えていて、ケイを蚊帳の外に置こうとする。読んでる方もつい一緒にイライラしてしまう。。最新のテクノロジーの話も出てきて、なかなか楽しく読めました。が、ここまで読んでるのはみんな初期からの読者かと思うので、突然のフィールディングの乱心はちょっと辛いものがあったんではないかと。ルーシーとマリーノはあまり活躍しないし、もうローズもいないし、昔の仲間のドロップアウトは切ないですな。。

  • 翻訳が、どうしても馴染めず苦労する。
    それでも新作が出ると読んでしまうスカーペッターシリーズだが。
    うーん、読後モヤモヤ。

  • 周囲が離脱する中、何となく意地?と惰性で買い続けてきたけれど、そろそろもういいかな……。

  • 青年の遺体から大量に流血していたことや、副局長のフィールディングの失踪の謎は明らかになるものの、こんなテクノロジーの悪用が現実の世界ではありませんようにと願わずにはいられません。
    そして、これからのケイの人生に再び不穏なことが起こりそうな終わり方だったので、次回作も気になって読みたくなってしまいます。

  • たくさんのパーツがひとつ一つあるべきところにハマっていき、全体が少しずつ明らかになってゆくこの過程が本来好きなんだけど、今回はみんなのケイへの隠しっぷりがスゴく嫌な感じで読んでて疲れた。みんながケイを思ってしてくれてることは理解できるのだけど。
    また最初から読もうかなあ。

  • フィールディングが死亡かあ……
    なんだか、フィールディングは元からあまり好きじゃなかったけど、スカーペッタがウジウジするのが読んでてなんか沈む…
    そして、何かすっきりしないなあと思っていたら、次の話にまで解決が続くのだった……

  • つまらんっ

  • この作家の登場人物は、最初の頃の設定と、のちの設定が意外に違ったりしますね。今回は、フィールディング。献身的で優秀な監察医だと思っていたんですが、人格破綻気味の傾向がある描写。「えっ?」と思ってしまいました。最初のこと、レギュラー登場していた頃は、そんな描写じゃ無かったんだけどな。

  •  前作で、とりあえずシャンドン・ファミリーという犯罪一族の最後の一人に片をつけ、壮大なスカーペッタ・サーガの第一部が終了した感があったのだが、それを裏付けるように、本書では、このシリーズが、また一人称視点に戻っている。時代や環境は変わったとしても、第一作『検屍官』のあの頃のように、スカーペッタをより強い軸にして物語を回転させるリズムとテンポに戻ったわけである。

     そして驚いたことに、前作で舞台となっていた冬のニューヨークから一転して、ケイ・スカーペッタはマサチューセッツ州ケンブリッジの法医学センターの所長に就任していたらしい。しかも小説の冒頭では彼女はドーヴァー空軍基地で研修中の身となっている。まるで前作までのシリーズを一気に断ち切って、新しい世界からすべてをやりなおしているかのように。

     そこに留守中の法医学センターに運び込まれた変死体と、失踪した副責任者の一報があり、ケイはルーシーとマリーノのヘリでの迎えを受け、ケンブリッジに飛ぶ。上巻が移動するまでの半日だけの描写。下巻が翌朝から一日くらいの時間しか経過していないという、時間密度の大変に高いストーリー展開にも関わらず、スピード感がまったくなく、重厚な時間の濃縮液のような心理描写と事件に関連する人々の説明に費やされる。もちろんただの説明ではなく、懐疑、懸念、不安、強迫観念などなどに絡められたケイ一流の細密に過ぎるくらいの関連付けが長々と行われてゆく。

     ぼくは、このシリーズが『黒蠅』以降、三人称で語られるようになり、猫の目のように視点を移すようになったとき、それはそれで悪くないと思ったことを覚えている。停滞した感のあるシリーズの活性化に繋がると良いかな、と期待感を抱いたものだった。話を巨大にしてしまい過ぎて収束できなくなった作者が、閉塞したストーリーを何とか打開しようとしてやむにやまれず採用した手法であったかもしれないが、それで何とか前作まで漕ぎ着けてきたのは確かである。

     しかしルーシーやマリーノやベントンの視点ですら語られてしまう三人称視点というものに最後までついぞ馴染むことのできなかったのも事実だ。これまでスカーペッタの視点から語られてきた彼らの側からの描写は、ただでさえややこしい人間関係の情念の部分にやたらに踏み込んでしまい、収拾がつかなくなったきらいすら感じられたからだ。ストーリーを淡々と語ることのできるタイプの作家ではないだけに、多視点での疾走感を完全に生かし切れたとは言い難く、むしろブレーキの種類を増やしたように感じられてしまうのが、前作までの欠点であったような気がする。

     いつか読者であるぼくにもブレーキがかかり、最近になってシリーズ読書を再開してみたという経緯もそんな印象を強くしているのかもしれないけれども。しかし、本書に至って、再開して良かったなという確信が戻ったのは嬉しいことだ。

     相変わらず過去のキャラクターを捻り回して事件の重要関係者に仕立てあげてしまうところは変わらないけれども、そのキャラクターをまるでこれまで知らなかった新しい特異な人物のようにして再登場させ、事件や物語を組み立ててゆくアイディアは並みでないし、そこに絡むいくつもの無関係としか思えない殺人事件がどれもこれも、いつもながら狭い世界に関連付けられてそれぞれのピースが巨大な地獄絵のようなパズルを完成させてしまうという、あまりに唐突ながら理詰めの展開には唖然とする。

     それらを今回はしっかりとケイの眼線だけで捉え語らせる、という手法の選択が、本来あるべき場所に戻ったかのような居心地の良さを感じさせた。今後も一人称視点での落ち着いたミステリーのシリーズとしてこのレベルでの謎と捜査手法の面白さを提供してくれるなら、ただでさえ低くないであろう人気の度合いは補償されそうである。少しほっとした、言い換えれば、個人的には大変回帰感に満ちた力作であった。

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著者プロフィール

マイアミ生まれ。警察記者、検屍局のコンピューター・アナリストを経て、1990年『検屍官』で小説デビュー。MWA・CWA最優秀処女長編賞を受賞して、一躍人気作家に。ケイ・スカーペッタが主人公の検屍官シリーズは、1990年代ミステリー界最大のベストセラー作品となった。他に、『スズメバチの巣』『サザンクロス』『女性署長ハマー』、『捜査官ガラーノ』シリーズなど。

「2015年 『標的(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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