新参者 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.10
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本棚登録 : 12620
感想 : 722
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776288

作品紹介・あらすじ

立ちはだかるのは、人情という名の謎。日本橋で発見された女性の絞殺死体。着任したばかりの刑事・加賀は、この未知の街を歩き回る。

感想・レビュー・書評

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  • 最初短編なのかと思ったけど、一繋がりの長編だった!シリーズ一気読みしてるから、加賀くんの成長がとてもわかって良い…彼の考えの軸、良いなあと思う。

  • こまのひもが鍵を握る。

  • 加賀恭一郎シリーズ、第8作。
    ある殺人事件を軸に、短編でいくつかの家族の話で繋がっている作品でした。
    それぞれの家族に、普段はおもてには出さない思いがあり、歪みあっているようで、実は陰ではこっそり感謝していたなど、人情溢れる話がよかったです。そんなひとつひとつを加賀さんが調べ上げ、事件解決後も、その家族を立ち直らせるきっかけをつくってあげることも。
    「何者でもありません。この町では、ただの新参者です。」とは、さすがです。
    読みやすくて、相変わらず緻密な捜査をする加賀さんにワクワクし、犯人もその動機もわかり、すっきりととても面白かった。

  • 東野圭吾さんの本はいつも犯人だと思う人がコロコロ変わる。コロコロされているのは私の方だナ

  • ☆読もうと思った理由は?
    ・加賀恭一郎シリーズ8作目。東野圭吾さんファンで、同シリーズとガリレオシリーズは特に好んで読んでいる。いつか、コンプリートしたい!
    ・日本橋署に赴任した加賀恭一郎の短編集と思いきや実は登場人物をはじめ、全てが繋がってるいる。
    見事に伏線を回収し、加賀の持ち味『人間性(人情)と推理』が上手く表現されている作品。ドラマでは加賀を阿部寛さんが演じていた為か、加賀の描写で阿部さんが連想される。

    煎餅屋の娘
    小伝馬町のマンションで女性が殺害された。この女性の部屋にあった名刺から田倉に容疑が向けられる。だが、彼は犯行時刻と推測される時間帯に、煎餅屋『あまから』の店主の母、聡子の保険の手続きに必要な診断書を受取に店にいた。ただ、現場と店が近い事とはっきりとした彼の訪問時間を記憶していない為、彼のアリバイは証明できずにいた。近所で彼が目撃された時間と保険会社の事務員が彼から書類を渡された時間から推察すると、30分の空白が出来る。この時間で犯行に及んだのではないかというのが、警察の見立てだ。加賀は『あまから』の娘、菜穂の『グレーのスーツを着ていて、上着を着ていた』と言う証言をもとに、夏の夕方6時前後に上着を着ている事から、田倉の本当の行動を解き明かす。
    『約束を守る事』と『アリバイを証明して疑いを晴らす事』、田倉は『約束を守る事』を選んだ。保身に走る人が多い中で、見習いたいところ。

    料亭の小僧
    人形町にある料亭『まつ屋』の主人、泰治は女将とは別にアサミという女が外にいる。そのアサミは小伝馬町で殺害された女性と同じマンションの同じ階に住んでいる。被害者の自宅で「人形焼き」が発見され、その容器から女将の指紋が検出された。泰治は見習いの修平に人形焼きを買いに行かせていたが、女将は勿論の事、他言無用と厳しく言っていた。
    加賀が聞込みに来た際にも、人形焼きは「自分で休憩中に全部食べた」と証言。決して口を割らなかった。
    女将は主人の浮気を承知しており、修平が自転車のカゴに隠している間に、お灸を据えるつもりで、事前に準備していたワサビ入りのモノとすり替えた。
    「口の固い」見習い料理人の未来に期待!いずれどこかで彼が登場するかも?

    瀬戸物屋の嫁
    小伝馬町で殺害された女性のメール送信履歴から、瀬戸物屋『柳沢商店』の嫁、麻紀の名前が発見される。麻紀は元キャバクラ嬢のキティ好きな女性。麻紀が大切にしていたキティのタオルを使い、鈴江が雑巾を縫った事がきっかけで、結婚当初は仲の良かった姑、鈴江との仲は最悪に。そんな折、鈴江は伊勢志摩に旅行にいく事になる。伊勢といえば「アワビ」が名物。そんな険悪な2人の筈だったが、実は麻紀は歯の悪い鈴江の為に「食用ハサミ」と言う食事に固いモノがある時に利用するハサミを準備していた。一方の鈴江も、伊勢志摩の土産物店から「ご当地限定キティ」のパンフレットを取り寄せていた。作中で加賀も言っているが「女性の心理」は本当に分からない。

    時計屋の犬
    小伝馬町で殺害された女性のパソコンから見つかった書きかけのメールには「いつもの広場で子犬を撫でていたら、小舟町の時計屋さんと会いました。」と書かれていた。この寺田時計店の店主、玄一は夕方5時半になると愛犬のドン吉と散歩に出かける。いつもの散歩コースにある浜町公園では、玄一とドン吉の事を知る人が見つかったが、殺害された女性と子犬をみた事をある人が見つからない。玄一は勘当している娘のことを、実は心配しており密かに調べていた。その娘の妊娠を知り、水天宮にお詣りしていたのだ。女性はそこにある子宝犬を撫でていた。女性も初孫の安産を願ってお詣りしていたからだ。
    ドン吉が交差点で歩く方向を迷ったこと、玄一の妻、志摩子がタクシーの後部座席左側に乗車していた事、デパートの紙袋などから、誰にも知られていないはずの娘の妊娠に辿りつき、お宮参りをしていた事を突き止める。人には事件に関係なくても、本当の事を話せない事もある。調べた結果、事実が分かっても事件に無関係であれば、それを公にせずそっとしておく、加賀の優しさが見られる。

    洋菓子屋の店員
    小伝馬町で殺害された女性には連絡が取れなくなった息子がいた。女性の旧友から息子と彼女を見かけたと知らされる。教えられた彼女が働く店に行ってみると、彼女のお腹が大きい事に気付く。水天宮にお詣りし、仔犬の撫で、安産御守りのストラップを渡す。だか、女性が息子の彼女だと思い込んでいたのは、全く別人だった。加賀は聞き取りや推理から、女性の息子と彼女、それに彼女だと勘違いされていた女性に真実を告げる。何ともやり切れない思いが込み上げてくると同時に、母の優しさが感じられる作品。

    翻訳家の友
    殺害された三井峯子は翻訳家になるのが夢だった。旧友の多美子は峯子の離婚後、翻訳の仕事を手伝って貰う事にした。多美子は交際相手とイギリスに行く事になり、それを峯子に話してから2人の仲は険悪に。出発前に会って話をする為に約束をしていたが、急用のため時間を1時間遅らせた。その1時間の間に峯子は殺害されてしまった。多美子はその事で自責の念を抱き、悲しみ苦しでいた。だか、峯子は旅立つ2人のために瀬戸物屋『柳沢商店』で夫婦箸を注文していた。語れなくなった被害者にかわり、真実を残された人々へ伝える。このフレーズ、凄く響きました。→「加賀さん、事件の捜査をしていたんじゃなかったんですか」「捜査もしていますよ、もちろん。でも、刑事の仕事はそれだけじゃない。事件によって心が傷つけられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。そういう被害者を救う手だてを探しだすのも、刑事の役目です」

    清掃屋の社長
    殺害された女性、峯子の元(直弘)夫は清掃業者の社長だった。直弘は大学卒業後もスナックでバイト生活を送っていた。そのスナックの雇われママ戸紀子と恋に落ちるが、彼女には離婚歴があったため、彼女自ら直弘の前から姿を消した。直弘は一念発起し便利屋に勤め、ノウハウを活かし清掃業者を起こす。お金がなかった当時、戸紀子にプレゼントした50円硬貨を削って作った指輪を嵌めた女性、祐理を銀座で見つける。不倫関係ではなく親子関係なのだが、他人は男女の仲を疑う。峯子に死をきっかけに、きっと新たな『家族』の繋がりが出来たのでではないかと思う。
    好きなフレーズ→「清瀬さん、あなたと三井峯子さんは、離婚によって何を得たんでしょうね。三井さんは息子さんの彼女が身籠もっていると勘違いして、その近くに住み始めました。あなたは一人になった途端、祐理さんをそばに置いた。結局どちらも離婚後に求めたのは、家族というものだったんです。家族というものに飢えたんです。家族の絆は強い。清瀬さん、あなたと弘毅さんも家族です。そのことを忘れちゃいけません」
    事件の解決とは無関係に思えるが、少しずつ疑いがはれ、容疑者が絞られていく。

    民芸品屋の客
    民芸品店「ほうずき屋」では、昔ながらの玩具を扱っている。ここの独楽(コマ)と、人形町の玩具屋の独楽が事件に大きく関わっている。また、殺害された女性(三井峯子)の元夫の会社の税理士、岸田要作と息子夫婦のも登場し、加賀は事件解決の糸口を掴み、一気に解決へ。

    日本橋の刑事
    上杉は本庁捜査本部の刑事。加賀は彼の補佐として捜査している。立場上はそうだか、実際な加賀なりの推測や考えから、聞き取りを中心に事件解決の糸口を掴んでいる。ほうずき屋では大中小の3サイズのコマを売っている。どのコマの紐が合うかを確かめたのではないか?という推理からほうずき屋のコマを全て購入し調べたところ、犯人の指紋と一致する指紋が発見された。上杉は自身の経験を語り、息子の為に犯行に及んだ犯人を自白に導いた。
    好きなフレーズ→上杉の言葉
    「私は悪事を働いた息子を守ったのではなかった。もっと悪い方向へ行くように背中を押しただけだったのです。親として、完全に失格です。同時に、管察官としてもね。親は、たとえ憎まれても、子供を正しい方向に導いてやらねばならない。それができるのは親だけなんです。岸田さん、あなたは殺人を犯した。その罪は当然償わねばならない。しかし嘘を抱えたままでは、償うことにはならない。むしろ、新たな過ちを生み出すおそれさえある。そうは思いませんか」

    加賀のような刑事、ひいては公務員、政治家が多くなれば、この国の未来は明るいと思うのだが、現実はほど遠い。

  • 東野圭吾さんのシリーズものはいろいろあり過ぎてなかなか手を出せずにいたのですが、職場の方におすすめされ、初めての加賀恭一郎シリーズです。こちらはシリーズの8作目にあたるようですね。

    江戸情緒残る街、日本橋で1人の女性が絞殺された…。所轄で捜査を担当するのは、練馬署から日本橋署に着任したばかりの刑事・加賀恭一郎だった。

    事件に関わりのある主に日本橋に住む人々の視点から語られる9章からなる連作短編集の形式なんですが、加賀恭一郎シリーズと言われているのに、加賀視点のお話がなかった!他もこんな感じなのでしょうか?

    加賀の「事件によって心が傷つけられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。そういう被害者を救う手だてを探しだすのも、刑事の役目です」(253頁)という言葉がめちゃくちゃ良かった。

    人情に溢れるお話たちひとつひとつも良かった上に、最後にはそれらのお話が全部つながっていくって、やっぱり東野圭吾さんってすごい。おもしろくて一気読みしちゃいました。

    とりあえずおすすめされたのでこちらを先に読んじゃいましたが、この後はちゃんとシリーズの最初から順番通りに読んでいきたいなぁと思います。めちゃめちゃ楽しみです。

    最後に一つだけ、登場人物に漢字違いの同じ名前が2組も「克也と克哉」「礼子と玲子」いるのは何か意味があるのでしょうか?最初は漢字違いに気がつかなくて同一人物なのかと思ったら違ったので、ちょっと気になりました。

  • 一つの事件において、聞き込みをはじめとした沢山の捜査が行われ、分かった事実や人間関係のその一つ一つに物語があることを改めて理解させて頂いた。
    刑事さんは流石ですね。
    それぞれのストーリーが最後に繋がり、読み終えた後にスッキリしました。他の読者様もコメントされていましたが、私も日本橋を散策したくなりました。

  • それぞれに物語があって面白かった。
    最後まで繋がる??と思ってたけど
    ちゃんと繋がってて感心。

  • かなり前にテレビドラマを見たきり原作を読んでなかったのだが、今回読んでみて、いやぁなかなか面白い。
    単なる推理ものとは違う、それぞれに味わい深い話。一見、事件とは関係ないように見えながら、加賀さんの鋭い視点により裏に秘められた真実が浮かび上がる。
    殺人事件を扱っているのに、こんなに心温まる話が散りばめられてるのって、なかなかない。
    人形町を歩いてみたくなる。

  • 連作短編小説とも長編とも取れるような構成の一冊。
    個人的に、これまでの加賀恭一郎シリーズで最も心に残る作品となった。
    「加賀さん、あんた一体何者なんだ?」
    「ただの新参者です」
    こんなセリフをサラリと言える加賀恭一郎、もし自分が女性なら、惚れていたかもしれない。
    事件の捜査によって明らかになるのは犯人や犯行の動機だけではない。
    周囲の人間一人一人のドラマがそこにはあり、その中心に加賀恭一郎がいる。
    どの話も心温まり、目頭が熱くなった。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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